古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

薬害肝炎九州原告団総会を山口で開催、専門医講演、そして薬害資料館の今

九州原告団総会を開催

 薬害肝炎九州原告団総会が山口市湯田温泉のホテルで開催され、50名近い原告・弁護士が集いました。

 九州原告団総会は年に一回、各県持ち回りで開催しています。佐賀で初開催した後は、宮崎、福岡、鹿児島(桜島)、長崎、広島、熊本、昨年は沖縄で開催し、今年は山口で初開催するものです。

 ちなみに薬害肝炎全国原告団弁護団は、全国で一つの原告団弁護団を結成しており、九州原告団、東京原告団、大阪原告団、名古屋原告団、東北原告団が5つの支部という位置づけ。
 九州原告団の担当は九州沖縄山口地区になるわけです。

C型肝炎の最新治療について医療講演会

 まず第1部は、C型肝炎の専門医による医療講演会からスタート。「C型肝炎の最新治療について」と題して、山口大学医学部附属病院・肝疾患センターの日高勲医師に講演していただきました。

 山口大学医学部附属病院は平成21年2月、山口県肝疾患診療連携拠点病院に指定されました。拠点病院の業務の一環として、病院内に肝疾患センターを設立した上、専門医療機関に関する情報提供にくわえ、市民に対してセミナーも開催しているものです。

 日高医師からはC型肝炎の最新治療についてパワーポイントを使ってわかりやすく丁寧な解説をしていただきました。

 「ハーボニーは、治験段階では100パーセントだったが、治療の現場では99パーセントの治癒率になっています。山口大学病院では75名に使用して70名で治療が終わり98パーセント治癒しました。12週きっちり飲んだ患者はすべて治ったという状況です」ということです。

 2016年11月18日に発売された「エルバスビル グラゾプレビル」は、腎臓が悪い患者にも使えるという薬です。副作用としては肝機能障害・消化器症状などですが、治療成績は98パーセント。HIV HCVの重複感染におけるSVR率も95パーセンになっており、HIVに感染している患者も使いやすいということでした。

 2017年2月14日にも「ダグラタスビル アスナプレビル ベクラブビル」が新発売されました。
 治験では97パーセント治癒しています。難治性患者に期待されているそうですが、もともとある肝障害が強く出るなど副作用が強いリスクがありますし、12週の治療期間中、毎週の血液検査が必要とされるため、一般医は使いにくい点もあるようです。

 いずれにしろ「いろいろな薬が出ていますが患者さんが全部覚える必要はありません。治癒率はどの薬も95パーセント以上になっていますから、治療薬の選択は患者の既往症に合わせて使い分けています」ということです。

 なお経口抗ウイルス薬におけるHCC累積発がん率が4パーセントあることには注意が必要です。薬害肝炎全国原告団としてもSVR後の治療体制について注目して情報共有しているところです。
 日高医師も、「ウイルスを消滅させてもがんのriskが0になるわけではありません。5年10年とがんの検診にかかる必要があります。治癒した後に病院に来なくなって発がんしてしまう患者さんが出るのを恐れています。くれぐれも定期健診に来てくださいとお伝えしています」と強調されていました。

 最後に日高医師は、「患者さん・肝臓専門医・かかりつけ医が三位一体で治療していくことが大切です。まだ専門医の診察を受けていない患者さんはぜひ専門医を受診していただき、主治医2人体制で治療していただけたらと思います」と総括されました。

 福岡、熊本、佐賀、沖縄といった九州各県の原告からも積極的な質問・活発な質疑応答もあり、とても充実した医療講演会となりました。

薬害肝炎原告団の課題の一つ~薬害資料館とは

 引き続き第2部では、薬害肝炎原告団の課題の3本柱である「恒久対策」「再発防止」「被害救済」について、現状報告と意見交換を行いました。

 ここでは再発防止の一つの論点である「薬害資料館」を取り上げてみたいと思います。薬害肝炎全国原告団弁護団が中長期的に取り組む重要課題の一つです。

 戦後日本では様々な薬害が起きてきました。サリドマイドに始まり、スモン、エイズ、ヤコブ、肝炎・・その貴重な資料を後世に残すとともに薬害の再発防止に役立てようという取り組みです。

 薬害肝炎問題がまだ訴訟継続中だった頃、私自身、厚労省の薬事行政問題を調べるため、様々な過去の薬害訴訟の資料を紐解きました。

 例えばスモン訴訟では東京新宿にあるスモン事務所を訪問。弁護団長だった豊田誠弁護士にお願いして貴重な資料の貸し出しを受けたりしました。逆に厚生労働省内部の図書室も訪問しましたが余り有益な資料はありませんでした。

 そのほかにも福岡スモン訴訟の資料が当時、福岡市のマンションの一室に保管されていることを聞きつけ、やはり訪問して分析に利用させてもらいました。
 1970年代の弁護団の手書きの会議資料や立証計画、支援者との打ち合わせメモなど当時の空気が濃厚に浮かび上がるような資料に時間を忘れて引き込まれたものです。

 難しいのは一体どこに、どのような資料があるか分からずアクセス自体に苦労すること。そして将来的に保管困難となり散逸してしまう可能性が高いことです。

 例えば先ほど述べた福岡スモン訴訟の貴重な資料も最近、元原告の高齢化とともに資料保管が困難となり、大阪の人権博物館に緊急避難的に動かさざるを得ませんでした。

 私たち薬害肝炎に関する資料としても、準備書面・書証以外に、新聞記事、ビデオ、DVD、書籍、カルテ、文書、手記、インタビュー記事、支援者の通信、旗、418リストなど様々なものがあります。
 私を含め、福岡、東京、大阪、名古屋、仙台の各弁護団事務局、そして各地原告の自宅に保管されていますが、今後も永久に保管することは困難。例えば私の事務所では資料棚六段のほか資料庫一室が薬害関連で埋まっています。

 そこでこのような資料をまとめて一般に公開して薬害問題を考える契機の場として薬害資料館の設立を求めているわけです。

 この点、薬害肝炎訴訟が解決した後、厚労省が立ち上げた検証委員会の最終提言でも、薬害資料館の意義について次のように言及しています。

すべての国民に対する医薬品教育を推進するとともに、二度と薬害を起こさないという行政・企業を含めた医薬関係者の意識改革にも役立ち、幅広く社会の認識を高めるため、薬害に関する資料の収集、公開等を恒常的に行う仕組み(いわゆる薬害研究資料館など)を設立すべきである。

 つまり訴訟の資料という側面にとどまらず、薬害再発防止のための情報公開という視点から資料の保管が求められているわけです。

 年に一度開催される薬害肝炎全国原告団弁護団と厚労大臣との協議会でも議題に取り上げ、推進を求めています。
 これに対して、厚生労働大臣からは以下のような回答がなされている状況です。

厚生労働大臣から、資料館設置の実現に向けて厚生労働省としての考え方に変わりがないこと、他方で、資料館設置に向けて具体的な構想やスケジュールを示すことは難しく、できる限り前進するように努力していくこと、資料館設置の具体的なハードルとして、集めた税金の使い方の表れとしての予算があり、国会の理解を得ていく必要があることを回答した。

 協議の場については、随時話し合いを行っていくと回答した。厚生労働省による薬害資料収集の取組としては薬害の教訓を社会で生かしていくための薬害資料の活用方法に関する研究の実施、薬害被害者の生の声を後世に伝えるための証言映像の作成・保存を引き続き行っていくと回答した。資料の保管についえてゃ、被害者個々人による資料保管の困難さについて理解したうえで、廃棄・散逸寸前の資料の緊急避難、中性紙製の箱への保管による資料の劣化防止に取り組んでいることを紹介しつつ、引き続き取り組みを進めていくと回答した。

 先日の名古屋での全国原告団弁護団会議においても、弁護団による資料整理を引き続き進めていくことを確認しましたが、原告団弁護団が元気なうちに、作業を軌道に乗せることが何よりも求められてます。

総会を終えて大臣協議へ

 長時間にわたる九州原告団総会でしたが、薬害資料館以外にも、「恒久対策(治療体制の整備)」、「再発防止」、「個別救済」といった様々な課題の現状を共有し、さらなる取り組みの重要性を再確認した総会になりました。

 この日の九州原告団総会と同様に東京・大阪・名古屋・東北でも総会を行っており、今年の厚生労働大臣との協議会に臨む予定です。