古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

自保ジャーナル2070号96頁、担当した交通事故訴訟判決の解説

◆自保ジャーナル2070号96頁の紹介

 私が担当した交通事故訴訟の判決(大阪地裁令和元年12月24日)が、自保ジャーナル(2070号96頁)に掲載されましたのでご紹介します。

 自保ジャーナルとは株式会社自動車保険ジャーナルが発行する交通事故に特化した判例雑誌です。裁判所の推薦等を受けて全国の交通事故訴訟の判決から紹介に値する判決が掲載されています。
 各保険会社の担当者や交通事故を専門とする弁護士は必ず目を通す判例集の一つと言えるでしょう。

 私の事務所ではこの自保ジャーナルを定期購読するとともに、自保ジャーナルの発行する判例検索システム(半年に一度、DVDーROMが郵送されてきます)も契約しており、日々の業務に活用しています(なお株式会社ぎょうせいが発行する「交通事故民事裁判例集」も定期購読しています)。

◆事案の概要

 依頼者である被害者が夜間、帰宅途中、横断歩道外の道路を横断中に、高速度で進行してきて相手方車両(バイク)が衝突し、依頼者が外傷性くも膜下出血・頭蓋骨骨折等の受傷し救急搬送されました。なおバイクを運転していた相手方も転倒して傷害を負いました。

 当方が人身傷害保険を利用して一部損害の填補を受けていましたが、相手方から訴訟提起してきたため、当方からも、保険会社の求償訴訟と依頼者の反訴を提起したものです。

◆過失

 本件事故の基本の過失割合は、「当方30対相手70」となります(別冊判例タイムズ33図)。
 当方からは、夜間+5、相手速度違反の重過失-20を主張。裁判所は、当方主張通り、15対85と認定したものです。

 これに対して、相手方は「当方の酒酔いによる道路横断の過失」を主張しましたが、当方は、刑事記録及び本人尋問で立証しました。
 裁判所は「歩行がふらふらしていたなどの事実は証拠上認められず、飲酒が過失に影響を与えたとは言えない」として、相手方主張の修正は認定されませんでした。

◆後遺障害

 当方は、自賠責保険の事前認定によって、「胸腹部臓器の機能に障害を残すもの」として13級11号が認定されていました。
 これに対して、相手方は、「体内にステントが留置されているだけであり、労務はもとより日常生活にも何ら支障がない」として、後遺障害を否認して逸失利益はないと主張しました。

 当方は、本件事故による受傷のため、深部静脈血栓症、肺動脈塞栓症を併発して、左下大静脈にフィルターが留置されており、抗血栓薬療法を余儀なくされていることを指摘。

 その上で、体内に留置したフィルターの合併症として、血腫や感染・疼痛、さらには再び下大静脈閉塞を引き起こしたり、周囲臓器への穿通が指摘されていること、医師からなるべく業務量及び業務時間について減らすとともに、デスクに座ったままの状態を避けるように指示を受けていること、現在も抗血栓薬であるワーファリンの投薬治療を継続しており、それによる定期的な通院治療も余儀なくされていること、ワーファリンの副作用としてふらつきや眩暈に襲われるほか、恒常的な吐き気や下痢に苦しめられ、事故前と同等の就労をこなすことは困難な状況にあることなどを主張しました。

 さらに本人尋問においても依頼者の日常生活を詳細に証言した結果、裁判所は、当方主張通りに後遺障害13級を認定しました。

◆事件を振り返って

 依頼者は大阪にお住まいでした。尋問準備についても「福岡に行きますよ」と言ってくれましたが、体調を考えて電話による数回の打合せを行った上で、尋問当日、裁判所近くで最終打ち合わせすることにしました。

 大阪地裁の尋問ケースでは、これまでも、裁判所近くの貸会議室、裁判所の控室などで依頼者と打合せた経験がありましたが、大阪市役所の喫茶室で行ったのは初めてでした。
 やや遅い時間、客もまばらになった喫茶室の奥のテーブルで向き合って冷えたコーヒーを飲みながら、依頼者の近況含めてじっくりとお話を聞いたことをよく覚えています。

 相手方が無保険であったため支払い能力に限界があるほか、そもそも当方も受領済みの人身傷害保険額以上の損害が発生するといえるのか等いろいろとあった事案でしたが、判決によって、金銭面というよりも感情的に依頼者が納得されたことが一番良かったと思われる事案でした(大阪地裁判決に対しては、相手方が控訴したものの、地裁判決をベースに大阪高裁で和解成立)。