古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

厚労省研究班が「座談会~肝炎患者のおかれた状況について考える」を開催し、冊子を発刊

◆肝炎ウイルス感染者の偏見や差別による被害防止への効果的な手法の確立に関する研究」班の活動とは

 「肝炎ウイルス感染者の偏見や差別による被害防止への効果的な手法の確立に関する研究」班(主任研究者八橋弘)が立ち上がって3年。

  平成21年に制定された肝炎対策基本法は、肝炎対策の総合的な推進を図ることを目的とした法律です。

 肝炎対策基本法9条が「肝炎対策基本指針」の策定を求めています。
 そして肝炎対策基本指針第8章が「肝炎患者等が肝炎の病態及び治療に係る正しい知識を持つことができるよう、普及啓発及び情報提供を積極的に行うとともに、肝炎患者等の人権を守るため、肝炎患者等が不当な差別を受けることなく、社会において安心して暮らせる環境づくりを目指し、・・・すべての国民が、肝炎について正しい知識を持つための普及啓発を推進する必要がある」と定めています。

 法律が定める普及啓発活動を検討する目的で研究班がつくられたものになります。

 B型肝炎やC型肝炎の治療法は以前と比較すると大きく進歩しました。ですが肝炎患者は周りの状況が変わらず、一人で悩んでいる方も少なくありません。
 この度、研究班の活動の一環として座談会が行われ、1冊の冊子にまとめられました。

◆座談会~調査結果の紹介

 パート1の座談会では、まず研究班の行った調査結果のデータが紹介されました。

 3548名のC型肝炎患者の差別偏見の頻度は、男性10・1%、女性17・2%。男性よりも女性の方が、ウイルス肝炎に感染していることで差別を受けた頻度が高い傾向がでています。この傾向はB型肝炎患者の場合も同様でした。

 

 さらに差別偏見の事例も紹介され、差別偏見が生まれる原因として、「必要以上に肝炎が感染するものではないか」と思われていることが指摘されています。

 B型肝炎、C型肝炎の感染経路は、血液や体液を介して感染成立する経血液感染です。
 しかし蚊で感染したり、一緒の鍋をつついて感染することはありません。また咳によってB型肝炎に感染することはありません。

 例えば、蚊がB型肝炎やC型肝炎患者を刺して吸血したとします。ウイルスは蚊のなかに入りますが、ウイルスが蚊の体内で増殖することはありません。また、蚊に刺されたときに蚊の唾液が入りますが、唾液の中にウイルスは存在しない。よって蚊によってB型肝炎やC型肝炎に感染することはないわけです。

 それにもかかわらず、必要以上に恐れてしまうというケースが今も残っています。C型肝炎やB型肝炎の病態を知らないために、抽象的な不安が増幅して差別につながっていることが強くうかがわれました。

◆相談事例を通じた座談会

 またパート2の座談会では、患者さんからの相談事例を紹介しつつ差別偏見の問題を考えていく座談会が行われました。

 「東京肝臓友の会」の電話相談窓口でも、C型肝炎は治療法が進展してウイルス排除可能になってきたため、C型肝炎についての電話相談は非常に減ってきているということ。
ただ差別偏見の問題については、C型肝炎患者さんから今も数多くの相談が寄せられていると紹介されています。

 C型肝炎の方からの相談内容

・ウイルスがあるときから歯科通院で嫌な思いをいています
・3軒に治療を断られた経験があります
・ウイルスが排除されても丁寧に診てもらえないです
・定期健診とか歯石の治療も嫌がられます

 人の心に根差す問題だけに特効薬はなく、マスコミや行政による周知、患者会等の粘り強い活動、医学教育など様々な方向性からの取り組みがまだまだ必要だと実感する座談会でした。

◆コロナウイルス感染による差別・偏見

 ところで最近は新型コロナウイルス感染による差別・偏見も社会問題化しています。

 今回の研究責任者である八橋医師が示唆に富むコメントをされていましたので最後に紹介したいと思います。

 ウイルス感染は感染性の疾患ですが、感染を広げないという感染防止と差別偏見というものは、実は裏表の関係にあります・・

 例えばある組織の管理者としては、感染で問題が発生したときには、それなりの責任を取らなければなりません。今の世の中は以前よりも物事の見方が厳しくなっている、なんとなく排他的に、防御的になっているのではないか、日本全体ですね。

 そのような背景が差別偏見の問題にはあるような気がします(50頁以下)