古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

薬害肝炎九州原告団総会2019を開催、原告団活動の振り返りと今後の展望

九州原告団総会2019を開催

 薬害肝炎九州原告団総会が3月16日、佐賀県唐津で開催されました。

 九州原告団は、九州沖縄山口にお住いの被害者で構成されます。そのため毎年3月の総会は九州沖縄各県持ち回りで実施しているものです。

 今年の総会は春晴れの気持ち良い天候の中、唐津市内に九州一円から原告弁護団が集いました。

原告団活動の振り返りと今後の活動の展望

 第1部は、「原告団活動の振り返りと今後の活動の展望」と題して、全国原告団代表として原告団活動をリードしてきた山口美智子さんの講演を行いました。

 山口さんは毎年、医学部等の学生さんに講演をしています。その講演資料をスライドで流しながら、2002年10月提訴以来の私たちの活動を振り返っていきました。
 さらにRKBテレビが作成し放映された「母は闘う!~薬害肝炎訴訟原告山口美智子の20年~」のDVDを流しました。

 山口さんの講演を受けで、九州原告団代表の出田妙子さん(熊本県)が、「今後の原告団活動」をテーマに発表を行いました。

 「実名原告の活動を振り返ることは少なかったので、私も懐かしかったし、新しく参加された原告さんもわかりやすかったのではないでしょうか」
 「裁判を開始から15年、裁判解決から10年立ちます。第三者組織が立ち上がれば、大きな山を超えるのかなと思います」
 「これからも自分の問題としてできる範囲で、全国会議や大臣協議に参加していただきたい」
 
 九州弁護団からは、弁護団共同代表の八尋光秀弁護士が我々の活動を総括しました。

 「われわれの裁判は、『自分たちだけが助かればよいものではない』と社会に訴えて解決してきました」

 「薬害肝炎訴訟は、法律の枠組みを超えて大きな解決を勝ち取れた裁判だった。その根底にはわたしたちだけの問題ではなく、国民全体の問題だと受け止めてもらった運動だったからである」

 「第三者組織も立ち上げれば終わりではない。他の委員会を見ても機能していないものが少なくない。本当の意味での薬害監視の第三者組織にしていかないといけない。同じ被害者を絶対に出さないんだという皆さんの思いが必要です。」

 「薬害肝炎訴訟を開始した当時は、C型肝炎は全員が治るという病気ではなかった。それがわれわれが薬害肝炎訴訟を開始して、国に対して恒久対策を求める中で、C型肝炎は完治する病気になってきた。恒久対策というのは医療全体にかかわる問題になります」
 「これからも一致団結して活動していきましょう」

九州原告団の活動報告~恒久対策

 休憩をはさんで第2部「原告団総会」では、各分野の活動報告をしていきました。

 「恒久対策」については、全国恒久対策班のキャップを務める出田妙子さんから。
 「恒久対策とはわたしたちの命のある限り治療体制の整備を求めていく活動です」、「一緒に闘いながらお亡くなりになった原告さんの顔を思い浮かべながら、もう少し早く良い薬を届けたかった」という力強い言葉に続き、詳細なレジュメに基づいて報告してもらいました。

 C型肝炎最新治療情報としては、「C型肝炎最後の治療薬」ともいわれるエプクルーサ配合剤(一般名:ソホスビル/ベルパタスビル配合剤)について報告。
 平成31年1月8日に製造販売承認され、2月26日は薬価収載・保険適用となった薬です。前治療で経口剤が効かなかった患者(慢性肝炎、代償性肝硬変)への再治療薬になります。リバビリン併用で24週の治療です。
 また非代償性肝硬変患者に対する治療も適用になり、その場合はエプクルーサ単独で12週の治療になっています。

 重症肝硬変・肝がん患者に対する治療費助成もついに平成30年12月1日からスタートしました。
 ですが例えば出田さんが熊本県に問い合わせたところ、熊本県ではまだ助成申請は1件もないということ。助成の条件が厳しすぎることも原因と思われ、2019年の大臣協議などで取り上げていく必要があります。

 現在全国の恒久対策班としては大きな残されたテーマとして「差別・偏見問題」をあげています。

 国立病院機構病院肝疾患患者6338名に対するアンケート(八橋弘研究代表)では、実に16・3パーセント(6人に1人)が差別など嫌な思いを体験したという数字が公表されています。
 男女別ではC型肝炎・B型肝炎問わず、男性より女性の頻度が高く、年代別では50歳未満が多いということです。

 また東京肝臓友の会の相談事例報告としては、「歯科での問診に正直に答えたところ、3度診療拒否された」、「お見合いして交際した後に感染を告げたら、激怒されて損害賠償請求された」など深刻な内容が寄せられています。
 差別・偏見問題はまだまだ道半ばであり、法教育も含めて根気強い活動が必要になりそうです。

 最後に出田さんは、薬害肝炎原告団の課題として「C型肝炎は治る時代になり、原告団の多くがSVR(ウイルス排除)を達成しているため、原告団の恒久対策への関心の低下がうかがえます」、「ですが肝炎対策における行政の取り組みを監視することは重要ですから、今後も息の長い活動が求められています」と訴えました。

九州原告団の活動報告~再発防止

 続いて九州原告団代表の小林邦丘さん及び手嶋さんからは「再発防止」について。
 再発防止は、「第三者組織」、「薬被連」、「薬害教育」、「薬害資料館」など幅広い分野を取り扱っています。

 手嶋さんから薬害フォーラム・PMDAとの協議など薬被連活動について報告があり、小林さんからは、今国会の薬機法改正に盛り込まれることになった「第三者組織」について詳細な報告がありました。

 薬害監視の第三者組織は、薬害肝炎原告団弁護団が創設を求め続けたものです。厚労省が設置した薬害肝炎検証委員会も創設を提言し、その後紆余曲折がありましたが、ついに実現にこぎつけたものになります。

 第三者組織の経緯がよくわかりますので、山口さんが2012年6月に新聞社に投書していた内容を紹介しましょう。

私たち薬害肝炎全国原告団は2008年1月、国との間の基本合意を締結した。この合意に基づいて「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」が設置され、審議の結果、「繰り返される薬害を根絶するには、行政から独立した第三者組織の創設が必要である」との最終提言が取りまとめられた。第三者組織は国会行政組織法8条に基づく委員会で、既存の審議会などとは別の組織にするべきだとされた。

また10年6月には当時の長妻昭厚生労働相が私たちとの定期協議の場で、厚労省から独立して医薬品行政を監視・評価できる第三者組織を創設する法案を、12年の通常国会に提出すると確約した。ところが、官僚はその確約に背き、提言どおりの第三者組織の設置に抵抗した・・・

・・「薬害根絶」は薬害肝炎訴訟の最大の目的のひとつだ。そのためにも、「命の尊さを改めて認識し、二度と薬害被害者を出さない」と誓った国との基本合意がないがしろにされてはならない・・

未来を生きる子どもたちを、薬害の被害者や加害者にするわけにはいかない。薬害肝炎原告団はそう声を上げ続け、第三者組織の創設を断固、求めて生きたい(2012年6月2日付「私の視点」朝日新聞)。

 最後に九州弁護団からは、弁護団事務局長の古賀から、劇症肝炎ケースなど個別救済の全国的な課題とともに、現在の福岡地方裁判所を中心とした九州訴訟の現状(提訴数・和解数)について報告させていただきました。

 懐かしい面々も久しぶりに集った2019年の薬害肝炎九州原告団総会。2002年以来の薬害肝炎活動の到達点について確認するとともに、改めて息の長い薬害肝炎活動の意義について原告団弁護団皆で共有できた総会になりました。