古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

薬害根絶フォーラム2017、HPVワクチン問題を特集し第三者組織についても意見交換

薬害根絶フォーラムが福岡で初開催

全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)が2017年10月15日、薬害根絶フォーラムを福岡で開催しました。
日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、福岡県薬剤師会、医薬品医療機器総合機構なども協賛しています。

薬害根絶フォーラムは1999年以来19回目の開催になりますが、福岡・九州で開催されるのは初めてです。
会場の九州大学医学部・百年講堂には各団体や支援者、医師・薬剤師・看護士・弁護士・市民など240名が参加。過去の薬害根絶フォーラムの最多入場者に並ぶということでした。

福岡市聴覚障がい者情報センターの協力により、壇上の横に設置された大きなスライドには、登壇者の発言内容が即時に要約アップされるなど、非常に配慮された運営が行われていました。

薬害被害者からの実態報告

第1部は薬害被害の実態報告として、薬害肝炎大阪原告団の武田せい子さんの司会のもと各薬害被害者から被害の訴えがありました。

地元福岡からも、薬害肝炎全国原告団代表の山口美智子さん、HPVワクチン被害者・原告の梅本美有さん・お母さんの邦子さん、スモン被害者の古賀道子さん、サリドマイド被害者の高瀬春子さん、筋短縮症の徳山千鶴子さんが被害を訴えたほか、MMRから栗原敦さん、ヤコブから坂野晴美さん、 HIVから後藤智己さん、陣痛促進剤から出元明美さんも登壇しました。
その中からいくつかの訴えを紹介します。

「陣痛促進剤による被害を考える会」代表の出元明美さんが先陣を切ってマイクをとりました。
出元さんは今から33年前の1984年4月、第三子の誘発分娩中に子宮破裂事故にあったものです。2種類の陣痛促進剤が既定の10倍以上の速度で投与され、わずか5分後から激しい陣痛が始まり、やがて間断のない陣痛が連続しました。そして陣痛の度に胎児心拍の低下が繰り返されました。分娩監視記録からも胎児の危険な兆候がうかがわれましたが、医師はそれを見過ごしました。誘発開始から3時間後、子宮口が6センチの時にとうとう子宮破裂に至りました。緊急で帝王切開しましたが、子は重度の脳性麻痺で出生し、1年8か月後に死亡しました。

出元さんからは最近報道されている無痛分娩の被害について、会員の事例報告もありました。
同会は1992年から陣痛促進剤の添付文書改訂を要望して、幾度となく改訂させてきましたがまだまだ十分とは言えないと訴えます。
例えば、アメリカのオキシトシンの添付文書・注意欄には、子宮破裂以外に「高血圧発作やくも膜下出血による母体死亡及び様々な原因による胎児死亡が、分娩誘発ならびに分娩促進のための子宮収縮剤使用に関連して報告されている」と記載されています。また、イギリスのオキシトシンの添付文書及びアメリカのガイドラインには「子宮の急速な収縮によって常位胎盤早期剥離が起こる」と記載されています。
ところが日本では、いずれの副作用についても「因果関係不明」とされ注意喚起が不十分であると訴えました。

またMMRワクチン薬害については、「MMR被害児を救援する」会事務局長の栗原敦さんから報告がありました。

MMRワクチンは乾燥弱毒生麻しん(M)、おたふくかぜ(M)、風しん(R)の混合ワクチンです。1988年に承認され1989年4月から定期接種が開始しました。ところが1989年の接種開始から1993年4月の接種見合わせまで、無菌性髄膜炎を発生した報告が1754例にも達したという被害です。

1993年に死亡2児の両親が提訴し、その後、重い障害を負った被害児と両親も提訴して、3家族7名の原告団となりました。大阪地裁2003年3月判決は、承認時と異なる製法のおたふくかぜワクチンを製造販売したことが、髄膜炎を多発させたと判断。国も企業への指導監督責任があったとして、双方に対して賠償を命じました(大阪高裁はほぼ大阪地裁判決を踏襲しましたが、1審判決後、被告の阪大微研会が賠償全額を支払って損害が填補されたため、国に対する請求は棄却されました)。

今回はMMR関連被害としての「おたふくかぜワクチンの副作用被害について、栗原さん自身の被害を説明しました。栗原さんはご自分の経験をふまえて他の被害者の支援も全国で行うほか、薬被連の中心メンバーとして活動を行っています。

私の息子は1979年5月、4歳半のころ、おたふくワクチンを接種しました。2週間後、39度高熱が3~4日続き、18日目に道路わきの草むらにてんかん発作で倒れたのです。

その後、なんとか副作用基金で救済されましたが、息子の被害は公式的には発表されておらず、社会的にはなかったことと同じなのです。

ワクチン被害の多くに知的障害、てんかんがあり、判断能力を奪われ自己主張できないのです。

私はこのような被害を訴えるとともに同じような被害者の認定手続きを手助けしています

薬害肝炎については、全国原告団代表である山口美智子さんから報告がありました。

薬害肝炎訴訟とはフィブリノゲン・クリスマシン・PPSBニチヤク等の血液製剤に混入したHCVウイルスに感染したC型肝炎被害者が国と製薬企業を被告として提訴した集団訴訟です。フィブリノゲンは製薬企業の控えめな推計によっても、1万人以上に感染被害を発生させたとされています。

被害者が2002年10月に東京地裁・大阪地裁で提訴した後、2003年4月福岡地裁、その後仙台地裁・名古屋地裁にも提訴し、全国5地裁にて集団訴訟が継続しました。
全国1つの「統一弁護団」「統一原告団」を標榜として活動。5地裁判決をてこに国の政治決断を2006年12月に勝ち取り、2007年1月に薬害肝炎救済法が制定して解決に踏み出しました。今も裁判所において被害救済が継続しているほか、薬害肝炎全国原告団弁護団は年1回の大臣協議において、「恒久対策(治療体制の整備)」「再発防止」について国と折衝しています。

山口さんは、来年1月に迫っている救済法の再延長の必要性を訴えるとともに、「薬害監視の第三者組織の実現について力を結集しましょう」と力強い言葉で報告を結びました。

特集HPVワクチン被害

そして第1部の最後には薬害HPVワクチン被害者である梅本美有さん(19歳)から被害の訴えがありました。

私はいまこの瞬間も痛みやだるさがあります。しょっちゅう吐き気が襲ってきます。気圧の変化に体がついていけず、耐え難い頭痛がします。様々な症状が予測もできないまま、入れ替わり立ち代わり出ています。
なぜ私や多くの女性がこんな症状に苦しめられないければならないのでしょうか。

私はこれまで、HPVワクチン接種後の健康被害を理解してもらえずに、一番の理解者である母にも、本当の辛さは分かってもらえない孤独をかみしてきましたが、裁判に参加して私と同じように苦しんでいる他の原告と話をしました。
みんなも体への不安や、医療機関での詐病扱いや、本人の怠けだろうという学校の無理解に傷ついていました。今はそのつらさを理解してもらえる仲間がいることを、心強く感じています。

私たちの失った日々はもう、戻ってはきません。でも、それでも私たちは前に進んでいかなければいけません。
同じ年代の人たちのように、友達を作り、たくさんのことを学び、社会に出て自立しなければいけません。いつまでも家族に迷惑をかけるわけにもいきません。
そのため早く治療法を確立してほしいです。普通に暮らせる元の体を取り戻したいのです。

私たちの望んでいることは特別なことではないはずです。副反応の被害を明らかにしてほしい、皆にこの被害を理解してもらいたい、元の身体に戻りたい、普通の生活がしたい、ただそれだけです。

最後に美有さんの母・邦子さんは、HPVワクチンの予防接種化に至る経緯についての疑問、十分な情報を与えられず漫然とワクチンを勧奨されたこと、勧奨された結果、どの家庭においても親が子に勧めてしまったこと、学校や職場で怠けもの扱いされ心因性にされてきたこと、悔やんでも悔やみきれない私のような母親が多数いること、世界中に何万人という被害者がいることを指摘した上、「薬害HPVワクチン訴訟の解決のために皆さんのご理解とご支援をお願いしますと」と訴えました。

討論「商品としての医薬品」

第2部では「商品としての医薬品、薬害教育と消費者教育の重要性」と題して、薬被連の代表世話人・花井十伍さんの司会で討論が行われました。

まずサリドマイドの増山ゆかりさんからは、「サリドマイド訴訟が和解したのは私が10歳のときでした。その時はどうして自分がこういう体になったのか、内容も正直よく理解できなかった。1999年から薬被害連の活動に参加するようになって、ようやく薬害に向き合えるようになった。なぜ自分が薬害にあったのか・・そこを掘り下げていくと、製薬企業の利益を生み出したいという企業論理がある。やりきれない気持ちになった。副作用と疑いながら対応しない製薬企業の構造がある。失うもののが大きいのは被害者であることを忘れてほしくない」とコメントしました。

次に「スモンを引き起こしたキノホルムは、赤痢の特効薬として使用されて第二次大戦前は劇薬だったのにその劇薬指定が外された。そして経済成長の中で安価で大量に販売されて被害が多発した」とスモンの高町晃司さんが報告。
続いて、東京HIV訴訟原告団の後藤智己さんは、「血友病患者は血液製剤を使い続けなければならない。企業からすると高価な薬を安定供給できることを意味する。当時、HIVウイルスの性質が徐々に判明してくる中で、企業として何をすべきであったのか。なぜ危険なことが分かった薬を使用しないように方向転換できなかったのか。企業が倫理性を発揮しても利益にはつながらない。しかしその姿勢が逆に裁判にもなり社会的制裁も受けることになった。結局、損することになるのに、それが当時わからなかったのが疑問である」と指摘しました。

これに対して司会の花井さんからも、「血液というものが産業化したことによってウイルスリスクが高まった」と背景を指摘しました。

そしてHPVワクチンの橋本夕夏子さんが、「子宮頸がんワクチンが大量に売り込まれる背景は何一つ知らなかった。コマーシャルでも大々的に子宮頸癌の危険性が強調されていた。学校からのパンフレット等で夢のようなワクチンと信じた親が、子に接種させてきたのである。裁判でも製薬企業は私たちの主張を何一つ認めようとしない。また新しいワクチンが承認申請されており、被害が広がらないのか危惧がある」と述べました。

その上で議論は、第三者組織の必要性に及んでいきました。

経済と薬が密接に結びついている。医療者側の甘さもある、消費者も家電製品等と違ってリスクを分かりにくい、薬に副作用があるのはやむを得ないという甘えもある。いったん承認されてしまうと社会も危険な薬と認識しにくい。だからこそ薬害肝炎山口美智子さんの話にあったように、薬事行政は三者に評価させることが必要ではないか(増山)

一生懸命にコストをかけて開発し、コストを回収した上、利益をあげる必要がある製薬企業当事者にとって、薬の客観的な評価は本来困難を伴うもの。その意味においても客観性を持った第三者機関に評価をゆだねるのが自然だと思う(花井)

製薬企業はコスト回収のために医薬品を売りたいのが現実。他の会社(自動車会社による車のリコールやタカタ等)に比べると薬害が発生した時の製薬企業の不利益が少ない。そのためにも第三者機関の創立も大切だ(高町)

各被害者の経験に基づいた討論は含蓄に富んだ深い内容であり、会場からの大きな拍手で福岡で初めて開催された薬害根絶フォーラム2017は閉幕しました。

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