古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

仙台市立病院で医療事故、心嚢穿刺による心臓損傷で高次脳機能障害に

◆仙台市立病院が600万円で示談

 心臓損傷による高次脳機能障害の医療事故が発生し、仙台市立病院が患者に対して金600万円を支払う内容にて示談したことが報道されました。

◆心嚢穿刺とその合併症

 心嚢(心膜)は、心臓を収める心膜腔を包む膜です。心臓表面を覆う臓側板とそれに面する壁側板とに分かれています。

 心嚢穿刺は、心嚢内に液体が大量に貯留していることが確認された際に、排液して心臓への圧迫を解除する目的か、液体の貯留している原因を検索するための検体採取を目的に行います。本件は後者の液体貯留の原因検索のために施術されたようです。
 心嚢穿刺の合併症としては、心筋損傷、冠動脈損傷、心腔内穿刺、不整脈(心室頻拍・心室細動)、気胸、血胸、肝損傷、感染などがあります。

 ただし、心嚢穿刺の主要合併症は心エコー下で適切に実施すれば1・4%程度にとどまります。そのため心室腔穿刺は手術前の心エコによる不十分なイメージによるとも指摘しており、医療過誤として示談に至るケースも少なくありません。
 また心嚢穿刺が発生した後の処置によって不適切な処置が行われ被害が拡大してしまうケースもたまにあります。

 私が遺族から依頼を受けて示談交渉した事案では、心嚢穿刺の処置後の施術や経過観察に問題があり、患者が翌日に死亡したケースがあります。医療機関側は心嚢穿刺の施術ミス自体は否認したものの、全体の医療行為(経過観察や説明義務)に問題があったとして謝罪して早期示談に至ったものがあります。

◆裁判例

 心嚢穿刺については作為による注意義務違反だけでなく、速やかに心嚢穿刺により血液を吸引除去するか、それができないのであれば直ちに転院させるべきであったとして不作為の過失を認めたケースもあります。

 例えば交通事故による心筋挫傷による外傷性急性タンポナーデによって患者が死亡したケースについて、大阪高裁平成15年10月24日判決は、まず「心破裂による外傷性急性心タンポナーデは、出血速度が早いため、現場即死あるいは受傷後短時間で発症するが、受傷後2時間半頃に症状が出るのは、心破裂は極めて稀で、ほとんどの原因は心挫傷であること、心挫傷の場合は、心嚢穿刺又は心嚢を切開して貯留した血液の一部を出すことで症状を改善することができ、心臓の手術は必要ではないこと、血液を吸引除去あるいは手術的に心嚢を開放(心嚢切開又は開窓術)していれば、救命できた可能性が極めて高いこと、受傷から容体が急変するまでの約2時間半は循環動態も安定していたので、この間に重度外傷患者の診療に精通する施設に搬送していれば、ほぼ確実に救命できたことが認められる」認定しました。

 その上で、「以上からすると、医療機関としては、遅くとも経過観察措置を講じた時点で、速やかに胸部超音波検査を実施する必要があり、それをしていれば、心嚢内の出血に気づき、直ちに心嚢穿刺により血液を吸引除去し、あるいは手術的に心嚢を開放(心嚢切開又は開窓術)し、仮に本件病院で心嚢切開又は開窓術を実施できないのであれば、3次救急病院に搬送することによって、救命することができたということができ、被控訴人の過失・注意義務違反を認めることができる」として、医療機関に賠償を命じたものです。

 仙台市立病院(太白区)で昨年4月、医療行為が原因で患者が高次脳機能障害となる医療事故が起きていたことが28日、分かった。病院側は患者側に謝罪し、600万円の賠償金を支払うことで和解した。

 病院によると、昨年4月14日、医師が病状検査のため、心臓を包む膜(心膜)と心筋の間に注射針を刺して液体を採取した際、誤って心臓を傷つけ、血液循環が悪化し、患者に高次脳機能障害が生じたという。

 市は市議会2月定例会に損害賠償の決定に関する議案を提出する。市立病院の担当者は「改善点をはっきりさせ、再発防止に努めていく」と話した(2021/1/29 河北新報)