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菊池事件国賠訴訟

菊池事件とは

最高裁判所は、ハンセン病患者を当事者とする裁判手続きの一切を、裁判所法69条2項に基づいて、特別法廷で行うことを許可し続けていました。

1948年から1972年までハンセン病患者の95件の裁判(1960年以降は27件)が、公開法廷ではなくハンセン病療養所内等に設置された特別法廷で審理されていたのです。

菊地事件(藤本事件)とは、死刑判決を言い渡されたハンセン病患者に対する違法な手続きを巡るものです。

1952年6月、熊本県下で起きた殺人事件の容疑者としてハンセン病患者藤本松夫氏が逮捕されました。

藤本氏は容疑を争ったものの、1953年8月、熊本地裁出張裁判で死刑判決を言い渡されます。

その後、控訴審(1954年12月)、上告審(1957年8月)ともに棄却となったが、三度の再審請求を行いました。

全患協や支援者が数回の現地調査を行い無実の証拠を積み重ねていた矢先、遺書を書く時間も与えられずに、しかも家族にも本人にも予告なしに、1962年9月14日、死刑が執行されたのです(「全患協運動史」67頁)。

菊池事件では、捜査当局がハンセン病感染のおそれと偏見から容疑者に対する取り調べを公平かつ十分に行わず、証拠物件も危険物扱いにして十分な検証をしなかったとされている上、公判手続も療養所内の仮法廷及び菊地医療刑務所内の特設法廷で非公開で行われました。

「裁判は刑務所内の特設法廷でひとりの傍聴人もなく、憲法の基本的人権として保証している反対尋問さえさせないで、裁判記録をあつかうにもゴム手袋をもってし、記録をめくるためには竹の箸を使用するという前近代的な態度であった」(「日本らい史」244頁)。

ハンセン病患者に対する差別と偏見に満ちた捜査、裁判手続が行われたことが明らかでしたが、「こうしてこの事件は問題を残しつつ歴史の暗闇の中に消えていった」と評されていました(「日本らい史」244頁)。

最高検察庁の再審請求拒否の回答

ハンセン病隔離法廷について、患者団体らの要請に基づいて最高裁が異例の検証を行い、謝罪しました(末尾関連ブログ記事参照)。

合わせて、患者団体らは検察庁に対しても、藤本事件の再審請求を求めたのです。

これに対する最高検察庁及び熊本地検の回答は、以下の通り、再審請求を拒否するものでした。

1 昭和35年以降、特別法廷が指定された事件につき、非常上告を行うべきとの要望について(最高検)

要望者の皆様からは、再審請求の要請とは別に、昭和35年以降にハンセン病を理由として開廷場所の指定がなされた事件について、非常上告を行うべきとの御要望があったものと承知しています。

そこで最高検において、刑事訴訟法が定める非常上告理由があるか検討しましたが、ご指摘のあった開廷場所の指定は司法行政上の措置であり、最高裁による開廷場所の指定に裁判所法69条2項に反する違法があったとしても、指定された場所で行われた訴訟手続自体が直ちに違法であったとは認められないことから、非常上告の理由がなく、非常上告は行わないとの結論に至りました。

なお、今回の要請を受けて検討をする中で、私たち検察も、様々な資料に触れ、ハンセン病患者の方々がハンセン病療養所に強制隔離され、家族や親しい人たちが暮らす故郷に帰ることができなかった方々が大勢いらっしゃったことにつき、改めて、重く受け止めています。

最高裁の調査報告書において、「事務総局による裁判所外における開廷の必要性の認定の運用は、遅くとも昭和35年以降については、合理性を欠く差別的な取り扱いであったことが強く疑われ、認可が許可されるのは真にやむを得ない場合に限られると解される裁判所法69条2項に違反するものであった」、「このような誤った指定の運用が、ハンセン病患者に対する偏見、差別を助長することにつながるものになった」、「さらには、当事者であるハンセン病患者の人格と尊厳を傷つけるものであった」とされています。

昭和35年以降におけるハンセン病を理由として行われた開廷場所の指定は最高裁による司法行政上の措置であったとはいえ、検察としても、これらの事件に関与したところであり、この場所をお借りして、おわび申し上げます。

ハンセン病患者の方々やその御家族の方々の置かれた境遇やご苦労に思いを致すと、今後とも、関係者の人権が司法手続においても十分に保障されるよう検察においても努力してまいりたいと考えております。

2 菊池事件を検察官において再審請求すべきとの要請について(熊本地検)

菊池事件につき、要望者の皆様から提出を受けた意見書、補充書でのご指摘を踏まえて、改めて本件記録を精査検討し、再審事由の存否につき検討しましたが、本件については、再審事由があるとは認められず、検察官による再審請求は行わないとの結論に至りました。

また、意見書等でご指摘のあった「憲法的再審」についても検討しましたが、現行刑事訴訟法上、再審事由とされていない事由を理由として再審請求を行うことはできない上、ご指摘のあった憲法違反を認定することは困難であると考えられます。

なお、裁判の公開原則の点については、最高裁判所の調査報告書においても、「刑事収容施設内で開廷された事例及びハンセン病療養所内で開廷された事例のいずれの場合であっても、下級裁判所が、最高裁判所の指示に従い、裁判所の刑事場及び開廷場所の正門等において告示を行っていたこと、下級裁判所は、指定された開廷場所において傍聴を許していたことが推認でき、このような開廷場所の指定に当たっての運用は、憲法の定める公開の要請を念頭に置いて行われたものと認められるし、裁判所法69条2項が想定する公開の要請を満たさないと解される具体的形状を有する場所が開廷場所として選定された事例があったとまで認定するには至らなかった」とされており、本件、すなわち、いわゆる菊池事件について、公開原則違反の事実を認めることはできませんでした。

以上のとおり、検察庁としては、再審請求を行うことはできないと判断したものです。

菊池事件国賠訴訟提起にあたっての弁護団の説明

このようにハンセン病菊池事件について、検察庁が再審請求権限を行使しないため、全原協、全療協、菊池支部の3団体から6人が原告となって、平成29年8月29日、国を被告とする国家賠償請求訴訟を熊本地方裁判所に提起したのです。

その概要は以下の通りです。

第1 本訴訟の概要

全国ハンセン病療養所入所者協議会、ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会及び国立療養所菊池恵楓園入所者自治会の3団体は、平成24年11月7日、検察庁に対し、菊池事件について再審請求することを求める要望書を提出した。

これは、ハンセン病に対する差別・偏見によって遺族による再審請求が困難である現状に鑑み、公益の代表者として再審請求権限を付与されている検察官に対し、自ら再審請求して判決を是正することを求めたものである。

しかしながら、この要請に対し、検察庁は、平成29年3月21日、再審請求権限を行使しないことを明らかにした。

検察庁が菊池事件について再審請求権限を行使しないことは、検察官に課された再審請求権限行使義務に違反するものであり、そのことによって原告らは精神的苦痛を被った。

そこで本訴訟は、原告らが、国を被告として、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めるものである。

第2 請求の趣旨

本訴訟において原告らが国に対して請求する損害賠償の額は、一人あたり金10万円である。

第3 請求の原因

1 菊池事件は、(1)特別法廷という憲法違反の手続で審理されており、かつ、(2)実体法上も新証拠により無実が明らかであるから、再審のうえ無罪が言い渡されるべき事件である。

そこで、憲法擁護義務を負い、また、ハンセン病問題基本法によってハンセン病隔離政策によって受けたハンセン病患者らの被害回復義務を負う検察官は、再審請求権限を行使して、本件について再審開始に努める職務上の義務を負っている。

したがって、検察官がこれらの職務上の義務に違反して、本件について再審請求権限を行使しないことは、国家賠償法上の違法となる。

2 原告らは、国のハンセン病隔離政策により、ハンセン病療養所に長年にわたって隔離収容されるとともに、差別・偏見を受けるべき地位に置かれるという被害を受けた者であり、国対し、その被害の回復を求める請求権を有する。よって、原告らは、「特別法廷」によって助長されるに至った原告等に対する差別・偏見を解消するための被害回復請求権を有している。

しかるに、前記検察官の違法行為によって、原告らは、この差別・偏見を解消するための被害回復請求権を侵害され、精神的苦痛を被った。したがって、原告らは、被告国に対し、慰謝料を請求する権利を有するのであって、その額は一人当たり金10万円を下さることはない。

菊池事件国賠訴訟の推移

2017年11月27日、熊本地裁(小野寺優子裁判長)において第1回口頭弁論期日が開かれました。

第1回期日では、原告の竪山勲氏と弁護団共同代表の徳田靖之弁護士が意見陳述する一方、国側は「原告の主張は適当でなく、審理する必要性は皆無だ」として請求棄却を求めて争う姿勢を示しました。

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