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交通事故 損害賠償請求の諸論点

交通事故では、交通事故と医療過誤の競合の場合にどう考えるか、定期金賠償を認めるか、東洋医学による施術費はどのような要件で認められるか、高次脳機能障害やCRPS・RSDの後遺障害が認められるか、損益相殺はどのように行われるか、女性の高額所得者の生活費控除率は通常通りで良いのか、赤字の事業所得者の休業損害は認められるか・・・等、複雑でかつアップデートされていく論点も少なくありません。

ここでは最新裁判例や最高裁、最新の学説など注目すべき論点について、弁護士古賀克重が随時解説をしていきます。

Q1車両降車時の事故の場合にも、「運行起因性」が認められますか?

A1自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」といいます。)第3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と定めています。

この自賠法第三条の「(その運行)によって」という要件は、いわゆる運行起因性と言われています。そして自賠法以外の各種保険契約においても、約款上、保険金を支払うための要件となっています。

そして運行起因性について、通説・判例は、運行と事故との間に事実的因果関係があるにとどまらず、相当因果関係があることと解釈しています。

車両運転中の事故であれば当然、運行起因性は認められますが、それでは車両が停止している場合に発生した事故についてはどう考えられるでしょうか。

この点、最高裁判所平成28年3月4日判決は、老人デイサービスの送迎車から降車して着地する際に骨折等の傷害を負ったというケースについて、以下のように保険契約における運行起因性がないとして、保険請求を認めませんでした。

事案の概要は次のとおりです。

A(83歳)は、身長約115cmと小柄な女性で、円背があり、骨粗鬆症に罹患していた。

Aは、老人デイサービスセンター(本件センター)の送迎用ミニバン(本件車両)で自宅前まで送られ、降車のため着地した際、右大腿骨頸部骨折の傷害を負った(本件事故)。

地面から本件車両の床ステップまでは約37cm、座席面までは約72cmであった。Aが本件車両から降車する際には、Aの年齢及び身体状況に鑑み、通常は、本件センターの職員が介助するとともに、本件車両の床ステップと地面との間に高さ約17cmの踏み台が置かれ使用されていた。しかし、本件事故時には、踏み台は使用されず、職員がAを介助して(手を引いて)本件車両の床ステップからアスファルトの平坦な地面に下ろしたところ、着地の際に本件事故が発生したものである。

そして、本件事故に関する搭乗者傷害保険金請求権の発生の有無をめぐり、本件事故が本件車両の『運行に起因』するものであるかが争われた。

これについて、裁判所は次のとおり判断しました。

本件事故は、Aが本件センターの職員の介助により本件車両から降車した際に生じたものであるところ、本件において、上記職員が降車場所として危険な場所に本件車両を停車したといった事情はない。また、Aが本件車両から降車する際は、上記のとおり、通常踏み台を置いて安全に着地するように本件センターの職員がAを介助し、その踏み台を使用させる方法をとっていたが、今回も本件センターの職員による介助を受けて降車しており、本件車両の危険が現実化しないような一般的な措置がされており、その結果、Aが着地の際につまずいて転倒したり、足をくじいたり、足腰に想定外の強い衝撃を受けるなどの出来事はなかった。そうすると、本件事故は、本件車両の運行が本来的に有する危険が顕在化したものであるということはできないので、本件事故が本件車両の運行に起因するものとはいえない。

なお最高裁判決前の裁判例ですが、静岡地裁下田支部昭和62年12月21日判決は、降車時にシートベルトが足に引っかかり車外に転倒して受傷したという事案について、以下のように判示しています。

原告が降車しようとした際、前座席のシートベルトに足がひっかかり、車外に転倒して骨折した本件事故は、たとえ右のシートベルトが加害車両の固有の装置であるといえるとしても、それをその目的にしたがって操作、使用したことに起因するものとは言い難く、本件事故は、原告が停車直後、加害車両の後部座席右側ドアから降車する際、自らの過失もあって、シートベルトに足をひっかけて転倒するという自動車の運行とは直接かかわりのない原因によって発生したものというほかはない(原告は、その第2回本人尋問において、『本件事故日の前日にも、同様の仕事で加害車両に同乗し、シートベルトが運転席の脇の方に下がっているのを見た』旨供述している。)

搭乗者傷害保険請求に対する事例判断ではありますが、最高裁が、車両降車時の事故について判断を示しましたので今後の実務の指針になることは間違いないでしょう。

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