大阪地裁 令和3年10月29日判決
12級右足関節痛及び14級腰臀部痛の後遺障害は医学的に説明可能な症状とは認められないと事故との因果関係を否認した
解説
【事案の概要】
有職主婦の原告(40代女性)が自転車で一方通行の路上を走行中、前方の被告車両(普通乗用車)が後退してきたため停止したところ、被告車両が後退を続けて衝突され、右足関節捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負い、1年10か月通院した事案です。
後遺障害について自賠責は非該当でしたが、原告は、12級右足関節痛等及び14級腰臀部痛の後遺障害を残したとして、既払金を除き約1497万円を求めて訴えを提起しました(自保ジャーナル2110号98頁)。
【裁判所の判断】
大阪地方裁判所は、まず腰部について、「当初攣ったような痛みと表現されていたものが、4日後には改善し、尾骨の痛みとされたり、正常とされていた仙腸関節部にリハビリが処方されたり、骨萎縮を含めて他覚所見がなかったのに、医学的機序が明らかにされないまま、複合性局所性疼痛症候群と診断されたり、医学的に説明可能な症状とは認めれない」と判断しました。
また大阪地裁は、右足部についても、「本件事故直後は、独歩可能で、膨張なく、痛みも僅かであったし、パートタイム勤務も休業することなく、他覚所見もなかった(反訴原告は、腫れが醜くなったため本件事故当日に受診したと供述したり、陳述したりするものの、信用できない)。にもかかわらず、約2週間後、松葉杖が必要になり、症状も、右足関節外側に痛み僅か、外果前方軽度圧痛であったものが、約10日誤、足背関節部痛・足親指近くの甲の痛みに変わったり、約2ケ月後、踵や右足薬指足底部痛が加わったりするようになり、1年以上経過して行われたMRI検査で高信号域が認められた。下垂足(他動で関節可動域なし)の医学的機序も明らかでない。したがって、医学的に説明可能な症状とは認められない」と判断しました。
その上で、後遺障害について因果関係を認めないのが相当であると結論づけたものです(原告控訴中)。
【ポイント】
一方通行路を逆走するように後退した被告車両の速度は低速であり、衝突後、原告は転倒しませんでした。
原告の訴える症状は事故態様とも整合しないと思われます。
そして原告の訴える各症状が変遷したり、部位が変わったりしており、この点について医学的に説明可能な症状とは認めらないと判断したものになります。
同種裁判例とは、原告(50代男性)の頸部痛は、MRI検査での頚椎の所見が事故によって生じたと認めることはできないと否認し、腰痛についても医学的根拠があるとは認めることは困難であるとして後遺障害の残存を否認した神戸地裁平成28年9月26日判決(自保ジャーナル1988号)などがあります。