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交通事故 裁判例・解説

古賀克重法律事務所 交通事故 裁判例・解説

日本全国の交通事故は年間53万6899件、死者数4177人、負傷者数66万6023人(平成27年・警察庁調べ)にも達しています。
福岡県内の交通事故に限っても年間3万9734件、死者数152人、傷者数5万2758人に達しています(平成27年・福岡県警調べ)。

このような多数の交通事故の発生に比例して、全国の簡易裁判所に提訴された損害賠償請求訴訟も急増しています。
2005年は5000件を下回る程度でしたが、2015年には1万9000件を越えています。
簡易裁判所の全ての裁判数が、2009年の65万8000件から2015年の32万1000件と半減していますので、交通事故訴訟の増加ぶりが分かるかと思います。

その背景は、弁護士費用特約保険(弁護士特約)の普及です。弁護士特約とは、年間2000円から3000円程度の保険料で、事故に合って損害賠償請求する場合には、紹介した弁護士、もしくは、自分が選任した弁護士に対して弁護士費用を支払ってくれる制度です。

そのため例えば、駐車場で接触して5万円の損害が発生したが過失割合が納得いかない、交差点でミラーが接触したが信号の色に食い違いがある・・・というように少額の紛争でこれまでは弁護士を選任すると費用倒れになったようなケースについて、弁護士を選任できるようになっているのです。

一方でその解決水準は自賠責保険基準、任意保険会社基準、裁判基準と分かれています。そのため被害者が十分な被害賠償を受ける、逆に加害者が不正な支払を行わないために、弁護士がその解決に関与していく必要性が極めて高い分野といえるでしょう。

実際、最高裁判所の司法研修所も、簡易裁判所の審理を迅速に進めるためのポイントを手引きにまとめて、福岡簡易裁判所を含めて全国の簡易裁判所に配付するほどです。
その中では、「交差点の衝突事故で双方が青信号と主張しているケース」、「バックで駐車場に駐車しようとしたら、横に停車していた車が動いて接触したケース」など10の事例を取り上げて、事実認定のポイントを解説しています。

そして交通事故の多さに比例して、裁判例もいわば星の数ほどあるのが実情です。

ここでは損害の公平な分担という不法行為制度(民法709条)の趣旨を実現するために参考になる裁判例について、弁護士古賀克重が随時解説していきたいと思います。

交通事故 裁判例・解説

仙台地裁平成28年12月26日判決

無免許・飲酒・仮眠状態の車に衝突された死亡慰謝料3000万円、夫200万円の固有の慰謝料を認めた

解説60歳の女性が、交差点横断歩道を横断中、無免許運転をし、しかも飲酒をして仮眠状態だった車両が信号無視で車両に衝突した後、女性に衝突して死亡させたという痛ましい事件です。

裁判所は被害者の女性が夫の世話をしながら自営業で一家の支柱として生計を支えていたことを認定した上で、被告が対面信号が赤色を表示しているにもかかわらず高速度で交差点内に進入して事故を惹起した上、事故後に何らの救護措置もとらずに現場を逃走していることから、本件事故の悪質性・被告の過失の内容・程度・事故後の対応を考慮して、死亡慰謝料3000万円、夫固有の慰謝料として200万円を認定しました。

いわゆる赤本では死亡慰謝料は、一家の支柱2800万円、母・配偶者2500万円、その他2000~2500万円となっています。

ただし事案によってより高額の死亡慰謝料も認定されています。

例えば、大手監査法人勤務職員(男性34歳)が死亡した事案について、死亡慰謝料3000万円、妻200万円、父母各100万円の合計3400万円を認定した東京地裁平成20年8月26日判決があります。

また、生後11か月の長男とともに死亡した男性21歳について、死亡慰謝料2800万円、妻400万円、両親各100万円の合計3400万円を認定した秋田地裁平成22年7月16日判決があります。

さらに、飲酒の影響によって35~45キロの速度超過でセンターラインを越えて反対車線の車両に衝突して、母と同居の50歳男性が死亡した事案について、死亡慰謝料3200万円、母300万円の合計3500万円を認定した東京地裁平成28年4月27日判決もあります。

加害者側の悪質性や事故の悲惨さ等からいわゆる赤本基準を超えた死亡慰謝料が認定される傾向にあります。

この点は医療過誤事案も同様であり、基本的には赤本基準をベースにしつつ、過失の程度によって加算して認定される傾向があります。

札幌地裁平成28年3月30日判決

1級1号遷延性意識障害を残し余命期間にわたって入院の30歳男子の将来医療費を年額840万円で認定した

解説30歳男子公務員が交差点を歩行横断中、被告運転の普通貨物車に衝突されて、外傷性脳内出血、外傷性くも膜下出血等の傷害を負い、遷延性意識障害の1級1号後遺症を後遺したとして、既払金1億2209万円を控除して4億6379万円を求めて訴えを提起した事案です。

札幌地裁は、原告の将来医療費を余命期間にわたって年額840万円で認め、将来介護費は年額219万円で認めました。

将来医療費については、「原告が症状固定時から引き続き46年の余命期間にわたって入院する必要があり、1年当たり840万円の医療費が生じることになったものである」、「原告は平成28年1月まで、国民健康保険法に基づく保険給付等による助成を受け、入院に伴う医療費を支払っていないが、その後は、同様の保険給付等の存続が確実であるということができないから、損害から控除すべき保険給付等は、当初の3年のものである」と判断したものです。

将来の医療費については重篤な後遺障害を後遺した場合に特に論点となります。

同様の裁判例としては、1級1号高次脳機能障害を残す62歳男子の将来入院費について、月額12万円で平均余命の21年間に渡って認めた東京地裁平成25年8月6日判決や、1級1号遷延性意識障害を残す74歳女子について、平均余命12年間について毎年108万円の治療費を認定した大阪地裁平成27年5月27日判決などがあります。

大阪地裁平成28年8月29日判決

1級四肢麻痺を残す47歳男子の将来介護費を職業付添人と近親者合わせて日額1万8000円で認定した

解説47歳男性が自動二輪車で走行中、対向右折車を避けて転倒し、頸髄損傷等による四肢麻痺障害を後遺したものです。

大阪地裁は、将来介護費について、職業付添人と近親者合わせて日額1万8000円を認定しました。

原告(被害男性)は常時会介護を要する状況であり、妻がその一部を担っていましたが、大半は介護サービスを利用して職業付添人が行っていました。

裁判所は、職業付添人とともに妻による在宅介護を合わせて行う必要性・相当性があると認定した上、合わせて1万8000円の介護費を損害として認定したものです。

交通事故の損害賠償額算定基準(いわゆる赤い本)によると、「職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円」とされますが、裁判例は、各介護の実情に応じて柔軟に認定しています。

例えば、大阪地裁平成19年1月31日判決は、高校生女子が遷延性意識障害を後遺した事案において、現在介護に当たっている母が67歳までは母も補助を行う可能性を考慮して日額1万4000円、母の67歳以降は日額1万8000円、合計1億977万円の損害を認定しています。

横浜地裁平成28年6月30日判決

左大腿切断等から2級後遺障害を残す66歳男子の自宅付添費を日額3500円で認め、将来介護費は日額1000円で平均余命分認定した

解説66歳男子会社員が原付自転車を運転中、先行する中型貨物が路外施設に左折して衝突されたものです。

横浜地裁は、左大腿切断等から2級後遺障害を残した被害者の自宅付添費を日額3500円で認め、将来介護費は日額1000円で平均余命分認定しました。

被害者は日常生活はほぼ独力で行うことが可能な状況でしたが、呼吸苦・動悸によって100メートル以上の報告が困難な状態であり、今後も外出時や入浴には近親者の介助が必要でした。裁判所は、「介護が必要な場面は限定されたものにとどまり、将来職業介護者を依頼する必要性が生じる蓋然性があるとは認められない」として、日額1000円という認定をしたものです。

脳機能障害など1級後遺障害の場合は、近親者付添人として1日8000円程度が認められますが、本件は、症状に照らして1000円という認定をしたものになります。

なお2級障害であっても、高次脳機能障害の場合には日額7000円を認めた判例もあります。

そのほか、右大腿骨切断等によって3級後遺障害を残すケースについて日限1000円・31年間を認めたもの(福岡地裁小倉支部平成25年5月31日判決)、10歳男子が遷延性意識障害、13級左眼視力障害、7級神経障害の併合3級を残した将来介護料について、「相応の介護がなければ生活していくことは困難」として日額5000円を認めたもの(平成12年2月9日大阪地裁判決)などもあります。

大阪地裁平成28年3月28日判決

研修医の事故1か月半後に弾発股が発生したとの主張について因果関係を否認して後遺障害の残存も認められないと否認した

解説30代の男性(研修医)が交差点を直進中、右側一時停止道路から進入してきた加害車両に出会い頭衝突され、後遺障害11級(自賠責被害等)を主張して7400万円強の損害を請求した事案です。

大阪地裁は、原告が主張する弾発股及び股関節唇損傷の発生と事故との因果関係を否認しました。

つまり、弾発股の発生機序として「腸脛靭帯が損傷した場合に、治癒の過程で肥厚化し、大転子と接触して弾発股が生じること、及び弾発股が受傷後3週間以降、徐々に進行することを認めるに足りない」としました。

そして、「少なくとも本件事故から10日以上の間、原告には目立った股関節痛が認められなかったことや、原告に弾発股の症状が現れたのは本件事故から約1か月半が経ってからであることに照らすと、本件事故の際に、原告の右半身側面が原告車の右ドアの内側に衝突したことが認められるとしても、弾発股の原因となるような損傷があったとは認められない」と判断しました。

大阪地裁は、後遺障害に関する損害は認めず、休業損害・通院慰謝料等として既払い金を除き、約120万円の損害を認定しています(過失1割)。

弾発股(だんぱつこ・snapping hip)とは、股関節の運動に伴って弾発現象(パキンと音が聞こえる等)を生じる複数の病態の総称をいいます(「今日の整形外科治療指針・第6版)。スポーツをする小児から青年にみられる股関節周辺の筋腱や靱帯による弾発と疼痛を来す疾患とされ、運動による繰り返される機械的負荷が発生原因と考えられています(医学大事典・第2版)。

本件のように、事故と受傷との因果関係が争われる場合、主張する障害の発生機序、事故から障害発生までの時間、障害の治療経過等が問題になります。

大阪地裁平成28年2月5日判決

第1事故で左膝痛12級を受ける28歳男子の第2事故による左膝可動域制限を10級認定し、加重部分を第2事故と因果関係のある後遺障害と認めた

解説タクシーとの衝突事故によって28歳男性が、左膝可動域制限を10級の後遺障害を負った事案です。

裁判所は、「原告は、第1事故によっても同じ左膝前十字靱帯を損傷しており、第2事故以前に、左膝の可動域がすでに12級7号に相当する程度に制限されていた」と認定した上、「第2事故と相当因果関係のある後遺障害としては、左膝可動域制限のうち、12級相当から10級相当に加重された部分というべきである」と判断しました。

その一方において、「第1事故による後遺障害の存在により第2事故後の治療が増大したとまでは認められず、積極損害について、第1事故による寄与度減額をするのは相当でない」と判断したものです。

当該交通事故によって被害を被る前から後遺障害が存在する場合、既存後遺障害部分を損害としては控除すべきかが争点になります。本判決は左膝という同一部分であることから既存後遺障害部分を控除、つまり既存の12級から10級に重くなった部分に限定して、本件事故と因果関係があると判断したものです。

また裁判所は、逸失利益については、原告が症状固定時に30歳と若年であることから、後遺障害による影響が長期に渡るとした上、67歳までの37年間の労働能力の喪失期間を認定し、10級の27%から、12級の14%を控除した13%の労働能力喪失率を認定したものです。

平成28年2月18日最高裁判所決定

損保会社従業員が同意なく診断書等を取得しプライバシー権を侵害したとする慰謝料請求につき、原審(福岡高裁)は、一括払同意の客観的裏付けがあるので、個人情報取扱いについての同意も得ているとして請求を棄却し、最高裁も上告を受理しなかった

解説横断歩道を横断中、タクシーに衝突された被害者が、同意なく病院から診断書等の個人情報を取得されたとして、損保会社に対してプライバシー侵害を理由として損害賠償請求した事案です。

事故から4日後、損保会社は被害者に電話をして、口頭で個人情報の取扱に関する同意と一括払いの同意を取り付けたことから(事実に争いあり)、同意書を送付したものの、返信はなされませんでした。

一方、被害者もその後、3か月に渡って、損保会社からの電話連絡に出ず、また自ら一括払いに同意しないと積極的に告げることもしませんでした。

そこで保険会社は、口頭で同意を得ていたとして、医療機関から診断書等を入手した上、医療機関に治療費を支払ったものです。

原審の福岡高裁は、一括払いの口頭の同意については、「一括払いチェックシート」にチェックが記入されているから、客観的な証拠によって裏付けられているとしました。

そして個人情報の取扱いに関する同意については客観的資料はないものの、一括払を行うためには自賠責保険の支払請求をする際に被害者の診断書等を提出する必要があって、被害者から予め個人情報取扱に関する同意を得ておく必要がある。そうすると、一括払のために必要な個人情報取扱の同意についても、一括払の説明・同意とともにいわばセットになって説明・同意しているものと推認されるとして、プライバシー侵害を認めずに請求を棄却していました。

これに対して、被害者が最高裁に上告しましたが、最高裁は上告を受理せずに確定しました。

なお本件は、診断書を送付する医療機関が自ら被害者の意思を確認していなかったため、被害者は医療機関に対しても損害賠償請求し(請求額2万円)、医療機関は請求を認諾して2万円を支払っています。

東京地裁 平成27年12月24日判決

中央線を越えた衝突は直前にくも膜下出血を発症して正常な運転ができない状態に陥っていたと認定し、被告車の運行によって生じたとはいえないとして自賠責保険金の請求を棄却した

解説女性A運転の直進乗用車が、右折待機中の対向被告乗用車に接触し、縁石等に衝突後、くも膜下出血でAが死亡した事案です。

Aの遺族が、被告及び損害保険会社に対して損害賠償を求めて訴訟提起しました。

これに対して、裁判所は、Aが事故直前にくも膜下出血を発症し、正常な運転ができない状態に陥っていたとして、自賠責保険金の請求を棄却したものです。

つまり、Aが正常な運転ができない状態に陥った原因としては、事故直前にくも膜下出血が生じたことによると考えるのが自然であり、車の運行によって死亡したものではないと判断したものです。原告代理人の医療相談に対する回答書が証拠提出されたようですが、「精神的ショックからくも膜下出血の原因となった可能性は否定できないが因果関係としてはかなり弱い」としていることから、積極的な証拠としては評価されませんでした。

Aの死亡の機序が争点となった珍しい事案です。

医療過誤訴訟でも、「機序(因果関係)」を確定させることが出発点になります。つまり確定された機序(因果関係)を前提に、過失(注意義務違反)があるか否かを詰めていくことになるわけです。

原告の主張の機序(てんかん発作を起こして一時的に意識を喪失し、衝突後に意識を回復して、事故のショックによって血圧が急上昇してくも膜下出血を起こした)は、元々、Aにてんかん発作や高血圧の既往歴があればともかく、医学的に立証することはなかなか難しい印象です。その意味で妥当な結論の判決と言えるでしょう。

大阪地裁 平成27年10月9日判決

81歳女子医師の労働内容は夫の監護として賃金センサス女子学歴計70歳以上を基礎収入と認定した

解説81歳の女子医師(病院副院長経験)Xが横断歩道を歩行中、車両に衝突され、121日入院後に死亡した事案です。

裁判所は「平成21年以降(注:事故は平成24年)は医師としての労働はなく給与収入はなく、事故当時のXの労働内容は、夫の監護である」とした上、センサス女子学歴計70歳以上平均を基礎収入として認定しました。

Xは病院の副院長経験者であり、家庭裁判所からの依頼で鑑定を行ったり、複数の病院の非常勤として勤務し、平成3年から8年にかけては2000万円前後の給与収入があったものの、平成13年から平成18年前後には400万円から700万円、平成19年は157万、平成20年は8万円、平成21年以降は給与収入は0という状況だったケースです。

なお慰謝料については、Xの死亡慰謝料2200万円、夫・子2名の各固有の慰謝料として100万円、合計2500万円の慰謝料を認めています。

同種裁判例としては、息子経営の会社の監査役の78歳女子について、監査役は名目的にすぎないとして否認され、家事労働分としてセンサス65歳以上の70%と認定した東京地裁判決などがあります。

高齢者の収入については資格・肩書きなどで形式的に算定するのではなく、実態に着目して実質的に算定し損害の公平な分担を図るのが裁判例の傾向と言えるでしょう。

東京地裁 平成27年11月25日判決

歯科開業医の休業損害を全日休業の7日間100%、短時間診療の2日間50%、1時間短縮営業の50日間15%で認めた

解説男子開業医のXが乗用車を運転中、追突され、頸部捻挫、右肩関節捻挫、腰部捻挫等の傷害を負い、68日通院したケースです。裁判所は、歯科開業医の休業損害として、全日休業の7日間100%、短時間診療の2日間50%、1時間短縮営業の50日間を15%休業として認定するなど、他の損害も含めて345万円の支払いを認容したものです。個人営業の休業損害は認定の難しい分野です。特に「1人営業」の経営者などの場合、極めて不透明な請求をすることも多く、紛争になりがちです。この点、開業医という比較的経営実態が明らかなケースについて、被害者の実際の経営状況に応じて休業損害を認定した裁判例であり、参考になるでしょう。

同種裁判例として、頸髄損傷等から3級3号後遺障害を残す52歳男子歯科開業医の休業損害について、事故前所得に固定経費を加算した日額8万強を基礎収入として症状固定まで339日の休業損害を認めた東京地裁判決や、右肩関節拘縮による可動域制限から10級10号後遺障害を残す56歳男子歯科開業医の休業損害につき、歯科医院の営業は継続していて、その業務内容から事故前58か月間の平均収入の60%を基礎収入に、症状固定までの休業損害を認めた大阪地裁判決などがあります。

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