大阪地裁 令和3年10月7日判決
原告主張の12級左肩関節痛及び左肩関節機能障害は他覚的所見に乏しいと否認し、14級頸部痛等は永続性を有するとは認められないと後遺障害の残存を否認した
解説
【事案の概要】
原告(男子)が運転する原動機付自転車が、白線(外側線)の左側を走行していたところ、被告自動二輪車が路外に出るため減速しながら左に寄りつつ、白線(外側線)の左側を走行し始めて衝突した事故です。
原告は、頸部挫傷、左肩挫傷等の傷害を負い、約半年通院して、14級9号頸部痛、12級13号左肩関節痛、12級6号左肩関節機能障害の後遺したとして、約1400万円の支払いを求めて訴えを提起した事案です。
【裁判所の判断】
大阪地裁は、後遺障害の残存を否認して、治療費・慰謝料等として既払金を除き、約19万円の支払い命じました(自保ジャーナル2113号115頁、確定)。
大阪地裁は、後遺障害について以下の通り判断しました。
まず、「頸部痛、左肩関節痛、左肩機能障害のいずれについても、画像所見、神経学的所見といった他覚的所見に乏しいものであることに照らすと、自賠法施行令別表第二第12級13号、同12級6号の後遺障害を認めることはできない」としました。
そして「診療録の経過記録欄を見ても、ほぼ一貫して記載があるのは左肩の症状のみであり、左肩の症状については、関節周囲炎の要素が入っているものである。現在の症状として原告の供述するところでも、何もしていなければ痛くはないというものであって、ほとんど常時疼痛を生じているものとはいえないものである。これらのことをふまえると、その症状が永続性を有するものと認めることはできないものと言わざるを得ず、したがって、頸部痛についても、左肩関節痛についても、自賠法14級9号の後遺障害を認めることはできない」と結論づけたものです。
なお事故態様は、白線左側を直進していた原動機付自転車と路外のコンビニ駐車場に出るために白線右側に寄ってきた自動二輪車の接触事故ですが、過失割合として原告30対被告70と判断しています。
【ポイント】
後遺障害の主張については、診療録の診療経過から、他覚的所見がないこと、常時疼痛を訴えていないこと等から、永続性を有する後遺障害とは認められないと判断したものです。
後遺障害の主張立証においては、診療録における診療経過がまずは基本的な資料となります。
また事故態様については、被告は、「路外のコンビニ駐車場に入ろうとしたところ車両あったので停止していた」と主張し、過失割合についても、「原告は通行区分に違反して路側帯を走行し、徐行し停止するなどの安全運転をしてないかった」として原告過失90%以上と主張しました。
裁判所は、両車両ともに白線の左側に入って生じた事故であり、「原告車両が路側帯内を走行したことをもって、一方的に原告に不利に過失割合を修正するべきものと認めることはできない」と判断しました。
進路変更車両同士の過失を念頭に30対70と判断しています(車両同士は判タ153図で30対70、四輪車対バイクは225図で20対80)。