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交通事故 裁判例・解説

交通事故 裁判例・解説- 因果関係 -

東京高裁 令和5年4月19日判決

横断歩道上をキックボードに乗って歩行中、乗用車が左折進入してきて咄嵯にハンドルから離した右手の甲が接触負傷したとする供述は信用できるとして、本件事故による原告の受傷を認定した

解説

【事案の概要】

原告(小学4年生女子)は、信号のある交差点の横断歩道上をキックボードに乗って横断歩行中、右方から左折してきた被告車両に右手を接触され、右示指MP関節尺側側副靭帯損傷の傷害を負い、3日入院、47日間通院したとして、約230万円を求めて訴えを提起しました。

1審裁判所である東京地裁は、原告主張の本件事故はその発生に係る客観性の高い証拠は乏しく、事故態様に係る原告の供述も信用性が高いものとはいえないとして、本件事故の発生を否認し、原告の請求を棄却しました。

これに対して、2審裁判所である東京高裁は、1審判決を変更し、本件事故による原告の受傷を認定し、被告車両の一方的過失を認めました(確定。自保ジャーナル2159号75頁)。

【裁判所の判断】

本件事故による原告の受傷につき、東京高裁は以下のように判断しました。
「原告は、本件当日、警察官に被害を申告した際に、その受傷部位として右手甲の痛みを訴えたことから、病院に救急搬送され、明確な異常所見は認められなかったものの、右手背打撲傷と診断されたところ、その翌日である令和元年7月9日以降も、上記疼痛が改善しなかったため、継続的に複数の医療機関を受診していたものであり、同月13日の受診の際には腫脹も認められたのである」。

「同月11日実施の本件実況見分の際に撮影された写真によっても、原告の右手甲の人差し指と中指の付け根部分に膨れが認められるほか、同部分にS状の瘢痕が認められるところ、これらは原告が痛みを訴えていた部位とー致するものである」。

「原告が被告車両と接触したとされる直後から継続的に訴えていた右手甲の痛みは、他覚的にも裏付けられているということができ、上記瘢痕が原告の主張するように被告車両の前面のエンブレムによって付けられたものかどうかはともかく、原告が被告車両と接触したとされる際に右手甲を負傷した事実は否定し難いところである」。

他方、「原告はその直後に転倒することもなく原告の母親を追いかけており、その間に受傷した可能性はなく、他に、本件事故以外の原因により上記傷害が発生したことをうかがわせる証拠も見当たらない」とし、「仮に本件事故が発生していなかったとすると、上記のとおり認められるその後の経過を合理的に説明することはできないというべきである」として、「被告車両が横断歩道上に進入してきた際に、とっさにキックボードのハンドルから離した右手の甲が被告車両の前部に接触したことにより負傷したという原告の供述は、信用することができるのであり、原告が本件事故により負傷した事実は優に認めることができる」として、本件事故による原告の受傷を認定しました。

また、過失割合については、被告車両の一方的過失と認定して、原告過失の過失相殺を認めませんでした。
「被告は、被告車両を運転し、青色信号に従って本件交差点を左折するに当たり、横断歩道の直前で停止することのできる速度により、横断歩道上の安全を確認しながら進行し、横断歩道上に歩行者等がいる場合には、一時停止をしてその通行を妨げないよう注意すべき義務があるところ、横断歩道上の安全を十分確認していなかったため、横断歩行中の原告の存在に気付かないまま、一時停止をすることなく横断歩道上に進入した結果、被告車両の前部を原告の右手に接触させたものであるから、被告には上記義務を怠る過失があったことは明らかである」としました。

【ポイント】

原告が「右手第2中手骨尺側側副靭帯損傷」の傷害を負っており、治療を受けていたことに争いはありません。
原告の主張する事故態様に矛盾がないか、供述に信用性があるかという点から、一審と二審の判断が分かれた裁判例になります。

なお電動キックボードについては道交法改正によって規制の対象になりましたが、本件キックボードは推進装置はついておらず、両手でハンドルを握り、片足を板に乗せ、もう片足で地面を蹴って進むタイプのものでした。

東京地裁 平成27年12月24日判決

中央線を越えた衝突は直前にくも膜下出血を発症して正常な運転ができない状態に陥っていたと認定し、被告車の運行によって生じたとはいえないとして自賠責保険金の請求を棄却した

解説女性A運転の直進乗用車が、右折待機中の対向被告乗用車に接触し、縁石等に衝突後、くも膜下出血でAが死亡した事案です。

Aの遺族が、被告及び損害保険会社に対して損害賠償を求めて訴訟提起しました。

これに対して、裁判所は、Aが事故直前にくも膜下出血を発症し、正常な運転ができない状態に陥っていたとして、自賠責保険金の請求を棄却したものです。

つまり、Aが正常な運転ができない状態に陥った原因としては、事故直前にくも膜下出血が生じたことによると考えるのが自然であり、車の運行によって死亡したものではないと判断したものです。原告代理人の医療相談に対する回答書が証拠提出されたようですが、「精神的ショックからくも膜下出血の原因となった可能性は否定できないが因果関係としてはかなり弱い」としていることから、積極的な証拠としては評価されませんでした。

Aの死亡の機序が争点となった珍しい事案です。

医療過誤訴訟でも、「機序(因果関係)」を確定させることが出発点になります。つまり確定された機序(因果関係)を前提に、過失(注意義務違反)があるか否かを詰めていくことになるわけです。

原告の主張の機序(てんかん発作を起こして一時的に意識を喪失し、衝突後に意識を回復して、事故のショックによって血圧が急上昇してくも膜下出血を起こした)は、元々、Aにてんかん発作や高血圧の既往歴があればともかく、医学的に立証することはなかなか難しい印象です。その意味で妥当な結論の判決と言えるでしょう。

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