仙台地裁平成28年12月26日判決
無免許・飲酒・仮眠状態の車に衝突された死亡慰謝料3000万円、夫200万円の固有の慰謝料を認めた
解説60歳の女性が、交差点横断歩道を横断中、無免許運転をし、しかも飲酒をして仮眠状態だった車両が信号無視で車両に衝突した後、女性に衝突して死亡させたという痛ましい事件です。
裁判所は被害者の女性が夫の世話をしながら自営業で一家の支柱として生計を支えていたことを認定した上で、被告が対面信号が赤色を表示しているにもかかわらず高速度で交差点内に進入して事故を惹起した上、事故後に何らの救護措置もとらずに現場を逃走していることから、本件事故の悪質性・被告の過失の内容・程度・事故後の対応を考慮して、死亡慰謝料3000万円、夫固有の慰謝料として200万円を認定しました。
いわゆる赤本では死亡慰謝料は、一家の支柱2800万円、母・配偶者2500万円、その他2000~2500万円となっています。
ただし事案によってより高額の死亡慰謝料も認定されています。
例えば、大手監査法人勤務職員(男性34歳)が死亡した事案について、死亡慰謝料3000万円、妻200万円、父母各100万円の合計3400万円を認定した東京地裁平成20年8月26日判決があります。
また、生後11か月の長男とともに死亡した男性21歳について、死亡慰謝料2800万円、妻400万円、両親各100万円の合計3400万円を認定した秋田地裁平成22年7月16日判決があります。
さらに、飲酒の影響によって35~45キロの速度超過でセンターラインを越えて反対車線の車両に衝突して、母と同居の50歳男性が死亡した事案について、死亡慰謝料3200万円、母300万円の合計3500万円を認定した東京地裁平成28年4月27日判決もあります。
加害者側の悪質性や事故の悲惨さ等からいわゆる赤本基準を超えた死亡慰謝料が認定される傾向にあります。
この点は医療過誤事案も同様であり、基本的には赤本基準をベースにしつつ、過失の程度によって加算して認定される傾向があります。