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交通事故 裁判例・解説

交通事故 裁判例・解説- 過失相殺 -

大阪地裁 平成30年10月30日判決

6年前の事故で椎間板ヘルニアに罹患する被害者について2割の素因減額した

解説追突事故で14級9号腰椎椎間板ヘルニアを既往を有する被害者が、6年後に別の追突被害にあった事件です。

被害者は今回の事故後、約1年通院治療を受けて症状固定し、自賠責で14級後遺障害認定を受けて提訴しました。

裁判所は、「(6年前に)腰部に関して同じ後遺障害の認定を受けていること、医師が事故前から存在した症状が事故によって悪化したものと述べていること、症状固定日が事故から約1年後であることに照らすと、本件事故前から原告に存在した腰部の疾患が、本件事故による治療期間を通常より長期化させたものと認められ、素因減額を行うことが相当である。そして、その割合は20%が相当である」として、前回事故による素因減額として2割を適用しました。

なお今回の事故は渋滞停止中に追突されたものであり、事故態様に照らして治療期間が長期化したことが一つの事情として判断に影響したようです。

治療期間の長期化による素因減額事例としては、神戸地裁平成30年3月8日判決が、腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症の既往を有する被害者について3割の素因減額を適用しています。また平成27年4月10日さいたま地裁判決が、事故前から肩から腰にかけての疼痛があったことから、治療期間が8か月とやや長期にわたったのは既往症等が影響したものとして2割の素因減額を適用しています。

横浜地裁 平成30年5月18日判決

前回追突事故による腰椎椎間板ヘルニア既往の被害者について3割の素因減額を認めた

解説交通事故による損害賠償請求において、加害者が被害者側の事情を理由として損害賠償金の減額を主張することがあります。いわゆる過失に当たらない事情を理由とする減額は、素因減額と称されます。

素因減額にはいわゆる「身体的素因」と「心因的素因」がありますが、本件判決は身体的素因に関する一事例となります。

本件被害者は4年前の交通事故で腰椎椎間板ヘルニアを生じていたところ、本件追突事故によってヘルニア症状が発生したとして損害賠償請求したものです。

裁判所は、原告の左下肢の症状は、本件事故前には消失していたものが、本件事故後に再発したといえる」とした上、「左下肢の症状は、原告に認められたL3/4腰椎椎間板のヘルニアに起因する神経症状として合理的に理解しうることからすれば、本件事故後における左下肢症状の再発は、本件事故にいおって、原告にあった腰椎椎間板ヘルニアが悪化したことを示す」としました。

そして裁判所は、素因減額について、「特に腰痛の症状は、本件事故の1か月前まで通院治療を受ける状態であったところ、本件事故による衝撃が加わることによって、悪化再発した」、「同人の既往症の存在が、本件事後の同人の症状及び治療期間の長期化に相当程度の寄与をしていることは明らかといえる」として、3割の素因減額を認定しました。

名古屋地裁 平成28年12月21日判決

被害者の親族が被害者のエホバの証人としての信条に基づき輸血を拒否したことについて、輸血拒否がなく通常どおり手術が行われた場合には被害者が死亡しなかった可能性があることから、損害の公平な分担の観点から被害者に30%の過失を認めた

解説信教の自由は憲法上、最大限に尊重されなければならない基本的人権の一つです。一方で信教の自由に基づいた選択の結果、難しい法的な論点を導き出してしまうこともあります。

エホバの証人による輸血拒否については最高裁判決も含め、多数の裁判例が出ています。本判決は交通事故における賠償額を認定する際、その選択が過失相殺に影響したものです。

名古屋地裁は、「患者が輸血を拒否せず、通常どおり手術が行われた場合には、患者は急性硬膜外血腫によって死亡しなかった可能性があり、輸血拒否の事実は、患者の死亡について因果的寄与を及ぼしているから、損害の公平な分担の観点から、民法722条2項又はその類推適用により、過失相殺がなされるべきところ、患者の受傷内容・程度・治療経過・各医師の見解等を総合的に考慮して、患者に30%の過失相殺をするのが相当である」と判断したものです。

患者側は「患者はその信条に基づき輸血を拒否したもので、この判断は憲法上保障された信教の自由として、最大限保障されるべきである」と主張したのに対して、裁判所は、「信教の自由は最大限尊重すべきではあるけれども、その自由に基づく選択の帰結として生じた不利益の全てを、民事訴訟の相手方である被告に負担させることは、損害の公平な分担の見地からして相当ではないといわなければならない」と判示しています。

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