薬害肝炎原弁と田村憲久厚労大臣との大臣協議を開催、新型コロナにもみられる感染症への差別偏見解消への取組み

2021年度田村憲久厚労大臣との大臣協議を開催

 2021年7月29日、2021年度の薬害肝炎全国原告団弁護団と田村憲久厚生労働大臣との間の大臣協議が厚生労働省で開催されました。
 詳細は薬害肝炎原告団サイトにて報告予定ですが速報しておきましょう。

 大臣協議は毎年7月~8月にて日程調整されます。この協議は平成19年度に始まり今回で15年度目(過去の大臣協議のレポートは末尾の「関連期日」も参照してください)。

 毎年、「被害救済」、「薬害の再発防止」、「恒久対策(C型肝炎治療体制の整備等)」の3分野の積残しの課題について、薬害肝炎原弁が大臣に対して回答を求め、課題について一歩一歩解決を図っていくものです。
 薬害肝炎全国弁護団が5地裁判決をてこに全面解決を求め、2008年(平成20年)1月15日、国との基本合意書を締結しました。
 この基本合意書において、「国(厚生労働省)は、原告・弁護団と継続的に協議する場を設定する」と約束させていたものになります。

田村厚労大臣との大臣協議

 ただ今年は東京オリンピック下での開催となり、新型コロナウイルスによる感染者数が全国的に急拡大していることから、席上参加者は双方5名程度に調整した上、各地から上京しての傍聴は中止しウェブ会議(ズーム)による参加としました。

 大臣協議におけるオンライン活用は昨年に続いて2度目でしたので全国からスムーズに参加できました(ただしWi-Fiの速度・パソコンの性能の問題かと思いますが、質疑応答の際に音声が聞き取りにくい場面があったため来年に向けて課題も残しました)。

 まず薬害肝炎全国原告団の浅倉美津子代表の体調が思わしくないことから、東京原告団代表(全国原告団副代表)の及川綾子さんが代わりに冒頭挨拶を行い、大臣協議をスタートしました。

 田村大臣とは2013年・14年に引き続きまして、3度目の大臣協議になります。一番に私たち原告の活動や思いを存じていただいている大臣だと思っております・・

 ・・改めて田村大臣に申し上げます。どうか国の行政の責任者としてリーダーシップを発揮してください。そして、問題解決に向けて前進するよう、決断力を示してください。これが私たち原告団からの心からの願いです。本日の協議が実りあるものになりますよう、田村大臣の姿勢と回答内容に期待しております。

個別救済~廃院のカルテ調査は

 個別救済のパートでは、感染被害実態調査の問題やフィブリノゲン製剤・クリスマシン以外の非特定製剤(薬害肝炎救済法で定められていないが同様に肝炎感染の危険性ある血液製剤)の問題を取り上げました。

 まず三重県の名古屋原告163番さんが「廃止医療機関の問題」について以下のように発言しました。

私は三重県の診療所で昭和61年に長男を出産したときにフィブリノゲン-ミドリを投与されました。その後、平成8年にC型肝炎にかかっていることがわかりました・・・

 ・・私はどうしてC型肝炎にかかってしまったのだろうと疑問に思い、長男を出産した診療所に問い合わせました。平成22年のことでしたが、20年以上も前のカルテでもすべて保存されていたので、私にフィブリノゲン-ミドリが投与されたことがわかりました。このカルテに基づいて訴訟を起こし、私自身は国と和解することができました。

 この診療所は、私のような問い合わせがあればカルテの中身を確認したそうです。でも、人手などが足りないようで、カルテすべてを調査して被害者を割り出すという作業はできていないということでした。その後、カルテの調査が行われないまま、この診療所は廃院となってしまったと聞いています。

 ・・対応が1年おくれるたびに、全国で多くの診療所が廃院となり、せっかく保存されていたカルテが失われていきます。そうなる前に、厚生労働省の職員が先頭に立って、こうした医療機関のカルテ調査を速やかに完了できるよう、大臣から職員に強く指示を出すことを、約束してもらえないでしょうか。

 これに対して、田村厚労大臣からは、「廃止されている医療機関についてはどこに連絡をつけていくのかという問題があるので、どのような方法があるか検討したい」という発言がありました。

 薬害肝炎弁護団の経験では、たまたま廃院した医療機関の診療録を保健所が保管していたケース、廃院した医師の実家に保存していたケース、死亡した医師の家族が倉庫に保管していたケースなどを経験しています。
 ただし患者家族や弁護団が廃院ケース全てについて調査することは不可能。

 いずれにしろ国からの積極的な働きかけや調査が不可欠といえるでしょう。

再発防止~薬害研究資料館の実現に向けた課題

 再発防止のテーマでは、「乾燥人フィブリノゲン製剤の後天性疾患への適応拡大」と「薬害研究資料館」を取り上げました。

 ここでは薬害研究資料館に関する協議内容をご紹介しましょう。

 ZOOMで参加した大阪原告団の武田さんから、「大臣、資料の収集という問題は悠長に議論を重ねることではありません。一度、資料が失われれば、後世に伝えることができないからです。資料収集を急ぐべきという点について、大臣のご意見をお聞かせください」と迫りました。

 これに対して、田村厚労大臣からは、基本的な考え方はルール作りも早くやっていきたい、そのルールの中で例えば、資料の所有権の帰属をどうするかという問題などについて、丁寧に各団体の話を聞きながら進めていきたいという回答がありました。

 さらに弁護団から、「薬害資料館の設立にあたり、人員構成・設置場所・予算の確保・資料の帰属や運営主体などの課題については、厚生労働省に要請していたけれども、こういった論点の整理がなかなか進んでいないという点を憂慮している」と指摘しました。

 これに対しては、厚労省から、「大臣協議の機会やわれわれ事務方との話し合いの中で要望・指摘等を受け、少しずつで申し訳ないけれども応える形で善処している」、「厚労省の支援という形では、研究班を支援したり連携して、薬害に関する資料の収集・整理・保管・展示活用について、厚労省としても検討、あるいは作業を進めていきたいと考えている」という回答がありました。

 田村厚労大臣の「過去の薬害に関する資料の活用をしっかりやって、薬害というものに対して国民にさらに意識を持っていただくということは大変重要なことだというふうに考えている」という言葉の通り、薬害研究資料館の実現に向けて、今後も粘り強く協議を継続する予定です。

恒久対策~感染症患者に対する偏見・差別

 恒久対策のテーマでは、「ウイルス性肝炎を含む感染症患者に対する偏見・差別」を取り上げました。

 東京原告団の及川さんが以下のように問題点を指摘しました。

 私は国の肝炎対策推進協議会の委員を務めさせていただいております。また、厚労省の偏見・差別の八橋研究班の一員でもあり、患者としての意見も述べさせていただきたいと思います。昨年から新型コロナ感染症に対する差別・偏見のニュースを何度も耳にしておりまして、私たち肝炎患者は自分のことのように苦しく、悲しく、切ない思いでニュースを見ております。

 私たちは3年前、原告団事務所を借りようとしたときに、肝炎患者というだけで内見を断られました。中を見ることさえ受け入れてもらえなかったという事実があります。また、契約の際、同じビルに入居していた医院から、肝炎患者の事務所が入ると風評被害で患者が来なくなるから入居させないでほしいという、そういうことも言われました。信じられない言葉です。

 厚生労働省の方々が正しい知識の普及・啓発を通じて、偏見・差別の解消に向けて取り組んでくださっていることは存じ上げています。ですが、それだけでは足りないと私たちは思っているわけです。私たち肝炎患者は、自分が感染症患者の立場だったらと想像しながら接してほしいと常々、願っております。

 大臣、私たちはウイルス性肝炎を含む感染症による偏見・差別を解消するために、人権教育の場において、正しい知識の普及だけでなく、国民全体に家族や患者の人権を尊重する心を育む教育が必要だと考えています。大臣、この点についてのご認識を伺いたいのですが、いかがでしょうか。

 これに対して、田村厚労大臣からは、「今なお偏見・差別があるということは大変憂慮している。感染症法の前文にやはり偏見・差別というものに対しての思いというものが書かれているが、患者人権をいかに尊重していくか、これは大変重要だと思う」との発言がありました。

 その上で、田村大臣は、「地元三重県でもコロナの感染が分かった家庭にに貼り紙をされたり石を投げられたということも聞いている、ある高校で新型コロナクラスターが起こったところ、その学校の子どもたちが店に入ろうとしたら、もう入るなと店の店主から言われたという事例も聞いている」と新型コロナにおける差別事例に触れた上、「肝炎患者の人権についても、しっかりと正しい知識をもって啓発していく必要がある」と指摘しました。

 そして厚労省からは、狭い意味での人権教育は文部科学省の管轄であるが、厚労省や法務省とも連携していきたい、薬害肝炎原弁から申し入れのあった差別偏見解消に絞った作業部会についても前向きに検討するという回答がありました。

大臣会議後に原弁で記者会見

 大臣協議終了後には、薬害肝炎全国原告団弁護団は記者会見を行い、NHKでは以下のように報道されています。

薬害肝炎原弁の記者会見(NHKニュースより引用)

薬害肝炎 可能性ある約9700人と連絡取れず 請求期限まで1年半

かつてC型肝炎ウイルスを含む血液製剤を投与された可能性がある人のうち、国がおよそ9700人と今も連絡を取れていないことが分かりました。給付金の請求期限まであと1年半に迫っていることから、厚生労働省は心当たりがある人は検査を受けてほしいと呼びかけています。
かつて出産や手術などで血液製剤を投与されてC型肝炎ウイルスの感染が広がった問題では、患者や遺族が裁判を起こせば国が法律に基づいて和解し、1人当たり最大で4000万円の給付金を支給しています。

厚生労働省は病院でカルテなどを調査し、この1年間でおよそ1500人に、ウイルスを含んだ血液製剤を投与された可能性があることを伝えましたが、今月21日の時点で9696人と連絡がとれていないということです。
給付金を請求できる期限は2023年の1月16日で、厚生労働省は、平成6年より前に手術で輸血を受けるような大量の出血をした人は、検査を受けてほしいと呼びかけています。

C型肝炎ウイルスに感染すると、肝硬変や肝臓がんに進行するおそれがあり、弁護団の高井章光弁護士は都内で会見し「高額な治療費が払えず治療を断念する人もいる。多くの人が救済が受けられるよう国は調査を進めてほしい」と訴えました(2021年7月29日付NHKニュース

関連記事(過去の厚生労働大臣協議のレポート)

 ・薬害肝炎全国原弁と根本匠厚生労働大臣との大臣協議2019、劇症肝炎の被害救済を求めて

 ・薬害肝炎全国原弁と加藤勝信厚生労働大臣との大臣協議2018、薬害監視の第三者組織実現に向けて

 ・薬害肝炎原弁と厚労大臣との議事確認書2017年度版が完成

 ・薬害肝炎全国原告団弁護団が厚生労働大臣と大臣協議2017、薬害資料館の設立へ

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 ・薬害肝炎原告団弁護団が田村厚労大臣と協議2014、課題実現のためのロードマップ作成へ

 ・薬害肝炎大臣協議2013

関連情報

 ・薬害肝炎検証・検討委員会「最終提言」

 ・薬害肝炎基本合意書

 ・出産・手術の大量出血の際にC型肝炎ウイルスに感染した方へのお知らせ(厚生労働省)

 ・C型肝炎訴訟について(法務省)