薬害肝炎大臣協議2013

2013年8月2日、薬害肝炎全国原告団弁護団と厚生労働大臣との協議会が、厚生労働省内の省議室にて開催されました。

この「厚労大臣との協議会」は、薬害肝炎問題が全面解決した際に締結した「基本合意書」に基づき、毎年開催されるもの。積み残しの課題や新しい問題について協議し、厚生労働大臣の見解を求める貴重な機会になります。

厚生労働省からは、田村憲久厚労大臣にくわえ、肝炎対策推進室長、疾病対策課長、健康対策課長、障害保険福祉部企画課長、障害保険福祉部長、医療食品局長、総務課長、安全対策課長、血液対策課長らが出席しました。

全国原告団代表の山口美智子さんの挨拶に続いて、田村厚労大臣から、「拠点病院における相談支援など も体制整備してきた。肝炎対策基本指針に基づいて総合的な対策に取り組んでいきたい。本日は有意義な会議にしたい と思っている」という挨拶が行われた上、協議が開催しました。

具体的には、薬害肝炎全国原告団弁護団が「被害救済」「再発防止」「恒久対策」の3分野がテーマについて、田村憲久厚労大臣に対して、個別具体的に回答を求めていきます。

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◆ 恒久対策

最初のテーマである恒久対策については、身体障害者手帳の認定基準の緩和を求めます。

まず冒頭では、障害認定を受けられない肝硬変の東京原告141番が、意見陳述を行いました。この原告さんは息切れのため、最後まで文章を読めないことから、東京原告団代表浅倉さんが代読しました。

「私は40年前にフィブリノゲンの投与を受けて、肝炎に感染しました」、「C型肝炎と告げられたのは 、平成3年頃のことです。平成10年頃には肝硬変に進行してしまい、平成22年には肝がんと判明しまし た」

「平成23年の秋に肝がんが再発しました。担当医から勧められ、平成24年の2月に一部を摘出する 手術を受けました。術後呼吸が止まり、生死の境をさまよいましたが、なんとか生還することができました。入院の期間は80日を数えました」「肝硬変はチャイルドピュー分類で10点でした。しかしこの申請も通りませんでした。市役所の窓口で理由を尋ねたところ、月数が足りないとのことでした」

「今は症状がやや安定してチェイルドピュー分類の8点と言われています。この点数なら、やはり障害者認定は通らないでしょう」

「もし障害者認定を受けられれば、私も私の家族も少し楽になることでしょうし、ちょっとだ け余裕を持てるかもしれません」「大臣、肝硬変・肝がん患者の生活実態をふまえて、必要な支援策をお考 えいただけないでしょうか、一人の患者の切なる希望です。大臣なにとぞよろしくお願いします」と切実に訴えました。

田村厚生労働大臣は、見直しについて、「現在、八橋研究会において研究がなされている。今年度詳細な報告が出てくるのでそれをふまえてどのような形がいいのか検討させて頂きたい」という答弁に終始しました。

これに対して、原告の武田さんが、「さきほど141番さんがテープで意見陳述しました。もう このような外に出れない状況なのに、申請しても何度も通らなかった。当時の厚労大臣は現場の声・患者の 声を反映させたいと約束している。141番さんは半年後、亡くなられてしまった。このような状態をどのようにお考えでしょうか。ぜひ緩和して実行してほしい。私達にはもう時間がありません」と強く食い下がりました。

田村厚労大臣は、「いよいよ最終報告が今年度出てくる。障害者手帳というのは大変難しい問題がある。新しい基準を見直す となると、結構大きな基準見直しになってくる。そういう意味で最終報告をしっかりまったうえで進めていきたい。もちろん現状である程度のものが出ているので準備は進めたいが、最終報告書が出ないと動けない ことをご理解ください」とした上、「出来得る限りの中で早急な対応をしたいと思います」と答弁しました。

八橋研究班の中間報告によると、肝硬変患者1000名のうち、手帳を取得できているのはわずか16名にとどまっ ています。しかも、手帳が交付されてから2年以内に、例えば2級患者の半数が死亡しているような事態は、異常というほかありません。

厚生労働省は、従前の約束どおり、行政研究である八橋班の調査結果を踏まえ、適正な方向へ見直しを行うことはもちろん、最終報告を待たずに見直し作業を進めていくべきでしょう。

◆ 被害救済

2つめのテーマである「被害救済」については、薬害肝炎救済法の対象外になっている非特定製剤の問題を取りあげます。

弁護団から、「衆参両院から薬害肝炎救済法が制定された際、付帯決議がなされている。すなわち、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液第Ⅸ因子製剤以外の血液製剤の投与によるウイルス性 肝炎の症例報告等を調査し、その結果を踏まえて受診勧奨等必要な措置について早急に検討すること、とされている」

「それを前提にして、平成23年度の厚労大臣協議においても、当時の厚労大臣が、「立法府が何等の措置もとらない場合には、行政側でも受診勧奨を含め積極的に必要な措置を検討していく」という回答がなされているが、基本的な考え方には変わりはないか?」と基本姿勢を確認します。

田村大臣は「行政の継続性という意味で継続しております」と回答しました。

そこで九州原告団代表の出田妙子さんが次のように述べました。

「私達は、薬害肝炎救済法でようやく救済されました。ですがそれ以外の製剤による被害については救済されていないのです。感染の事実すら知らない人もいるのではないでしょうか。前政権の細川大臣にも伝えましたが、この2年間で全く動きがないようです。汚染された血液製剤による被害者に対しては、国は等しく救済すべきではないでしょうか」

また、全国弁護団副代表の山西弁護士も言葉を継いでいきます。

「薬害肝炎救済法では、フィブリノゲン、クリスマシンにくわえて、「旧ミドリ十字社製コーナイン」も 対象になっている。このコーナインは、アメリカのカッター社が製造した薬を、ミドリ十字が輸入していたものである。その後、旧ミドリ十字は、同じ製法でクリスマシンという薬を製造することになったため、コーナインを日本で販売しなくなった。その1年後、バイエル薬品がこのコーナインを製造販売することになった。このように全く同じ製剤であるにもかかわらず、「バイエル薬品製のコーナイン」は非特定製剤のままで、薬害肝炎救済法の対象外になっているわけである」

これに対して、血液対策課長は、「因果関係が明確にできるかということで、研究班で調査をさせて頂いている。現時点では、因果関係が明確にできなかったと聞いている」と答弁しました。

さらに「因果関係がはっきりしたものについては、救済法を改正して救済の対象にするということで、大臣は異論はないと聞いてよろしいか」という鈴木全国弁護団代表の質問に対して、大臣は、「議員立法を改正しないのでれば、それは厚労省が行政としてでも改正の必要があるという立場は、引き継いでいる」、「関連性が認められれば当然その対象になってくるものと認識している」と回答しました。

旧ミドリ十字社製コーナインとバイエル薬品のコーナインは、製造方法含めて全く同じものです。つまり全く同じ製剤による感染被害にもかかわらず救済されていない状況は、やはり法の下の平等に反すると言わざるを得ません。厚労省調査でも2000人近い感染者がいると推計されているわけですから、速やかに救済手 当てがなされるべきでしょう。

◆ 再発防止

最後の薬害再発防止の分野においては、頓挫した薬害監視の第三者組織について、大臣の回答を求めていきます。

ちなみに、薬害研究資料館の設立について、薬害肝炎全国原告団弁護団は、「最終提言に基づき、薬害研究資 料館の施設開設を行うことを約束し、今後の薬害研究資料館の実現手順を示されたい」という求めに対しては、事前に「最終提言を受けて薬害教育検討会の中で薬害に関する資料収集・公開等の仕組みについて議論頂いている。薬害関係資料等の調査経費1100万円、薬害関係資料等の調査・管理等に関する手法500万円の予算等を活用して、まずはどこにどんな資料がどの程度あるのかを把握していく予定」という回答がなされてました。

そこでこの日の大臣協議においては、懸案の第三者機関の設置について絞って協議したものです。

まず九州原告代表の小林邦丘さんが以下の通り意見を述べました。

「私達薬害肝炎被害者は、訴訟当初から薬害の再発防止を宣言してきました」

「検証会議の最終提言では、 第三者監視評価機関の設立についても記載があり、すぐにでも設置にむけて動き出すのかと思っていました が、最終提言の内容とはほど遠いものでありました。厚生労働省の態度は、自ら薬害を起こした責任を本当に反省しているのか、疑いたくなりました」

「田村大臣にはもう一度内容をしっかりと精査して頂きしっかりと中身のある第三者機関の設置を求めます」

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田村大臣は、「大臣就任した時、原告弁護団の皆さんからどうしても閣法でという話を聞いて、何とか閣法で提出したいという考えになり、閣法で出す努力をしてきました。閣議決定については一定の方向で乗り越えられるところまできていた。法律を作る ルールによって書き方が変わってくる。内容については閣法の限界もある、場合によっては議員修正も使い ながらしてくださいと伝えていた。あえて大臣という立場にありながら、1議員としての発言をしていた。ですが、最終的には閣法案が皆様の気持ちに届かなかった」と答弁しました。

弁護団からは、「みずから発議できること、そして独自の事務局を持つことの2点は必ず法律に明記に記載して頂く必要が ある。誰が大臣になっても、どの政権になっても、担保できるのは法律しかない。国民が薬事行政には不信感がある。国民の薬事行政に対する不信感を払しょくするためには、行政監視の 柱を法律に書きますというのが分かりやすいと思う」と迫りました。

大臣は、「薬害を防ぐ組織は厚労省内に作ることは可能ではないかと考えている。厚生労働省が、厚労省内において第三者機関を作って、そこで薬害防止の対応ができればという観点から努力させて頂いた。ただご要望頂いた中身からすると、厚労省内に作るということは難しいのかなあと思う。閣法だと法律に書き込みにくいということと相まって、皆様の考え方と重なり合えなかったと思う」

鈴木全国弁護団代表は、「経緯からすると、8条委員会を外か内か。厚労省から8条委員会で中に作るという提案がなされた 。今の大臣の答弁は、本当に意味のあるものを作るとすれば、厚労省外に作るべきと聞こえた。閣法に問題があれば、議員修正もある、という話は初めて聞いた。事務局案が出てきてイエスかノーかと言われていたのである」とした上、「議連も含めて再スタートということでよいでしょうか?」とさらに迫りました。

これに対しては、大臣は、「直接対応できなかったために意思の疎通ができなかった」、「再チャレンジされるということであれば、議連とはまた密に連絡していきたい」と認めました。

最後に、鈴木代表は、「この問題は、私ども薬害肝炎原告団弁護団だけの問題でなく、広く国民の安全がかかっていう点で、私たちも諦める訳にはいかないという点をご理解頂きたいと思う。その意味で再スタートを切るということを理解して、この問題を終わらせて頂く」と協議を終えました。

以上のように3分野について大臣の回答を求め、薬害監視の第三者組織について再び議論をスタートさせることを確認しました。
今後も、薬害肝炎全国原告団弁護団は、「恒久対策」「被害対策」「再発防止」の3分野について協議を進めていきます。