古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

薬害肝炎全国原弁会議を開催、劇症肝炎被害者らの訴えを確認

◆薬害肝炎全国原告団弁護団会議を開催

 年に1回の厚生労働大臣との定期協議を前に、薬害肝炎全国原告団弁護団会議が2019年5月26日、東京で開催され、100名近い原告団弁護団が参加しました。

 10時から恒久対策班会議、11時から全国弁護団会議、12時30分から事前代議員会議、13時30分から16時30分まで全国代議員総会(全国原告団会議)と分刻みのスケジュールでしたが、充実した議論になりました。

 その上で、「被害救済(薬害被害者の救済問題)」、「恒久対策(治療体制の整備)」、「再発防止(第三者組織や薬害教育)」の3項目について、2019年大臣協議の要求書が提案され、全員一致で承認しました。

 この日の議論をふまえ薬害肝炎全国弁護団が「薬害肝炎全面解決のための要求書」を完成させ、2019年5月30日、厚生労働省に提出しました。厚生労働省には7月1日までの回答を求めています。

◆薬害肝炎全国弁護団による提訴と和解

 また各地弁護団報告によると、薬害肝炎全国弁護団(東京・大阪・東北・名古屋・九州の5支部およびその関連地域)による提訴原告数は2209名、和解数は2136名(約97パーセント)に達しました。

 なお薬害肝炎全国弁護団は、いわゆるカルテがないケースについても2002年の提訴時点から積極的に提訴してきており、2209名のうち約13パーセントの286名はカルテがなく、医療従事者の記憶によって立証するケースです。
 カルテがない原告286名のうち256名が医師尋問等を経て、すでに和解成立しています。

◆劇症肝炎被害者の訴え

 被害救済のパートでは、「劇症肝炎問題」が取り上げられました。

 劇症肝炎問題とは、薬害肝炎の救済対象である特定血液凝固因子製剤(フィブリノゲンやクリスマシン等)が投与され、投与直後に劇症肝炎になって死亡した被害者の問題です。

 薬害肝炎救済法は「慢性C型肝炎の進行で死亡、肝硬変・肝がんになった」場合には(救済法6条1号)4000万円の給付金が支給されます。
 ところが、劇症肝炎は投与直後に死亡するため、「慢性C型肝炎の進行」という法律の条文に当てはまらないとして、国・企業が和解に応じていないのです。

 この日の会議には、遺族2名が出席して直接、被害や思いを訴えました。
 薬害肝炎全国弁護団としても改めて劇症肝炎問題の解決を求め行くことを確認しました。

「どうして母の命が軽く扱われるのか」
 薬害肝炎で母親を亡くし、薬害C型肝炎被害者救済法に基づいて2017年10月、東京地裁に提訴した関東在住の男性(71)は、悔しさをにじませた。

 30年余り前、男性の母親(当時65歳)は子宮を全摘出する手術を受けた後、止血のために血液製剤を投与された。その約2週間後、劇用肝炎を発症。男性が病院に駆け付けた時位は肝炎よる黄だんが生じ、すでに意識がなかった。
 前年に男性の弟が結婚し、当時、間もなく待望の孫が生まれる予定だった。孫を抱くことを楽しみにしていた母親は、意識を回復することなく、手術から約3か月後に亡くなった。

 救済法では、被害者が死亡した場合、国と製薬会社から計4000万円が給付されるが、「慢性C型肝炎の進行」が条件となっている。男性の母親は感染後、慢性肝炎を経ずに劇症肝炎になった。このため現状では「症状が出ていない感染者」の扱いとなり、給付金は最低額の1200万円にとどまる見込みだ。

 「同じ薬害亡くなったのに、なぜ区別されるのか」。納得できない男性は、裁判を続けている

・・C型肝炎ウイルスは、B型肝炎やA型肝炎に比べるとまれだが、感染後に突然、急激に肝機能が悪化し、劇症肝炎でなくなる人もいる。だが、救済法の成立時には劇症肝炎については議論されておらず、同省の担当者も「想定していなかった」と明かす。
 集団予防接種によるB型肝炎感染被害者の救済法(12年施行)では、死亡給付を慢性肝炎の進行に限定しておらず、劇症肝炎も、予防接種との因果関係が証明できれば死亡給付金の対象となるという。

・・出産時に止血剤として血液製剤を投与され、1987年に劇症肝炎で38歳で亡くなった女性には、当時、2人の幼い娘がいた。
 北海道に住む女性の夫(69)は「家族4人の平穏な生活を楽しみにしていたのに、子供たちを残して亡くなった妻は本当に無念だったと思う」と振り返る。
 この夫も、2012年に東京地裁に提訴した後、和解を保留している。
 「劇症肝炎だから精神的、経済的負担が軽いとされてしまうのはつらい。妻が救済されないのは、議員立法の不備が原因だ。ぜひ改正してほしい」と訴えた(2019年1月26日読売新聞)。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。