薬害肝炎原弁と後藤厚労大臣との協議会を開催、救済法期限延長と劇症肝炎解決を求めて

後藤厚労大臣との大臣協議を開催

 2022年7月26日、2022年度の薬害肝炎全国原告団弁護団と厚生労働大臣との間の大臣協議が厚生労働省で開催されました(アイキャッチ画像は昨年度のもの)。
 大臣協議は毎年7月~8月にて日程調整されます。この協議は平成19年度に始まり今回で16年度目(過去の大臣協議のレポートは末尾の「関連期日」も参照してください)。毎年、「被害救済」、「薬害の再発防止」、「恒久対策(C型肝炎治療体制の整備等)」の3分野の積残しの課題について、薬害肝炎原弁が厚生労働大臣に対して直接回答を求め、課題解決を図っていくものです。
 薬害肝炎全国弁護団が5地裁判決をてこに全面解決を求め、2008年(平成20年)1月15日、国との基本合意書を締結しました。基本合意書は、「国(厚生労働省)は、原告・弁護団と継続的に協議する場を設定する」と定めています。

 ただ今年も昨年に続いて、コロナ禍の影響から、各地からの上京しての傍聴は最低限にとどめて、ウェブ会議(ズーム)による参加としました。
 大臣協議におけるオンライン活用は既に3度目になりますから、全国からスムーズに参加できました。また昨年度は、質疑応答の際に音声が聞き取りにくいこともありましたが、今年は改善されストレスなく参加できました。

個別救済~請求期限延長と劇症肝炎

 まず薬害肝炎全国原告団の浅倉美津子代表が冒頭挨拶を行い、大臣協議をスタートしました。
 個別救済のパートでは、「請求期限の延長問題」と「劇症肝炎」の解決を求めました。
 救済法の請求期限が2023年1月であと半年を切っています。厚労省によれば、病院のカルテ調査はある程度進んでいるようですが、投与判明者に対する告知は課題として残っています。救済可能性のある被害者が多数残されている以上、救済法の請求期限は延長すべきなのです。
 また、特定製剤を投与されウイルス感染後に劇症肝炎となり死亡するケースがあります。ところが、現行法は「慢性C型肝炎が進行して」…「死亡」という文言のため、劇症肝炎被害者は死亡被害を受けているにもかかわらず、無症候性キャリアとしての救済しか受けられないという不合理な状態になっているのです。

 これに対して、後藤厚労大臣は、「議員立法で成立したという経緯からすると、議員立法によって対応することが必要であると考えている。私は厚生労働大臣であるとともに1議員でもあるので、仲間の議員と共有することによって適切な解決に進むようにしたい」と回答しました(*注:その後、2022年秋の臨時国会で薬害肝炎救済法が改正され、劇症肝炎についても対象になる見込みとなった)。

再発防止~薬害資料館設置に向けて

 再発防止については、東京原告団の泉さんや大阪原告団の武田さんから、資料収集に関する定期的な協議の開催、そして資料館設置にかかる検討組織の設置を求めました。

 武田さんは、「3年前、令和元年の大臣協議で、大臣は、「設置場所や予算の確保、資料館の運営主体、原告団・弁護団の資料を収蔵する場合の所有権の帰属などの課題に関する論点を整理するよう担当者に指示する」と述べました。この論点整理は済んでいるのでしょうか。今後は、その整理された論点について、現実に薬害研究資料館設立に向けた検討をするため、省内組織を作っていくべきではないでしょうか」と問いただしました。
 これに対して、後藤厚労大臣は、「課題としては難しい重要なもの。いまだ結論を出すにいたっていないが、皆さんに相談しながら取り組んでいきたい。」、「近年の状況をふりかえってみると、令和2年3月展示室を設置してまずは可能な範囲で開示していく、証言映像の撮影、類型74名を実績を重ねております。論点整理を速やかに進めていくということで事務方にもよく話をして進めていきたい。」、「医薬局が責任をもって取り組んでいるので、新しい組織を作るというよりも、医薬局が責任をもってやっていきたい。スケジュールについてはできるだけ検討を進めるように指示しておきたい。一歩ずつ進めるようにやっていきたい」という発言がありました。

恒久対策~肝炎対策の均てん化と差別偏見解消

 恒久対策のテーマとしては、まず、九州原告団代表の出田さんから「肝炎対策の均てん化」を取り上げました。
 肝炎の検査体制や医療水準について地域間格差があることが問題になっているのです。
 改正基本指針も、依然として地域間格差が存在することを認めた上で、「国及び肝炎情報センターは、都道府県間での肝炎医療の均てん化に資するよう、その実施状況に鑑み、適切な情報提供や助言を地方公共団体、拠点病院等に対して行うとともに、更に必要な意見交換を行うものとする」と定めているところです。

 後藤厚生労働大臣は、「非常に重要な課題であると認識している。各地の取組みに差があるとも認識している。厚生労働省としても、地方公共団体らとともに意見交換をしている。引き続き各地の取り組み状況を把握・整理して、均てん化について意見交換させて頂きたいと思っている」と回答しました。

 次に、東京原告団の及川さんが、「差別偏見解消」を取り上げました。
 改正基本指針や令和4年版人権白書には、「正しい知識の普及啓発」とともに「人権尊重の態度=患者等に対してどのようにふるまうべきかを考え、学ぶこと」が重要であると記載されています。そして、「国は、このような観点から、地方公共団体、学校教育関係者及び患者団体等の様々な関係者と連携し、その方策の検討を進める必要がある」(改正基本指針)とも定められています。
 及川さんからは、かかる環境をどのように実施していくか、質問しました。

 後藤厚労大臣は、「安心して生活できる環境づくり・普及啓発活動をする必要があるとされている。それがまさに大切なことだと認識している。人権教育を所轄する文部科学省とも連携した上で、厚労省としても地方公共団体・学校関係者・患者団体と連携して正しい知識の普及開発に力をいれていきたい」との一般論を回答しました。

 厚労大臣からの抽象的な回答に対して、弁護団から、「患者団体との協議をもって頂きたい。これからまた発生するであろう感染症に対しても差別偏見を避けたい。コロナでも様々な差別偏見を目にしている。感染症と差別について、国は、われわれとともに正面から向き合って頂きたい」と発言して締めくくりました。

2022年度大臣協議の成果

 今年の大臣協議も残された課題の中から、特に進めていくべきものに絞り込んで厚労大臣の回答を求めていきました。
 後藤厚労大臣の回答は、真摯な語り口であったものの、抽象的なものも多く、不満を持った原告も少なくありませんでした。
 一方において、今年の大臣協議をふまえて、2022年秋の臨時国会では、薬害肝炎救済法の5年延長の法改正作業が進んでいます。そして画期的なことですが、私達薬害肝炎全国原弁が強く求めてきた「劇症肝炎」ケースについても法改正される見込みになっています。
 今後も残された課題について薬害肝炎原弁は、患者団体・B型肝炎原弁とともに向き合っていく予定です。

 最後に、上京して今回の大臣協議に立ち会った九州原告団(前全国原告団代表)の山口美智子さんの寄せた原稿の一部を紹介して本記事の終わりにしたいと思います。
 

 国・厚労省が自ら解決していくためには、行政の長である厚労大臣が厚労省に対してリーダーシップを執ってほしいと、大臣協議においてずっと求め続けている。
 浅倉さんは「薬害肝炎問題は国の責任です。未救済の被害者が、いまだ残されている以上、請求期限を延長することは当然のこと。大臣がリーダーシップを発揮して、2人の劇症肝炎被害者も救済してください。」と。
 出田さんは「肝炎対策基本法で均てん化をうたいながら、実現できておりません。都道府県との意見交換の意義や目的、在り方、具体的やりかたについて、原告団に詳しく説明する場を設け、患者団体と意見交換してください。今後も継続して行ってください。大臣のお考えをお聞かせください。」と。
 及川さんは「肝炎患者の人権を尊重するためにはどのようにふるまうべきかを考え、学ぶ環境を、厚生労働省としてはどのように実施していこうとお考えでしょうか。具体的なビジョン、どのようなスケジュールで、どのような形で連携していくのか等の計画はおありでしょうか。」と。
 泉さんは「薬害研究資料館の設立は、薬害被害者の悲願でもありますが、全ての国民のためであることは明確です。残念ながら、今なお薬害資料館に向けた具体的道筋はついていません。薬害資料館に関する協議の場を持つことについてお約束いただきたい。」と。
 武田さんは「現実に薬害研究資料館設立に向けた検討をするために、省内組織をつくっていただくべきではないでしょうか。この5年間、何も進展していません。省内の検討組織設置をお約束していただけたらと思います。」と。
 以上 5名の原告さんは、数カ月前から各班の原告さんや弁護士の先生と相談しながら、また、厚労省担当者との作業部会で話し合いを重ねながら、大臣協議における要求項目を練り上げてこられました。大変な作業であったと察します。
 大臣協議後の9月には、大臣が交代しました。後藤大臣の回答の中で、獲得できたであろう要求項目が白紙に戻らないよう、私たち原告団がすべきことは何であろうか。