薬害根絶デーが今年も開催、薬害根絶の誓いの碑前に被害者・支援者が集って
目次
薬害根絶デーとは~薬害根絶の誓いの碑の前で
1999年8月24日、厚生労働省の正面玄関横の庭に「薬害根絶 誓いの碑」が建立されました。
薬害HIV弁護団原告団が厚生省(当時)との間で、3年間・20回にも及ぶ協議を経て実現した碑です。
1996年3月、薬害エイズ訴訟の東京地裁が示した和解所見は、「被告らに対し、悲惨な死を遂げた被害者や遺族の癒し難い無念さに深く思いを致し、これを慰藉するため、本和解とは別に、被害者への鎮魂・慰霊の措置を含め、最大限の配慮をされるよう要請する」と記しました。
和解成立後、遺族原告へのアンケート調査の結果、原告団弁護団は国に対して、「薬害根絶の碑」の建立を求めていくことを決定したのです。
1996年7月の厚生大臣に対する統一要求書で初めて碑の設置を要求。
これに対して、厚生大臣は「被害者への鎮魂・慰霊の措置の具体化について鋭意協議する」「協議の場を設け、その具体化についてさらに検討する」と約束しました。
ところが、碑の性格・碑文・碑の設置場所などを巡り、後ろ向きの厚生省役人と原告弁護団との熾烈な攻防が繰り広げられ、ようやく設置にこぎつけたものです(薬害エイズ裁判史・第5巻・薬害根絶編(日本評論社)7頁・99頁以下)。
誓いの碑
命の尊さを心に刻みサリドマイド、スモン、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する
千数百名もの感染者を出した「薬害エイズ」事件
このような事件の発生を反省しこの碑を建立した平成11年8月 厚生省
サリドマイド・スモン・薬害エイズ・・悲惨な薬害を引き起こした反省が刻まれた碑。
しかしその後も、薬害肝炎、イレッサ、子宮頸がんワクチンと被害は続いています。
今なお新たな薬害が生み出され救済がなされぬまま、被害者が闘う毎日が続いています。
薬害被害者の団体である全国薬害被害者団体連絡協議会(いわゆる「薬被連」)は、薬害の根絶と被害者救済を願い、毎年8月24日、「碑の前の誓い」を中心に、「厚生労働省交渉」「文部科学省交渉」など一連の薬害根絶行動を行っています。
これがいわゆる「薬害根絶デー」になります。

薬害根絶デー実行委員会の取組み
「薬害根絶デー」は薬被連が主体となって行う行事ですが、薬害被害者だけでは準備の手が足りないことも出てきます。
そこで支援者、弁護団、原告団の有志が毎月のように集って、「薬害根絶デー実行委員会」を開催して準備を行っています。
薬害肝炎全国原告団弁護団からも、原告・弁護士が出席して毎年準備に協力しています。
今年の薬害根絶デー
2023年の薬害根絶デーも8月24日に行われます。実に24回目になります。
14時30分からは全国の薬害被害者と支援者を結ぶ集会も行われます。
今年はコロナワクチン被害にくわえて、裁判が証拠調べに入ったHPV薬害訴訟の企画も予定されています。コーディネーター隈本邦彦さん、HPVワクチン被害者梅本美有さん、コロナワクチン被害者須田睦子さんらが登壇予定です。
文部科学省交渉(10:00~11:30 文部科学省 3階 第1特別会議室)
文部科学事務次官出席予定薬害根絶の誓い(13:00~13:20 厚生労働省前庭「誓いの碑」前)
厚生労働大臣出席予定
「薬害根絶の誓い」のLIVE配信(YouTube)厚生労働省交渉(13:30~15:30 厚生労働省 18階 専用22会議室)
厚生労働省への要望書(2023)全国の薬害被害者と支援者を結ぶ集会(14:30~16:30)
集会(弁護士会館講堂クレオ・オンラインあり)やリレートーク等
過去の薬害根絶デー
過去の薬害根絶デーでも印象的なトピックや活動が行われてきました。

2002年に全国一斉提訴を行い、2008年1月に救済法成立した薬害肝炎でも、国側は長く全国原告団との面談さえ行いませんでした。
そのため、薬害根絶デーの碑の前行動には厚生労働大臣が出席しますので、全国原告団が直接要望を伝える貴重な機会にもなっていました。当時の全国原告団代表だった山口美智子さんが厚生労働大臣に解決を迫った姿が今も記憶に残ります。
また、薬被連に触発されて結成された「薬害弁連」も、2004年8月24日の薬害根絶デーに合わせて開催された「薬害対策弁護士交流会」がきっかけでした。
このように地道に継続する息の長い、被害者自身の活動が着実に成果を上げています。
今年の薬害根絶デーにもぜひご注目ください。
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関連情報
参考文献
・薬害エイズ裁判史・第1巻・訴訟編(日本評論社)
・薬害エイズ裁判史・第5巻・薬害根絶編(日本評論社)
・薬害肝炎裁判史(日本評論社)
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