慢性肝炎治療薬ハーボニーがジェノタイプ2型の効能・効果を追加、貧血患者もリバビリンなしでの治療が可能に
目次
◆ ハーボニー配合錠
ギリアド・サイエンシズの「ハーボニー配合錠(レジパスビル・ソホスブビル配合剤)」は2015年7月3日、製造販売承認を取得した経口C型慢性肝炎治療薬です。
いわゆるインターフェロン以外の新しい薬ということでインターフェロンフリーと呼ばれるもの。
インターフェロンによる強い副作用を回避でき、かつ、治癒率も100%近いということで画期的な治療薬として登場しました。
2015年9月1日から販売開始しましたが、当初の薬価は1日1錠で8万171円にもなりました(ただし医療費助成の対象になりますから、患者の負担は最大月2万)。
そのためハーボニーの偽造薬が出回り社会問題化して、つい先日も偽造していたとされる広島県の夫婦が警察に逮捕された事件が発生しています。
◆ ハーボニー配合錠の効能効果としてⅡ型も追加へ
当初の効能・効果は、遺伝子1型(ジェノタイプ1型)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善でした。
1型は日本人に一番多い遺伝子型ですが、少なからずおられる2型の患者に対しても、2018年2月2日付けで製造販売承認事項一部変更について了承され、2月16日に新たに効能・効果が追加されたものです。
これに伴い、ハーボニー配合錠の取扱いについて、2018年2月16日付けで、厚労省から都道府県担当者宛てに事務連絡文書を発出されています。
これまで2型のC型慢性肝炎の患者は、ソフォスビル+リバビリン、ヴィキラックス+リバビリンで治療するのが大半でした。
ただしリバビリンの副作用に貧血があるため、貧血の患者にはリバビリンの量が余り使えません。そのためリバビリンの量が少ない肝硬変の患者は治りにくいという限界がありました。
山梨大学医学部の榎本信幸教授は、ハーボニーの2型への適応拡大に際して、以下のようにコメントしています。
「国内第III相臨床試験では、ジェノタイプ2型のC型肝炎患者でも治療歴や肝硬変の有無にかかわらず、高いSVR12を達成しました。今回の適応拡大に伴い、日本におけるC型慢性肝炎のほぼすべてを占めるジェノタイプ1及び2型の治療がリバビリンを使用しないハーボニーで可能になり、C型慢性肝炎患者さんにとって有益な治療選択肢を提供できます」(2月16日付けギリアド・サイエンシズのプレスリリース)
◆ 他のインターフェロンフリーと治癒率
ちなみにハーボニー以外では、ヴィキラックス、エレルサ+グラジナが良く使用されており、いずれも12週間の治療。
虎ノ門病院の熊田博光医師によると(平成29年9月18日・第22回肝臓病医療講演会)、「治癒率は、ハーボニーが96%、ヴィキラックスが96%、エレルサ・グラジナが98%とインターフェロンフリーとしてはいずれあまり変わらない成績になっています」ということです。
一方において、熊田医師は、実際には患者のC型肝炎の特徴によって若干差があり、「ハーボニーではL31という遺伝子が形を変えている人は治りにくい」、「ヴィキラックスではY93という遺伝子が変化していると治りにくい」、「エレルサ+グラジナは、L31とY93の2つとも変異している人は治りにくい」ということです。
いずれにしろウイルス排除するためにきちんと治療するためには信頼できる専門医の判断にて使用するインターフェロンフリーを見極めて行く必要があるでしょう。
投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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