古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

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薬害肝炎全国原告団弁護団と福岡資麿厚生労働大臣との大臣協議を開催

福岡資麿厚生労働大臣との大臣協議を開催

 2025年7月30日、2025年度の薬害肝炎全国原告団弁護団と福岡資麿厚生労働大臣との間の大臣協議が厚生労働省で開催されました。

 大臣協議は平成19年度に始まり今回で19年度目になります(過去の大臣協議のレポートは末尾の「関連記事」も参照してください)。

 毎年、「被害救済」「薬害の再発防止」「恒久対策(C型肝炎治療体制の整備等)」の3分野の課題について、薬害肝炎全国原告団弁護団が厚生労働大臣に対して、直接回答を求め、課題解決を進めていくという重要な協議会になります。

 薬害肝炎全国弁護団が5地裁判決をてこに全面解決を求め、2008年1月15日、国との間で基本合意書を締結しました。基本合意書は、「国(厚生労働省)は、原告・弁護団と継続的に協議する場を設定する」と定めており、かかる合意に基づいて開催されるものです。私達はこの協議会を「大臣協議」と称して、年間活動の重要テーマに位置付けています。

 全国から原告団弁護団約50名が厚生労働省会議室に集結するとともに、オンラインからも参加。
 大臣協議におけるオンライン活用はコロナ禍をきっかけに導入され、早いもので既に6度目になっています。

及川原告団代表からの挨拶

 まず、2024年に薬害肝炎全国原告団の代表に就任した及川綾子さんが挨拶して、福岡資麿厚労大臣との大臣協議が開始しました。

 「私達はこれまで20年に渡り活動してきました。それは命を軽視することに対する怒りです。二度と薬害を起こしてはいけないという思いです。福岡資麿大臣は肝炎対策推進議員連盟でもその一員としてこれまで尽力されてきました。その福岡大臣とこうやって大臣協議の場で向きあえることには運命を感じています。本日はよろしくお願い致します」

肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の利用を促進するためには

 まず恒久対策のテーマとして、「肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の利用促進」を取り上げました。
 肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業は、平成30年12月から開始した医療費助成制度ですが、その要件が厳しいこともあり、利用者は想定より低いままになっています。

まず、同事業の指定医療機関については、医療機関ごとに同事業の担当者を決めることが望ましい。各指定医療機関において担当者が決められているか、現状を把握し、その結果を公表されたい。

また、要件の緩和を踏まえ、高額療養費の限度額を超えた最初の月の時点で、当該患者に同事業の内容を説明する仕組みを構築されたい。

さらに、同事業の利用者数が伸びない原因の一つとして、医療機関側に大きな事務負担を課していることが考えられる。関係する医療機関からヒアリングのうえ、その事務負担軽減策を講じられたい(薬害肝炎:恒久対策に関する要求書)

 そこで九州原告団代表出田さんと全国原告団代表及川さんから問題点を具体的に指摘して、大臣に回答を求めていきました。

 福岡大臣は、「必要な方が必要な医療を受けられる必要があると思う。地方によっては受診できない医療機関が多いという声も聞く。どういった体制を組んでいくべきか考えていきたい。要件緩和を進めるべきことはその通りだ。どういった要因か見ていかないといけないと思っている。その上でさらなる緩和など検討していきたい」と回答しました。

 及川代表は、「私たちが長年疑問に思っているのは、なぜ、高額療養費の限度額を超えた月が複数回ないと支援を受けられないかということ。1回目と2回目で支援の必要性がどれほど違うのでしょうか。高額な医療費の負担を心配して治療を受けるかどうか迷っている患者。これこそ支援が必要な人たちです。そうであるなら、むしろ1回目から支援の手を差し伸べるべきではないでしょうか」と述べました。

 これに対して、福岡大臣は「苦しんでいる方が多数おられることは承知している。様々な問題があることも承知しているので、問題点を把握した上で制度をさらに前に進めていきたい」と回答しました。

フィブリノゲン製剤投与判明者への再告知・所在不明者へのアプローチを求めて

 個別救済については、「診療録の未調査医療機関の解消等」を取り上げました。
 具体的には、未告知者を解消するための措置、厚生労働省による所在不明者の連絡先調査の実施、さらに投与判明者に対する再告知を求めるテーマになります。

 未告知者解消のための措置としては、現在の未告知者の数、その理由、医療機関名などを明らかにするように求めました。
 その上で、未告知者解消のための抜本的な措置を講ずるように、テレビCM・新聞・ネット広告等あらゆる媒体を利用して周知するように求めました。

 さらに、過去に投与判明者に対する告知を行ったものの、その後の追跡確認・フォローアップを行っていない医療機関もあります。そこで、再度の告知を行っていくように強く求めました。
 再告知の方法としても、厚生労働省において、投与判明者のウイルス検査受検の有無、検査結果等の把握が可能となるように、返信用封筒を同封した一問一答のアンケート方式も具体的に提案しました。

 これに対して福岡孝麿大臣は、「再告知についてはプライバシーに配慮した上で準備を進めている。アンケートという方法が良いのかも含めて、送った先の方の目に触れるには何が必要か、さらにご意見もふまえながら検討してきたい」と回答しました。

 また、「ご指摘のように所在不明者が多数おられます。注意喚起を図っていく必要のあることはその通りだと思う。連絡を取ることが難しい人を対象に、地方紙などで告知していくことも考えている。どういったことが効果的か、検討を進めていく中で皆さんの意見も反映させていきたい」と回答しました。

薬害資料館の実現に向けて

 再発防止については、主に、薬害研究資料館を取り上げました。
 具体的には、資料館の重要性を確認した上で、予算措置の拡充を求めるテーマになります。

厚生労働大臣は、薬害研究資料館が、十分な活動をできる人的資源を確保するために人件費の拡充を図られたい。

厚生労働大臣は、薬害研究資料館が、十分な活動をできる物的基盤を確保するために備品費・消耗品費の拡充を図られたい。

厚生労働大臣は、薬害研究資料館の事業費拡充を図られたい。

厚生労働大臣は、補助金を年度開始と同時に交付するか、あるいは同等の効果を持つ措置を講じて、一般社団法人薬害研究資料館に資金繰りの負担をさせないようにされたい(薬害肝炎:再発防止に関する要求書)


 東京原告団の泉さんから、最終提言の1つの柱である薬害研究資料館について、具体的な道筋について意見を求め、迅速な実現への決意を問いました。

 その上で、薬害研究資料館の理事をしている大阪原告団代表の武田さんから、具体的な予算措置を拡充していくことを求めました。

 福岡大臣は、「必要となる人員確保・スペース確保は大事だ。必要な予算が確保できるよう全力で取り組んでいきたい」、「補助金の交付が遅れて予算上の空白ができることは、安定的な運営の上で望ましくない。新年度開始前から事務方と早めに打合せさせて頂いて、新年度開始日からなるべく早く交付できるように検討していきたい。そのほかの方策もありえるのか検討してまいりたい」と回答しました。

 これに対して、及川さんから「大臣から大変力強い言葉を頂いたと思っているので、ぜひほかの方策についても検討して頂けたらと思います」と述べました。

2025年大臣協議のまとめ

 及川さんが全国原告団代表に就任して2回目の大臣協議でした。
 福岡資麿厚労大臣は肝炎患者の多い佐賀県出身。大臣が肝炎議連で長年活動してきたこともあり、肝炎原告でも面識のある者も多く、その活動に根差した回答がなされました。

 今年も及川さん含めて各班メンバーが入念に事前準備をした上、本日の大臣協議に臨みました。
 これからも引き続き毎年の大臣協議を通じて、恒久対策、被害救済、再発防止の分野において各課題を少しでも前に進めていきたいと思います。

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投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。