古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

高齢者が500万円おろすと警察通報へ、福岡の金融機関が県警とタッグを組んで振込詐欺対策

福岡県内の銀行・信用金庫・信用組合が、65歳以上の高齢者が窓口で500万円以上を引き出す場合には原則として警察に通報する運用を開始しました。
通報を受けた場合、警察官が来訪して直接事情を聞き取るようです。

福岡県警・福岡財務支局・金融機関がタッグを組んで12月から導入されたもの。

業務で引き出すことを確認できた場合を除いて全て通報するとのことです。

振込詐欺含めた特殊詐欺は、家族・行政・警察・銀行等による重層的な対策が必要不可欠ですから、なかなかおもしろい取り組みだと思います。

また200万円以上を引き出す際も、金融機関が現金を渡す相手などを尋ねるアンケートを実施し、不審な点があれば警察に通報する。
県警によると、これまでに通報で未然に被害を防いだ例もあり、今後の効果に期待を寄せている。現金自動預け払い機(ATM)は1日に引き出せる金額の上限を50万円などに設定しているケースが多い(12月22日付け日経新聞)。

先日は、西日本シティ銀行役員支店で、女性ロビーマネージャーが声をかけて被害を防止したことも報道されていましたが、福岡県内の金融機関は被害防止に積極的に取り組んでいるようです。

同署によると、12日午後2時50分ごろ、男性顧客(70歳代)が同支店ATMコーナーで、携帯電話で指示を受けながら機器を操作しているのに気づいた同支店の女性ロビーマネジャー(50)が、顧客に声をかけた。
顧客が「市役所から電話があり、還付金が戻ってくる」と言ったため、還付金詐欺ではないかと判断。「市役所から、そんな電話はないですよ。電話を代わりましょう」と言って、顧客の携帯電話を受け取ったところ、相手が電話を切った。
その後、上司を通して110番通報し、還付金名目のニセ電話詐欺事件であることが判明した(12月16日付け西日本新聞)

こういう制度導入は、「目的・効果」と「利便性・プライバシー」とのバランスが大事ですが、昨今の振込詐欺含む特殊詐欺の傾向を考えるとやむを得ないと思います。

私が係わった預貯金過誤払い事件による集団訴訟によって、国会も動き、預貯金保護法が成立しました。
預貯金過誤払集団訴訟は、薬害防止のNGOである薬害オンブズパースンの東京事務所が盗難被害にあい、窃盗団によって預貯金を不正に引き出されたことがきっかけ。
東京弁護団が音頭を取って全国に被害弁護団が立ち上がり、盗難通帳によって不正に預金を引き下ろした全国の被害者らが、各金融機関を被告として起こした訴訟です(詳細な経過は、東京弁護団が中心になった執筆した「預貯金保護法ハンドブック(日本評論社)」に詳しく解説されています)。

預貯金保護法の成立によって、預貯金を引き下ろす際の窓口審査が全国的に厳しくなり、法律事務所として預貯金を扱う際にも不便を感じることもありましたが、慣れてしまった今ではさほど不都合には感じません。

福岡の金融機関のように県警と連携してまずは運用開始することが大事であり、利便性・プライバシー保護については、顧客の声を聞きながら運用を微調整していけば足りるのではないかと思います。

一方において最近は、「100万円」「150万円」を複数回振り込ませるという手口も多いですから、「500万円」という通報基準についても、今後の県内の詐欺被害の推移を見ながら再検討する必要が出てくるかもしれません。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。