改正薬害肝炎被害者救済法が12月8日に成立、合わせて福岡地裁に一斉提訴
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改正薬害肝炎救済特別措置法が成立
いわゆる薬害肝炎の被害の救済を定めた改正薬害肝炎救済特別措置法が2017年12月8日、参議院本会議において全会一致で可決・成立しました(投票総数234 賛成票234 反対票0)。
来年2018年1月15日に提訴期限を迎えるため、薬害肝炎原告団弁護団が法延長を与野党に働きかけていたもの。
衆議院解散もあり国会日程もタイトでしたが、事案の緊急性に鑑みて与野党が優先して成立させたものになります。
(法案提出)理由
特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法に基づく給付金の支給の請求の状況に鑑み、給付金の請求期限を延長する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
法改正の経緯
薬害肝炎全国弁護団は、2002年から2007年まで福岡地裁・大阪地裁・東京地裁・名古屋地裁・仙台地裁の5地裁にて国・製薬企業の責任を追及し、5地裁判決を得ました。それを受けて2007年12月に当時の福田総理の政治決断を引き出し、2008年1月16日の薬害肝炎救済法(特別措置法)が公布・施行されて、全面解決への道筋が整ったものです。
その後、全国にて追加提訴を継続している一方、薬害肝炎救済法では、施行された平成20年1月16日から起算して5年を経過する前に訴訟を提起することが必要でした。そこで5年を迎えるところで、薬害肝炎全国原弁が延長を求めた結果、救済法は2012年9月14日に改正されて、「10年」に延長されていました。
ところが、製薬企業の控えめな推計でもフィブリノゲン製剤による被害者は約1万人と推定されていますが、給付金支給を受けたのは2200名にとどまっています。
そこで一度延長された10年の期限が来年2018年1月15日に迫っていたため、薬害肝炎全国原弁はさらに延長を求めた結果、2017年12月8日、救済法の改正法案が参議院本会議で全会一致で可決成立したものになります。
法文と施行日
薬害肝炎救済法の改正法は2017年12月15日付け官報(号外第272号)に掲載され公布されました。
附則において「この法律は、公布の日から施行する。」とありますので2017年12月15日から施行されることになります。
特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固因子製剤によるC型肝炎被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(平成20年法律第2号)の一部を次のように改正する。
第五条第1号中「十年」を「十五年」に改める。
つまり、第五条は以下のようになり、提訴期限が5年延長されたことになります。法律にいうところの「施行の日」とは、法律が最初に施行された「平成20年1月16日」をいいますから、平成35年1月16日まで延長されたことになります。
なお2号は、平成35年1月16日までに訴訟を提起していれば、判決確定日や和解日がその後になっても1か月以内であれば給付金を請求することができることを意味します。
第五条 給付金の支給の請求は、次に掲げる日のいずれか遅い日までに行わなければならない。
一 この法律の施行の日から起算して十五年を経過する日(次号において「経過日」という。)二 特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染したことを原因とする損害賠償の訴えの提起又は和解若しくは調停の申立て(その相手方に国が含まれているものに限る。)を経過日以前にした場合における当該損害賠償についての判決が確定した日又は和解若しくは調停が成立した日から起算して一月を経過する日
福岡地裁に追加提訴
改正薬害肝炎救済法が参議院で可決成立した12月8日、薬害肝炎九州弁護団は6名の被害者について福岡地裁に追加提訴しました。
追加提訴の概要は以下の通りです。
平成29年12月8日 提訴原告の概要(福岡地裁)
⑴ 提訴被害者数 6名
⑵ 男女比 男2名:女4名
⑶ 県 福岡県5名:沖縄県1名
⑷ 製剤名 フィブリノゲン(糊含む)5名:クリスマシン1名
⑸ 症状 キャリア3名:慢性肝炎1名:肝硬変肝がん2名
⑹ 年齢比 50代1名:死亡5名
⑺ 原因疾患 産科出血1名:小児疾患1名:外科4名
なお薬害肝炎訴訟の現状は、原告数370名(福岡地裁368名、山口地裁2名)、和解数368名、訴訟継続中2名になっています。
今回の福岡地裁追加提訴の特徴
今回の追加提訴の特徴は、6名中5名の被害者が既に死亡しており、原告が遺族であるということ。フィブリノゲンによる被害は1964年から1994年の間に発生したため、C型肝炎に感染した被害者が命を落としている例が増えているといえます。
また6名中3名は、医療機関がみずからカルテを調査した上、投与が判明した被害者に対して告知文書を出した結果、提訴につながったものです(福岡県内の医療機関2、佐賀県内の医療機関1)。
薬害肝炎全国弁護団は厚生労働省に対して、医療機関への訪問調査を繰り返し要求してきましたが、厚労省の訪問調査はまだ政府系医療機関を中心に一部にとどまっています。
今回の改正法の附帯決議でも医療機関のカルテ確認作業が入りました。
追加提訴を受けて福岡地方裁判所内の司法記者クラブで会見しました。その際、薬害肝炎九州原告団代表の出田妙子さんは、以下のように訴えました。
「1万人を越える被害者がいると言われているのに救済された人は2000人に限られます。国と企業の責任において医療機関のカルテ調査を推進して、一人でも多くの被害者を救済して頂きたいと思います」
弁護団による無料電話相談窓口
九州弁護団では2002年以来、常設で無料電話相談窓口を設置しています。ただかなり繋がりにくくなっていますので、FAX相談も活用頂くのがよろしいと思います。
電話相談窓口 092-735-1193(平日10~12時、13~15時)
FAX相談窓口 092-735-1196(数日以内に折り返しの連絡を致しますので、「事案の概要」とともに「連絡先電話番号」と「住所」を明記してください)
投稿者プロフィール
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。