古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

患者がオーバーテーブルを支えにした転倒事例が17件、医療安全情報132号

公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」132号・2017年11月号を公表しました。

今回は、患者がベッドから立ち上がる際などに、支えにしたオーバーテーブルが動き、転倒した事例が17件報告されています。

第19回報告書「個別のテーマの検討状況」でも取り上げられていた内容です(集計期間:2014年1月1日から2017年9月30日まで)。

オーバーテーブルとは医療施設や介護施設において患者のベッドサイドに設置された可動式のテーブルです。患者がベッド上で食事をしたり軽作業をする際に使用することを目的としたもの。

1つ目の事例は以下の通りです。
患者がトイレに行くため、看護師はオーバーテーブルのロックを解除しました。そして患者がベッドから立ち上がる際にオーバーテーブルに手をついたところ、オーバーテーブルが動いてしまい、患者はバランスを崩して転倒し、大腿骨頚部を骨折したものです。

2つ目の事例は、患者がカーテンを閉めようとしてベッドから立ち上がった時に発生しました。患者は1人で歩けると思ったのですがふらついてしまい、オーバーテーブルに手をつきました。オーバーテーブルはロックがかかっていたのですが動き、患者は転倒してしまったというものです。

事例が発生した医療機関では再発防止のため、以下の取組を行うようになりました。

患者が安全に過ごせるようにベッド周囲の環境を整備する。

オーバーテーブルに体重をかけると動き、バランスを崩して転倒する可能性があることを患者に具体的に説明する。

総合評価部会としては、「ベッド周囲にはオーバーテーブルに限らず動くものがあるため、ベッド周囲のリスク評価を実施する」ことを提言しています。

医療施設や介護施設における特に高齢者の事故について損害賠償請求訴訟が増加しています。
オーバーテーブルではありませんが、ベッド付近における転倒事故は訴訟においても頻発している類型になります。
例えば、86歳の女性がベッドから転落して左大腿骨転子部骨折の傷害を負った事案において、大阪地裁平成19年11月7日判決は、転落事故再発防止のための具体的な有効策(ベッド柵の取付、ベッド下の緩衝剤の設置、ヘッドギアの装着等)が何ら講じられていなかったとして、安全配慮義務違反による損害賠償責任を認めています。

◆ 関連記事

インスリン単位の誤解による事故が多発、医療安全情報131号」(2017/10/17)
中心静脈ラインの開放による空気塞栓症が7例報告、医療安全情報130号」(2017/9/20)
座位による中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓が3例報告、医療安全情報113号」(2016/4/14)

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。