古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

産科医療補償制度のその後、2015年から補償範囲が拡大へ

◆産科医療補償制度の改正内容

2009年1月に導入されていた産科医療補償制度が、2015年1月から改正されました。

産科医療補償制度とは、重度脳性麻痺になった子と家族の経済的負担を補償するもの。妊婦が加入する必要はなく、分娩医療機関が加入していれば補償を受けることができます。

遅くとも5年後をめどに検証し見直しを行うとされていたところ、1分娩あたり3万円徴収されていた掛け金の剰余金が800億円を超えて問題にもなっていたものです。

産科医療補償制度

改正の方向としては、「補償額の増加」と「補償範囲の拡大」がありえましたが、後者のみとなりました。

つまり、補償の対象範囲は、これまでの「在胎週数33週以上、出生体重2000グラム以上」から、「32週以上、1400グラム以上」になりました。
また1分娩あたりの掛け金は3万円から1万6000円に引き下げられます。

前者の補償額は、従来どおり、20年間で3000万円(一時金600万円、分割金120万・20回)のままです。

医療機関に責任が発生する場合の補償額は3000万円にとどまりません。
そのため、産科医療補償制度で3000万円が支給されることになっても差額について損害賠償請求する必要性も従前の通りです。

◆制度の特徴

産科医療補償制度は、「原因分析報告書」「再発防止に関する報告書」を作成することも特徴の一つといえます。

「原因分析報告書」は、分娩医療機関と子の保護者の双方へと送付することによって、家族の理解を得るとともに、再発防止に役立てようというものです。
このように分析された個々の事例はさらに整理されて、「再発防止に関する報告書」にまとめられることになります。

◆患者・分娩機関の満足度は?

日本医療機能評価機構が実施したアンケートによると、原因分析報告書の内容について、「とても納得できた」「だいたい納得できた」を合わせると94%に達しました。

産科に限らず「医療過誤ではないか」と法律相談に来られる患者・ご家族は、医療機関の対応への不信、結果が発生した後の説明への不満、何が起きたのか知らないと納得できないという思い・・を抱えている方が少なくありません。

その意味で産科医療補償制度の現在の取り組みは、患者側の要望にそれなりに添えていると評価できると思います。

分娩施設減少の流れに歯止めをかけ、一定の評価を得ているからこそ、どうしたら持続可能な制度に生まれ変わらせることができるのかを、健康保険組合や医療者、運営機関の関係者たちが話し合いを続け、厳しい保険財政のなかでも、今回、一応の決着をみたのだと思う。
一見、自分には関係ないと思える制度が、実は自分たちの暮らしを守っていたことに、後から気づくことはよくある。だが、社会保障制度は、無くなってしまってから気がついても遅いのだ。だからそこ、持続可能性を意識しながら、制度の行方をおっていきたい。(11月6日ダイヤモンドオンライン

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。