古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

C型慢性肝炎の新経口薬「ハーボニー」がついに承認販売、治験段階では318名が100%治癒

◆期待のハーボニーが承認取得

ギリアド・サイエンシズの経口C型慢性肝炎治療薬「ハーボニー配合錠(レジパスビル・ソホスブビル配合剤)」が2015年7月3日、製造販売承認を取得しました。厚労省の薬食審医薬品第2部会が5月28日に承認を了承していたものです。

さらに厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会が2015年8月26日に開催し、ハーボニーの保険適用を正式に承認しました。これを受けて9月1日から販売開始します。

薬価は1日1錠で8万171円にもなりますが、医療費助成の対象になりますから、患者の負担は最大月2万で済みます。

インターフェロンを利用しない慢性肝炎治療薬として世界的に注目を集めているハーボニーがついに日本で承認取得し、販売開始することになります。

遺伝子(ジェノタイプ)2型に対するソバルディ錠(ソホスブビル)は2015年3月に承認を取得して5月25日から既に販売開始していました。

・「ソバルディ錠(ソホスブビル)が5月25日から販売開始

今回の承認は、日本のC型肝炎患者の70~80%を占めるという遺伝子1型に対するハーボニー配合錠が承認されたことにより、対象患者が一気に広がるという意義があります。

ハーボニ

いわゆる従来の主流であったインターフェロンを利用しないインターフェロンフリー療法は、既に他の薬剤が承認されていました(ダグラタスビルとアスナプレビル)が、このハーボニーは、日本の治験段階で100%の治癒率に達しています。

日本における肝がんの61%がC型由来であり、B型由来は15%です。中国では圧倒的にB型由来の肝がんが多く、アメリカも少しC型由来が多いくらいです。
このようにC由来の肝がんが多いという日本において、今回の承認の意義は大きいものがあります。

C型肝炎治療が「全例治癒を射程に入れた」といえるでしょう。

国立研究開発法人国立国際医療研究センター肝炎免疫研究センター(千葉県)教授 溝上 雅史氏(医師、医学博士)は、次のように述べています。

「ハーボニー®の承認は、国内の C 型慢性肝炎治療を大きく進展させるものです。ハーボニー®は、患者さんによっては投与が困難で忍容性も低い場合のあるインターフェロンとリバビリンの投与を不要とし、ジェノタイプ 1 型の C 型慢性肝炎患者さんの多くが 1 日1 回 1 錠の経口剤による 12 週間の投与での治療が可能となります。」(7月3日付けギリアド・サイエンシズ・プレスリリース)

◆治験成績

ハーボニー単独又はリバビリン併用によって318例に投与しています。うち34%が65歳以上で、23%が代償性肝硬変を有していました。

今まで治療経験のなかった患者100%、治療経験のあった患者も100%についてウイルスが排除できています(持続的ウイルス学的著効・SVR12)。
なおSVR12とは、治療終了から12週後に血中からHCVのRNAが見つからないことをいいます。

◆効能・効果

効能・効果は、遺伝子1型(ジェノタイプ1型)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善です。

用法及び用量としては1日1回1錠を12週間経口投与します。

◆副作用

治験段階での副作用(リバビリン非併用)としては、鼻咽頭炎(29%)、頭痛(7%)、倦怠感(6%)などが公表されています。

治験段階は限られた集団にしか投与されませんが、承認販売後は様々な身体的状態の患者に投与されますから、一般的に予期せぬ副作用が出ることもあります。
患者としても専門医に相談しながら十分に注意して治療していくことが望まれます。

◆問題点~高額な薬価は妥当なのか?

このようにまだ治癒できないC型肝炎患者にとっては期待の極めて大きい新薬ですが、一方、その高額な薬価が問題になっています。

ギリアド社の試算では、来年2016年度に1万8000人の患者が投与を受け、その販売額は1190億円に達すると見込み。

8月26日の中医協でも、薬価算定に疑義が出されて議論が紛糾する一幕がありました。

日本医師会の委員が強く見直しを求めたのに対して、薬被連の委員でもある「患者本位の医療を確立する連絡会」委員の花井十伍氏が、「心待ちにする患者の気持ちから本日中に何とか決着させて欲しい」という意見を述べるなど、紆余曲折を経て最終的に保険適用が認められました。

◆今後の見通し

冒頭でも述べたように、8月26日中医協総会がハーボニーの保険適用を了承し、2015年9月1日から販売開始します。
また、治療費助成の対象となり、患者の負担は従来通り、月1万から2万で済むものと予想されます。

薬害肝炎九州原告の中にも、既に専門医から勧められて9月から早々の治療開始を検討している人もいます。

患者団体「東京肝臓友の会」の米沢敦子事務局長は保険適用について「インターフェロンで副作用が出て、治療ができずにいる人は多くいる。朗報だ」と話す(8月27日付け朝日新聞)。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。