古賀克重法律事務所ブログ

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注射剤によるアナフィラキシーショック死亡が12例、日本医療安全調査機構が再発防止に向けた提言3号を公表

医療事故の再発防止に向けた提言3号

 日本医療安全調査機構が、医療事故の再発防止に向けた提言3号「注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析」を公表しました。

 アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」とされ、アナフィラキシーショックとは、「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」と定義されています。

 今回集積された事例としては下記のようなものが報告されています。

膵臓がん疑いの50歳代女性。造影 CT 検査室で発症。
・原因薬剤は、造影剤のイオパミロン。
・過去に血管造影検査等でイオパミロンを5回使用したが、アレルギー症状の出現無。
・イオパミロン注入から3分後に呼吸の乱れ、嘔気、足のムズムズ感を訴え、7分後に意識消失。15分後にアドレナリン1 mgを静脈内注射し救急処置を実施するが、約1時間半後に死亡。

虫垂切除術の50歳代男性。手術室で発症。
・原因薬剤は、筋弛緩薬のエスラックス。
・市販の解熱鎮痛薬を使用し、アレルギー症状の出現有。
・全身麻酔でエスラックス投与 2 分後、挿管直後より換気困難となる。6分後の気管支拡張薬吸入でわずかに換気可能となるが、10分後に SpO2 低下・心電図上 ST上昇を認め、11分後にアドレナリン 100μg(0.1 mg)静脈内注射。13分後に心停止。アドレナリン 1 mg を静脈内注射し救急処置を実施するが、約6時間後に死亡。

齲歯治療中の60歳代男性。歯科診療所で発症。
・原因薬剤は、歯科用局所麻酔薬のネオザロカインパスタ、オーラ注が否定できない。
・過去にネオザロカインパスタ、オーラ注を4回使用したが、アレルギー症状の出現無。
・抜歯のためネオザロカインパスタ、オーラ注、笑気ガスを使用。薬剤使用開始から約15分後に気分不良が見られ、含嗽直後に意識消失。胸骨圧迫開始し救急要請。
医療機関で心肺停止状態のためアドレナリン 1 mg を静脈内注射し救急処置を実施するが2日後に死亡。

アナフィラキシーの原因薬剤

 アナフィラキシーはあらゆる薬剤で発症の可能性があります。

 特に造影剤、抗菌薬、筋弛緩薬等による発症例が多くなっています。対象12事例においても、使用された薬剤は造影剤が4例(イオパミロン、オムニパーク)、抗菌薬が 4例(バクフォーゼ、ワイスタール、スルバシリン、ナファタット)筋弛緩薬が2例(エスラックス)、蛋白分解酵素阻害薬が1例(フサン)、歯科用局所麻酔薬が1例(ネオザロカインパスタ、オーラ注)です。

提言

 対象10事例において、アナフィラキシー症状が出現し始めたのは5分以内。
 このように、医薬品・静脈内注射によるアナフィラキシーは、発症すると急変するまでの時間が短いことから、投与に際してはアナフィラキシー発症の可能性を常に意識することが重要になります。

 そこで以下のような提言がなされています。

 造影剤、抗菌薬、筋弛緩薬等のアナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射で使用する際は、少なくとも薬剤投与開始時より5分間は注意深く患者を観察する。

 薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の容態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフィラキシーを疑い、直ちに薬剤投与を中止し、アドレナリン0.3 mg(成人)を準備する。

 アナフィラキシーを疑った場合は、ためらわずにアドレナリン標準量0.3 mg(成人)を大腿前外側部に筋肉内注射する。

 アナフィラキシーショックが発生した場合、提言にあるように医療機関が迅速な対応を行わないと死亡という重大な結果に陥ります。

アナフィラキシーの医療過誤訴訟

 アナフィラキシーの場合、患者・家族が突然の重大な結果に見舞われることになります。
 そして医療機関側としても適時、適切な対応が取れないこともあるため、「医療ミスではないか」「医療過誤ではないか」という法律相談も多い分野です。

 私が依頼を受けて示談交渉を担当した事案としては、「肺炎治療を受けていた患者が抗生剤(アンスルマイラン)の投与をによりアナフィラキシーショックによって死亡した」というケースがあります(ケース解説) 

 また原告(遺族)代理人として担当した医療過誤訴訟としては、上部内視鏡検査を受けていた患者が前処置としてのキシロカイン投与によりショック死したケースについて、問診義務違反による4673万円の損害賠償を認めた福岡高裁平成17年12月15日判決(判例タイムズ1239号275頁、判例時報1943号33頁)などがあります。

全身にアレルギー症状が起きる「アナフィラキシー」を、注射剤によって発症し、死亡したとみられる報告が、昨秋までの2年間に12件あったことがわかった。予期せぬ患者の死亡事故を調べる国の医療事故調査制度に基づき、日本医療安全調査機構が分析し、18日に発表した。担当者は「早期に対応できる体制整備を」と呼びかけている。

昨年9月までの2年間の12件のうち10件は、注射中か注射開始から5分以内に呼吸の乱れや吐き気などの症状が出ていた。アナフィラキシーの初期対応として、日本アレルギー学会が指針で示すアドレナリンの筋肉注射をしたのは1件だけだった(2018年1月18日付け朝日新聞)

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投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。