神戸市立西神戸医療センターがB型肝炎ウイルス感染を忘れ、抗ウイルス剤処方中止により患者が急性肝炎で死亡
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抗ウイルス剤処方中止により患者が急性肝炎で死亡
神戸市立西神戸医療センターは2025年8月21日、悪性リンパ腫を治療していた患者(男性・70代)がB型肝炎ウイルスにも感染していることを失念し、抗ウイルス剤の処方を中止したために急性肝炎で死亡したと発表しました。

患者は2023年10月に悪性リンパ腫の診断を受け、11月から化学療法を開始しました。
処方する薬剤にB型肝炎ウイルスを増殖させるリスクもあったことから、抗ウイルス剤(核酸アナログ製剤)も処方されました。
悪性リンパ腫の治療は2024年9月に緩解で無事終了しました。患者のB型肝炎に対する抗ウイルス剤の投薬は継続する必要がありました。
ところが、医師がB型肝炎ウイルス感染を失念しており、抗ウイルス剤の処方も中止してしまいました。
さらに、患者のウイルス量の検査は継続していましたが、医師は検査結果に注意を払いませんでした。
患者は2025年1月、倦怠感を訴えて再受診し入院しましたが、劇症肝炎を発症して死亡してしまったものです。
B型肝炎の治療は消化器内科が専門だが、担当医は免疫血液内科の医師だった。事故後、消化器内科の医師以外は核酸アナログ製剤の処方をできないようにするなど、再発防止策を講じたという。
病院側は男性の遺族に謝罪し、経緯の説明をしたという。「事実関係については理解を得られた」としている。(8月21日付朝日新聞)。
B型肝炎に対する核酸アナログ製剤とは
核酸アナログ製剤とはウイルスの増殖を直接阻害する薬剤です。
現在日本では、ラミブジン(ゼフィックス)、アデホビル(ヘプセラ)、エンテカビル(バラクルード)、テノホビル(テノゼット)の4種類が使用されています。
核酸アナログ製剤は、B型肝炎ウイルス遺伝子型や年齢を問わず、ほとんどの症例で抗ウイルス作用をきたし、肝炎を沈静化させます。
一方、投与中止によって肝炎の再燃率は高く、劇症化の危険性もあることから長期投与が必要であることには注意を要する薬剤になります。
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