土岐市立総合病院が3000万円で訴訟上の和解、肝生検後に60代患者が死亡
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土岐市立総合病院が3000万円で訴訟上の和解
岐阜県の土岐市立病院が肝生検後に患者が死亡した医療事故で、3000万円で訴訟上の和解をしました。
2016年6月、64歳の女性患者が肝生検を受けたところ、10時間後に容態が悪化。
肝臓から出血し2日後に死亡したという事案です。
和解事案であるため、診療経過・当事者の主張・反論などの詳細は不明ですが、後記の通り、肝生検の術後3~4時間は心拍・血圧を監視すべきとする医学的知見がありますから、10時間後に容態悪化する前後の経過観察等について問題となった可能性もあるでしょう。
土岐市によりますと、平成28年6月、土岐市立総合病院で恵那市の64歳の患者が肝臓の状態を調べるため細い針を肝臓に刺して組織の一部を取り出す検査を受けました。
ところが約10時間後に容態が悪化し、肝臓からの出血が確認されたことから輸血などを行いましたが、2日後に死亡したということです。
遺族が損害賠償を求め市を相手取って起こした裁判で和解を勧告されたことを受けて土岐市は遺族と協議を進め、慰謝料に相当する3000万円を和解金として支払うことで13日までに合意したということです。土岐市では病院の指定管理者と緊密に連携して急変時の対応等について改善を図り、医療事故の再発防止策に努めるとしています。
土岐市の加藤淳司市長は「患者様の命を救えなかったことは大変残念であり、ご遺族に対して心よりお悔やみを申し上げます。今後は患者の生命と安全を最優先に考え、最善の医療が提供できる体制を構築してまいります」とコメントしています。
NHK 2023/12/13
肝生検とは
肝生検とは、肝疾患の病理学的診断を目的として,患者の肝臓の一部を採取する方法です。C型肝炎など肝臓疾患の病態を把握し、診断・治療方針を決定するために必要な検査になります。
超音波誘導下に右肋弓下から専用の肝生検針を用いて行う(経皮的針生検)ことが多いですが,腹腔鏡下に肝表面を直接観察して行う方法(腹腔鏡下肝生検)もあります。
慢性肝疾患などのびまん性病変が肝生検の対象となりますが,超音波で確認できる腫瘤性病変を対象とする腫瘍生検も行われます。場合によっては,開腹手術時に肝辺縁の組織を楔状に採取すること(外科的生検)もあります(医学大辞典)。
肝生検と合併症
肝生検後、まれに発生する大量出血が最も重篤な合併症になります。
そのため術後、3~4時間は心拍、血圧を監視し、異常が見受けられれば早期に対応することが求められています。
出血部位としては、腹腔内出血、肝内出血、胆道出血があります。
その他の起こり得る合併症としては、疼痛、肝内血管シャント、感染、気胸・血胸、胆汁性腹膜炎などがあります。
同種医療事故の解決事例
C型肝炎の治療については相談の多い分野です(薬害C型肝炎訴訟の弁護団であることから、薬害被害の問合せに関連して、治療について相談されることが少なくありません)。肝臓癌や肝硬変に関する治療について、弁護士古賀克重が担当して解決した事案は下記を参照ください。
・肝臓癌に対する肝切除術の際、大量出血したにもかかわらず手術を続行し、適切な輸血もしなかったため患者が低酸素脳症による意識不明
・ C型肝炎に対する適切な治療を怠り、患者が専門治療を受けないまま肝硬変・肝癌で死亡した
関連情報
投稿者プロフィール
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。