丹波医療センターが1125万円で示談、CT検査報告書を確認せず1年後肺がん判明し死亡
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兵庫県立丹波医療センターで医療事故
2021年8月、女性(70代)がめまいを訴えて兵庫県立丹波医療センターを受診しました。腹部CT検査の結果、検査を担当した医師は、「肺の下部に影が見られるため、がん疑いもあり、精密な検査が必要だ」という報告書を作成しました。ところが、当直医は報告書を読まず、また、日勤医にも引き継がなかったため、患者に対して精密検査が行われなかったものです。
1年後、患者が体調不良を訴えて改めて検査を受けたところ、肺や肝臓に転移した末期がんが判明しました。
丹波医療センターは医療ミスとして謝罪した上、1125万円にて示談することになったものです。
丹波医療センターは、医師が報告書を確認するように注意を促すシステムを導入するなど再発防止を徹底するとしています。
兵庫県病院局は、「大変申し訳なく思う。今後よりいっそう医療安全対策を進め、再発防止に努めます」と話しています。
検査報告書見落としの再発防止策は
画像診断報告書の確認不足による医療事故は度々報告されています。
日本医療機能評価機構は、再発防止策として、「入院(特に退院直前)、外来を問わず、画像診断報告書が確認できる仕組みを医療機関内で構築する」、「病理診断報告書の確認と説明の手順を決めて実施する」こと等を提言しています。

また、画像診断報告書の確認不足を発生させた医療機関の取組としては、「主治医は、放射線科専門医の画像診断報告書を確認後、患者に画像検査の結果を説明する」、「放射線科専門医は、読影で検査の主目的以外の重大な所見を発見した場合、依頼した医師に注意喚起する」などが導入されています。
医療機関の中には、画像診断報告書を患者にも提供することを開始し、いわば医療事故を防ぐ制度として患者参画を求めるところも出てきています(関連記事参照)。
患者・家族としても、体調不良から画像検査を受けた場合には、医師に対して、自ら具体的に検査結果の説明を求めるなどしていきたいものです。
県によると、女性は2021年8月の当直時間帯にめまいで救急搬送された。当直医の指示で腹部のCT(コンピューター断層撮影)検査を行った結果、肺下部に影があり、放射線科医は胸部検査の追加をオンラインの「読影リポート」で指摘。ところが当直医は確認せず、日勤の担当医に腹部CTを実施したことも引き継いでいなかった。
読影リポートは日勤の担当医もシステム上で見ることができ、県病院局は「本来なら日勤の担当医も確認すべきだった」とする。
女性は症状が安定し、帰宅したが、せきが続いたため22年8月に同センターが指定管理を担う別の診療所を受診。胸部CTで最も進んだ「ステージ4」の肺がんと診断され、追加検査の見落としが判明した。既に脳や肝臓にも転移しており、同年12月に死亡した。
神戸新聞
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- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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