MRI検査室への金属製品の持ち込みが13件報告、医療安全情報198号
目次
MRI検査室への金属製品などの持ち込みが13件報告
公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」198号・2023年5月号を公表しました。
患者が磁性体(金属製品など)を身に着けたままMRI検査室に入室した事例が13件報告されています(集計期間:2014年8月1日~2023年3月
31日)。
MRIは磁場を発生させますから、金属があるとMRIの中心に吸い寄せられ、場合によっては患者ないし医療従事者が受傷する恐れもあるわけです。
MRIが酸素ボンベを吸い込んで患者が死亡したり重傷を負った医療事故も複数発生しています。
また小さな金属であっても、画像が乱れて診断漏れにつながる可能性もあります。
ちなみにマスクについても、FDA(米国食品医薬品局)は、MRI検査中に金属部品またはコーティングされたフェイスマスクを着用していると、患者が負傷する可能性があると指摘しています。
1つめの事例~磁気ネックレス
MRI検査を受ける患者に、看護師が問診票を使用して磁性体の有無を確認しましたが、患者は磁気ネックレスを持ち込めないと認識していなかったため、申告しませんでした。
患者がMRI検査台に仰臥位となった瞬間に、着けていた磁気ネックレスが外れ、MRI装置に吸着したというものです。
患者に外傷はなく、装置から磁気ネックレスを取り外し、検査を予定通り実施しました。
2つめの事例~足底のカイロ
2つ目の事例は、診療放射線技師と看護師が問診票を使用して、患者に対して、金属を身に着けていないか確認しました。
患者は足底にカイロを貼付していることを忘れて申告しませんでした。
患者がMRI検査室に入室し、検査台に横になったところ、診療放射線技師が患者の足底にカイロが貼ってあるのを発見したというものです。
再発防止のために求められること
MRI検査室への金属製品等の持ち込みは後をたちません。

事故が発生した医療機関では、MRI検査室に持ち込めないものを伝えるための写真・イラスト付き資料を作成し、患者に見せながら具体的に確認することを行っています。
検査室に持ち込まないものとしては、補聴器、磁石付の義歯、携帯電話、事務用クリップ、アンクルウエイト、カイロ、ノーズワイヤー付の不織布マスクなどもあります。
関連した重大な医療事故
韓国では、2021年10月、MRI検査中に、金属製の酸素ボンベがMRIに吸い込まれ、患者が挟まれて死亡するという事故が発生しています。
またニューヨークでも、MRI検査中に酸素ボンベが吸い込まれ、6歳の患者が死亡するという事故が発生しています。
ブラジル・サンパウロでは、2023年1月、患者の40歳弁護士が拳銃をMRI検査室に持ち込み、MRI磁場で拳銃が暴発してしまい、死亡するという事故が報告されてます。
ブラジル・サンパウロの医療施設「ラボラトリオ・クラ」で2023年1月、MRI装置による誤射事故が発生し、40歳のブラジル人男性弁護士レアンドロ・マティアス・デ=ノヴァエス氏が死亡した。
デ=ノヴァエス氏は母親に付き添ってMRI室に入る際、「金属製の物はすべて室外に置いておくように」と指示されたにもかかわらず、これを無視して拳銃を持ち込んだ。MRI装置の磁場によってこの拳銃が発砲され、デ=ノヴァエス氏の腹部に当たったという。デ=ノヴァエス氏は2週間以上にわたって病院で治療を受けたが、2月初旬に死亡した。
デ=ノヴァエス氏は銃保有支持派として知られ、インスタグラムやティックトックでたびたび銃保有を支持するコンテンツを投稿していた。警察によると、デ=ノヴァエス氏が携帯していた拳銃は、適切に登録されていたものだった。
Newsweek
2025年7月には、米ニューヨーク州ナッソー郡で、首に金属製の鎖をつけていた男性(61歳)が、MRI装置に引っ張られて、翌日死亡する事故も発生しています。
被害者は、トレーニング用として、首に約9キロの金属製鎖をつけていました。膝の検査を終えた妻が立ち上がるのを補助しようとして検査室に入った際の事故になります。
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関連情報
・MRI検査に関連した医療事故
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投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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