スタンバイにした人工呼吸器の開始忘れによる心肺停止などが7例報告、医療安全情報135号が改めて注意喚起
目次
◆ スタンバイにした人工呼吸器の開始忘れによる心肺停止などが7例報告
公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」135号・2018年2月号を公表しました。
人工呼吸器を「スタンバイ」の状態で患者に装着し、喚起を開始しなかった事例が7件報告されています。
第50回報告書「再発・類似事例の分析」で取り上げた内容です(集計期間:2009年11月1日から2017年12月31日まで)。
人工呼吸器は、患者が呼吸不全に陥り自発呼吸ができない状態のときに、生命維持のためガス交換を正常に行えるよう機械的に呼吸を助けるもの。したがって喚起が開始しない場合には患者に重篤な後遺症が後遺する可能性があります。
◆ 1つめの事例
1つ目の事例は以下の通りです。
CT検査のため人工呼吸器からジャクソンリースに変更した際、担当医が人工呼吸器をスタンバイの状態にしました。
患者が検査から帰室した後、他の医師と看護師が患者に人工呼吸器を装着しました。ところが、人工呼吸器がスタンバイの状態になっていることに気付きませんでした。
そのため約4分後、患者は心肺停止に陥ったというものです。
◆ 2つめの事例
2つ目の事例は以下の通りです。
医師と看護師が人工呼吸器をスタンバイの状態にして気管吸引を行った後、人工呼吸器を装着しました。その際、医師及び看護師は、いずれも相手がスタンバイの状態を解除してくれたと思い込んで、人工呼吸器が作動しているか確認しませんでした。
そのため約10分後、患者は徐脈、低血圧に陥り、昇圧剤の投与中に人工呼吸器がスタンバイの状態になっていることが発覚したというものです。
◆ 再発防止のために求められること
事例が発生した医療機関では再発防止のため、以下の取組を行うようになりました。
人工呼吸器装着後は、胸郭の動きや人工呼吸器の画面を見て換気されていることを確認する。
気管吸引時には、人工呼吸器をスタンバイの状態にしない。
ちなみに厚生労働省医薬局長は平成13年3月27日付け通知(医薬発第248号)を発出して、人工呼吸器に関する医療事故防止対策について周知徹底を求めています。
同通知では、人工呼吸器の警報機能とは独立して、患者自身の血中酸素濃度の低下等の異常をとらえて警報が作動する生体情報モニターとして、パルスオキシメータやカプノメータを併用することが、患者に対する一層の安全対策になると指摘しています。
人工呼吸器関連のインシデントは度々発生するため報告等も少なくありません。
インシデント発生原因としては職員に対する注意喚起方法の問題を指摘するものもあります。職員一人一人に周知徹底するためには、全病棟対象とした講演等ではなく、病棟別の小さな勉強会を繰り返すことが肝要であるという指摘もあるところです。
投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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