順天堂大付属順天堂医院と医師に説明義務違反を認定し6300万円の賠償命令、胆道鏡検査後に女性患者が死亡
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順天堂大付属順天堂医院で胆道鏡検査後に女性患者が死亡
順天堂大付属順天堂医院(東京都文京区)が2021年、胆管の胆道鏡検査を実施した後、患者(女性・70代)が死亡した事案で、東京地裁は、2025年7月18日、説明義務違反と因果関係を認めて、約6300万円の支払いを命じました。
患者は2020年12月、順天堂医院の消化器内科を受診し、2021年2月に検査入院しました。2月12日、内視鏡的逆行性胆管 膵管すいかん造影」(ERCP)を受けました。
ERCPで特に異常は見つかりませんでしたが、医師は、胆管を直接調べる「胆道鏡検査」を実施することに。内視鏡から胆道鏡を伸ばし、胆管内部に入れるため、バルーンを使って胆管の入り口を2回にわたって広げました。
ところが、検査終了から約10時間後、患者が腹痛を訴えて、同19日夜に死去しました。結局、胆管炎は見つからず、死亡診断書では「死因は急性膵炎」とされていたものです。

東京地裁の判断
東京地裁は、法的責任として、「検査の危険性について説明を尽くす義務に違反した」と判断しました。
被告らは死亡リスクを説明したと主張していましたが、裁判所は、遺族側が提出した録音記録から信用できないと判断しています。
そして東京地裁は、患者が胃カメラと同程度のリスクと誤って理解したと指摘した上、「検査の緊急性は高くなく、説明義務を果たしていれば検査を受けなかった」として、死亡との因果関係を認めたものです。
なお、医師が内視鏡を挿入した際に胆管に穴が開き、急性膵炎の重症化で死亡したとする原告の主張については、裁判所は、損傷はあるものの穴は認められないとして「検査方法やその後の対応に義務違反はない」と判断しています。
判決後に記者会見した女性の娘は「母は元気で、ただの検査だと言われてすぐに帰れると信じていた。医師の責任とは何か、社会全体で問い直してほしい」と話した。
女性の死亡を巡っては、遺族側が教授について業務上過失致死容疑で警視庁に告訴し、昨年12月に受理された((時事通信)
順天堂大学医学部附属順天堂医院は「当方の主張が認められず残念ですが、亡くなられた患者様へは心より哀悼の意を表します。今後の対応については、回答を控えさせていただきます」としています。
厚生労働省の医療事故調査制度の検討会のメンバーで、医療事故の被害者を支援する団体、「医療過誤原告の会」の宮脇正和会長は「院内調査の報告書の中には遺族に対するヒアリングが十分できていなかったり、医療事故に至ったプロセスが解明しきれていなかったりするものが散見される。遺族が知りたいのはなぜ亡くなったのかということだが、病院に十分話を聞いてもらえないまま説明を打ち切られると、裁判をするしかなくなってしまう」と指摘しています(7月18日付NHK)。
法的論点は
説明義務違反が認められても、損害としては慰謝料に留まることも少なくありません。もし十分な説明を受けたとしても、結局は同じ治療を受けたであろうと認められる場合には、因果関係が認められないからです。
本件はERCPで異常は見つからなかったわけですし、検査の危険性について十分に説明していれば、検査を受けなかったと因果関係を認めたため、損害額は6300万円になったものです。
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