帝王切開時のガーゼ遺残の医療事故で、東京地裁が610万円の賠償を命じる判決
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ガーゼ遺残の医療事故で610万円の賠償
東京地裁は2026年1月29日、帝王切開手術を受けた女性の体内にガーゼを遺残したクリニックに対し、610万円の損害賠償を命じました。
手術後に女性の体内にガーゼが残ったことが判明して、再手術が必要となった事案です。東京地裁は、クリニック側にガーゼの枚数確認を怠った過失を認め、損害賠償を命じたものです。
繰り返し報告されるガーゼ遺残・残置の医療事故
体内にガーゼが遺残・残置した事例は、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業第14回報告書でも「共有すべき医療事故情報」として取り上げられています。
同報告書では、2015年に9件、2016年に22件、2017年に26件、2018年に15件が報告されています。
体内に遺残・残置したガーゼの種類としては、ガーゼが51件、ミクリッツガーゼが14件、鏡視下手術用ガーゼが4件、デンタルガーゼが1件になっています。
ガーゼ類が残置した部位は、腹腔内が70件中44件と最多になっています。
44件の内訳は、外科・消化器科・消化器外科・肝胆膵外科が24件、産科・婦人科・産婦人科が16件になっています。外科や産婦人科の手術時・分娩時には、出血も多く、 腹腔内・腟内へのガーゼ遺残の可能性が比較的高くなっているといえるでしょう。
一方、泌尿器科・腎臓科が6件、心臓血管外科が3件、耳鼻咽喉科が1件、循環器内科が1件報告されるなど、様々な診療科に渡っていることも分かります。

ガーゼ遺残の再発防止策は
ガーゼ遺残を防止する再発防止策としては、以下のような提案がされています。
・ガーゼ等のカウントは、手術の開始前、閉創を始める前、皮膚を縫合する前、手術の終了後に行う
・カウントは一人で行わず、ダブルカウントを行う
・カウントを行ったことをカルテに記録する
・可能な限り手術室内で術後のX線撮影を行い、「ガーゼ遺残があるのではないか」という視点で確認を行う
一方、ガーゼカウントを行っていたにもかかわらず、ガーゼが体内に残存してしまった医療事故も報告されています。
つまり、丸まったガーゼを目視でカウントしていた、ガーゼを半分に切って使用した、ガーゼ以外の血餅をカウントしてしまったなどが原因として報告されていますから、カウントに頼り切らないことも重要になっています。
ガーゼ遺残の医療事故の法的責任と損害とは
ガーゼ遺残は医療機関の注意義務違反は免れないことが多いといえるでしょう。
一方、損害額は、患者の年齢・性別、基礎疾患、ガーゼの残存期間、再手術の有無、入院・通院期間、休業の有無、残存ガーゼが身体に与えた影響、ガーゼ除去から症状固定までの期間や合併症の有無等によって、一概には算定できず、極めて個別性が強いといえるでしょう。
ガーゼ遺残の裁判例について
東京地裁平成18年9月20日判決は、手術中のガーゼ残置の過失を認めた上、ガーゼによって卵管が閉塞し、不妊治療が奏功しなくなったとして、ガーゼ残置後の不妊治療費も損害として認定しました。
東京地裁平成29年12月8日判決は、帝王切開手術の際に使用したガーゼを患者体内に遺残したことにより敗血症を発症したケースについて、経膣分娩の可能性がほとんどないことを説明すべき注意義務違反を認めるとともに、ガーゼカウントについての説明義務違反も認め、約235万円の損害を認定しています(慰謝料200万円、休業損害約37万、治療関係費約47万等。既払金あり)。
担当したガーゼ遺残の示談例
弁護士古賀克重が担当した事案としては、膣式単純性子宮全摘術において、腹腔内にガーゼ一枚を遺残したケースがありました。腹部レントゲンに遺残ガーゼが映っていたにもかかわらず、これを見落としていました。
癒着・痛み・後遺症などは発生していませんでしたが、将来の手術費用の分担も争点にした上、当方の求めた示談内容・事項はほぼ受け入れられたため、100万円で早期示談が成立したものです。
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関連情報
医療安全情報(日本医療機能評価機構)
医療ミス・医療過誤・医療事故の法律相談(古賀克重法律事務所)
投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。




