第24回医療関係訴訟運営改善協議会が福岡地裁で開催、説明義務と裁判例
目次
医療関係訴訟運営改善協議会を福岡地裁で開催
第24回医療関係訴訟運営改善協議会が2026年2月、福岡地裁で開催されました。
裁判官、患者側弁護士、医療機関側弁護士、医療機関の医師、学者らが参加して、医療を取り巻く現状を共有して理解を深め、医療過誤訴訟の運営改善を図ろうという協議会になります。。
福岡地裁における同協議会は、それぞれの立場からの実務報告と率直な意見交換を行う機会として、相互理解に役立っています。
今年で24回目になりますが、私も都合が付く限り参加するようにしています。24回目の今回は、8名の裁判官・書記官、9名の医師、21名の患者側弁護士・医療機関側弁護士、3名の大学教授が参加しました(web参加含む)。
福岡地裁所長による挨拶に続いて、福岡地裁医療集中部(第3民事部)の裁判官から統計情報の報告、そして弁護士会から医療ADRの統計情報の報告が行われました。
医療過誤訴訟の件数はここ数年減少傾向にあり、令和5年31件、令和6年18件、令和7年13件となっています。
平均審理期間は、令和5年23・6月、令和6年22・5月、令和7年22・2月。
既済事件の終局事由の内訳としては、令和7年は認容判決10%、棄却判決42%、和解37%になっています。

説明義務についての発表と意見交換
医療関係訴訟運営改善協議会は、毎年、テーマを決めて、医療機関、裁判所、患者側弁護士、医療機関側弁護士から発表して意見交換を行います。
ちなみに特定の事件について取り上げるものではありませんし、何か方針を決める場でもありません。
今年のテーマは「説明義務」でした。
まず裁判所から説明義務について、最高裁の判示など一般的な考え方について説明がありました。
次に医療機関からは、当該医療機関における説明義務についての具体的な取り組みについて、分かりやすいスライドによる説明がありました。
インフォームドコンセント記録の質向上のため、17個の監査項目が紹介され、「患者・家族の反応が、具体的な言葉で記載されている」という項目が印象に残りました。
質疑応答では、チーム医療の場合にチームの責任者の関与はどの程度・どのような形でカルテに残すべきか、という医療現場からの質問があり、関心の高さがうかがえました。
続いて「法曹による発表」としては、患者側弁護士から説明義務違反により比較的高額の損害額が認定された事案が、医療機関側弁護士からは説明義務違反が認定されなかった事案がそれぞれ紹介されました。
最高裁の判示する説明義務とは
説明義務とは、疾患の病名と病状、実施予定の治療の内容、治療に付随する危険性、他の選択可能な治療方法の内容と利害損失、予後などについて説明する義務をいいます(最高裁平成13年11月27日判決)。
説明義務は、「患者の有効な同意を得るための説明義務」、「療養方法としての説明義務」、「医療行為の結果についての説明義務」に分類されます。裁判例で多いのは、治療を実施する場面で療法選択に関する説明義務になります。
医療事故の相談や医療調査でも、医療機関の説明内容の不十分さについて不満を抱えているケースが多くなっています。説明内容の不十分さが医療紛争を引き起こしているという側面もあります。
最高裁判例も説明義務については個別の事案を前提にした事例判断をしているものが少なくありませんが、説明義務という基本的かつ重要な義務が、様々な場面で、かつ、様々な様相で浮き上がってくることを示唆しています。
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医療ミス・医療過誤・医療事故の法律相談(古賀克重法律事務所)
投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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