ハンセン病「体溶ける」と虚偽の授業、福岡県教育委員会が謝罪
福岡県の公立小学校の男性教諭が小学校6年生に対して、ハンセン病に関して誤った授業を行っていたことが判明しました。
発覚の経緯は2重の意味で何ともお粗末なものです。
まずこの男性教諭は「ハンセン病は骨が溶ける病気」「風邪と一緒で菌によってうつる」などと講義した後、生徒たちに感想文を書かせたところ、大半の感想文が「骨や体がとける病気なので、友達があっかったら離れていく」「怖いのでうつらないようにマスクをする」という内容になっていました。つまり誤った授業を反映した誤った内容でした。
この男性教諭は感想文を読んだ上で、熊本県所在のハンセン病療養所・菊池恵楓園に対して郵送していたものです。
次に菊池恵楓園が男性教諭に対して、事実誤認を指摘する手紙を送付したにもかかわらず、男性教諭は返事を出しませんでした。
そのため、やむなく熊本県教育委員会に連絡して発覚したというものです。
ハンセン病は治療法も確立し、当然ながら骨や体がとけることはなく、感染力の極めて弱いものです。
この教諭は2010年から同じ授業を行っていたということですから、多数の小学生に対して差別・偏見を助長したことになり、その結果は甚大です。
教諭自らきちんとハンセン病に向き合って普通に学ぶ姿勢さえあれば、最低限認識できていた知識というべき。
そもそも近県には菊池恵楓園があるのですから、教諭が園を訪問して入所者の話を聞くなどしておけば、このようなことは起きなかったと思われます。
人権教育として「ハンセン病」や「薬害」が取り上げられる機会も増えてきましたが、きちんと当事者の話から学ぶ、という姿勢がなければ、同じような過ちが繰り返されることになるでしょう。
菊池恵楓園によると、感想文が届いた際に入所者からの返事の手紙も希望されたという。
感想文を読んだ入所者自治会長の志村康さん(81)は「ハンセン病を通して人権について学ぼうというのは賛成だが、誤ったハンセン病像を教えては意味がない」と残念がる。
「人権とは何かという哲学がはっきりしないまま教えるから、子供には恐怖心だけが残る。感想文に目を通していながらそのまま送って、入所者に返事をくださいというのは非常識だ」と苦言を呈した。(6月6日毎日新聞)
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投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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