中心静脈ラインの開放による空気塞栓症が7例報告
公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」130号・2018年9月号を公表しました。
今回は、大気に開放される状態で中心静脈ラインの接続を外したことにより、血管内に空気が流入した事例が7件報告されています。
第43回報告書の「個別のテーマの検討状況」でも取り上げられた内容になります。接続を外した目的としては、更衣が2件、ヘパリンロックが2件、輸液ラインの取り外しが2件、採血が1件になっています。
1つ目の事例は、患者が座位の状態で中心静脈ラインの接続を外したものです。ちなみに今回報告された7例のうち6例は患者座位のケースでした。
看護師が、患者を座位の状態で更衣を介助していました。その際、閉鎖式のコネクタと輸液ラインの接続が外れなかったため、中心静脈カテーテルのクランプを閉じないまま閉鎖式のコネクタを外しました。
その結果、中心静脈カテーテルが大気に開放されてしまい、空気が流入し患者が空気塞栓による脳梗塞を起こしたというものです。
2つ目の事例は、以下のようなものです。
看護師は、中心静脈カテーテルのヘパリンロックを実施する際、中心静脈カテーテルに閉鎖式のコネクタが付いていると思い込み輸液ラインを外してしましました。
ところが実際には閉鎖式のコネクタは付いておらず、中心静脈カテーテルが大気に開放されてしまいます。
その結果、患者は顔面蒼白となり、ベッド上に倒れてしまい、頭部CTを撮影したところ、空気塞栓が疑われたというものです。
事例が発生した医療機関では再発防止のため、以下の取組を行うようになりました。
閉鎖式のコネクタを使用しない場合、中心静脈カテーテルのクランプを閉じないまま接続を外すと、大気に開放され血管内に空気が流入する危険性があることを院内で周知する。
中心静脈ラインの接続を外す際、閉鎖式のコネクタが付いていることやクランプが閉じていることにより患者側のラインが閉鎖されているか確認する。
なお43回報告書では、座位で中心静脈カテーテルを抜去したため血管内に空気が流入した事例も3例報告されています(いずれも医師ないし研修医が抜去したもの)。
取組としては、「体位は仰臥位またはトレンデレンブルグ位とする」「呼気後に息を止めてもらいカテーテルを抜去する」「抜去部は5分以上圧迫する」「抜去部は密閉性の高いドレッシング材で覆う」ことなどが指摘されています。
・「座位による中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓が3例報告、医療安全情報113号」(2016/4/14)
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投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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