古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

インスリン単位の誤解による事故が多発、医療安全情報131号

公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」131号・2017年10月号を公表しました。

今回は、インスリン1単位を1mLと認識していたため100倍量を投与した事例が3件報告されています。

「医療安全情報」6号で報告していましたが、その後も同種事案が継続するため第2報として取り上げられたものです(集計期間:2012年1月1日から2017年8月31日まで)。

1つ目の事例は、看護師が、スライディングスケールの指示でヒューマリンR注100単位/mL 4単位を皮下注射することを確認しました。看護師は、インスリン専用の注射器があることは知っていましたが、インスリンの4単位は4mLであると思っていたため、5mLの注射器にヒューマリンR注4mL(4400単位)を準備し、皮下注射してしまったものです。10分後にリーダー看護師に報告した際、1100倍量を投与したことが発覚しました。

2つ目の事例は、以下のようなものです。
後期研修医は、ヒューマリンR注100単位/mLを0・5単位/hで投与する際、1単位は1mLと思っていたため、「ヒューマリンR 持続静注0・5mL/h」との指示を出したものです。
指示を受けた看護師は、「原液?」と思いましたが、オーダ画面上でヒューマリンR注のみ処方されていたため、原液で良いと思い込んで誰にも確認しませんでした。そのため看護師は、ヒューマリンR注の原液を20mLの注射器に吸い、シリンジポンプにセットして0・5mL(50単位)/hで開始してしまったもの。約4時間後、患者の血糖値が30mg/dLに低下したため、インスリンを過剰に投与していることに気付いたというものです。

インスリンのバイアル製剤は、100単位/㎖に濃度が統一されており、1単位は0・01㎖になります。
ところがいずれの事例も、インスリンのバイアル製剤は、1単位が0・01㎖であるにもかかわらず、漫然と1単位1㎖と誤信したために発生した医療事故です。

事例が発生した医療機関では再発防止のため、以下の取組を行うようになりました。

インスリンのバイアル製剤を使用する際は、専用の注射器を用いることを徹底する。

インスリンのバイアル製剤のそばに専用の注射器を置く。

総合評価部会としては当然のことですが、「インスリンのバイアル製剤は、1単位が0.01mLであることの教育を徹底
する」ことを提言しています。

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中心静脈ラインの開放による空気塞栓症が7例報告、医療安全情報130号」(2017/9/20)
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投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。