古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

関節リウマチ治療で劇症肝炎死亡、遺族に4000万賠償へ

大崎市民病院が医療事故で賠償

 宮城県大崎市所在の大崎市民病院が10月末、劇症肝炎で死亡した患者の遺族に4000万円の賠償金を支払う内容で示談していたことが判明しました。

 大崎市は当初事実関係を公表していませんでした。
 市が賠償金を支払うためには補正予算案を通す必要があり、その過程でメディアに指摘され、急遽公表しました。

同病院総務課によると、死亡したのは栗原市の50代女性。2008年に関節リウマチの治療を始め、肝機能に影響が出る治療薬の処方を受けた。病院側は女性にB型肝炎の既往症があることを把握していたが、状態が安定していたため、投薬を続けたという。
女性は13年12月に体調を崩し、ことし2月に入院先の東北大病院で劇症肝炎で死亡した。大崎市民病院の医療安全管理委員会は3月、病院側が経過観察を十分にすれば劇症肝炎の発症は防げたと認めて補償を決定。10月末に和解が成立した。
市は同日、市議会12月定例会に提出する議案を記者発表し、報道機関の指摘で事実を説明した(12月2日付け河北新報)

 

関節リウマチ治療による劇症肝炎の発症例

 報道内容だけでは治療経過の詳細が分かりませんが、例えばリウマチ患者のB型肝炎ウイルスが再活性化して劇症化する例については既に問題になっていました。

 関節リウマチ治療として、メトレキサートをB型肝炎キャリアに投与した場合、劇症肝炎を発症する症例が報告されていたものです。

 そのため、メトレキサートの添付文書では、B型肝炎ウイルスキャリアへの対応が、「重要な基本的事項」として記載されたほか、日本リウマチ学会も「関節リウマチ診療におけるメトレキサート診療ガイドライン」を公表。

・「関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン」(簡易版)

 ガイドラインでは、危険因子として、「慢性ウイルス性肝炎、肝炎ウイルスキャリア、そのほかの慢性肝疾患、肝機能数値が正常の2倍を超える肝機能障害」と指摘した上、「B型肝炎ウイルスキャリアのRA患者では、MTXの投与を極力回避する。やむをえず投与する場合には、抗ウイルス薬の予防投与を併用し、慎重にモニタリングする」とされていました。

 ちなみに、C型肝炎ウイルスキャリアのRA患者においても、「MTX投与開始前に消化器内科専門医などへのコンサルトを考慮し、リスク・ベネフィットバランスを慎重に検討する」とされているので注意が必要です。

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関連情報

関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン(2016年改訂版)
医療ミス・医療過誤・医療事故の法律相談(古賀克重法律事務所)

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。