古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

弁護士会のあるべき対外広報とは?大阪サミットを開催

対外広報に関する懇談会「大阪サミット」が6月14日、大阪弁護士会館で開催されました。

これは愛知県弁護士会の広報委員会が発案し、広報に力を入れる札幌、京都、愛知、大阪、福岡の各弁護士会に呼びかけたものです。
福岡からは橋本会長と担当副会長の私が出席。オブザーバーの日弁連広報室を含め、37名が集まりました。

こういう弁護士会ないし委員会の交流は、報告がだらだらと続いて間延びしがち。その点、「実践的な議論を行いたい」という愛知県弁護士会及び開催地大阪弁護士会の入念な準備のおかげで、効率的に意見交換できたと思います。

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私が各弁護士会の取組で参考になったのは次の通りです。

◆大阪弁護士会が立ち上げている「司法記者メーリングリスト」

司法記者、各委員会の委員長などが登録。様々な弁護士会の情報を流しているそうです。弁護士にとって重要でない情報が、記者にとっては面白いということは良くあること。
このメーリングリストから記事になったことも多々あるとか。抜かれては困る、ということで記者も油断できなくなる効用もあるでしょう。大阪らしいユニークな着眼です。

ちなみに大阪弁護士会は広報室を立ち上げて、単年度主義の弁護士会執行部の弊害解消を狙って、継続的な広報戦略を練っているのも特徴的な取組です。

◆京都弁護士会の「五箇条」

広報というと手段や財源、効果に議論が向かいがちですが、そもそも弁護士会が目指すものは何か。まずはそこを意識しようというのが、五箇条になります。
「京都弁護士会は、歴史と伝統ある京都とともに歩みます」という1文は、らしさが出ていると思いました。

◆京都弁護士会の「広報戦略」

その五箇条を前提にしつつまとめた報告書。2010年のものですがなかなか示唆に富みます。

「ウェブサイトを始め情報関連技術は数年で格段に進化してきている。広報戦略自体も、定期的な見直しが必要であり、3年を目途に、外部専門家アドバイサーも交えた形での見直し作業を行う」

「費用対効果を余り厳密に追及するのは弁護士会広報の場合妥当でない。広報費をどれだけかけるかは、もちろん時の財政事情にもよるが、業務広告に限っても、各単位会平均で400万円以上はかけているようである。基本的に会員数に比例した予算組があって然るべきだ」

◆札幌弁護士会の広告代理店に対する一括広告委託

広告代理店に個別のテレビCM、ラジオ等を委託するのではなく、「この金額でできることをやってくれ」と委託するもの。平成22年にはなんと4000万円!をつぎ込んでいます。その結果、新聞広告、折り込みチラシ、チラシ、ポケットティッシュ、地下鉄ステッカー、テレビスポットCM等が行われたようです。

福岡県弁護士会では到底認められない手法でしょうが、札幌のそのチャレンジ精神に感心しました。

◆愛知県弁護士会の「広報委員会組織図」と「活動方針」

対内部門と対外部門を分けて、対外部門は、行政連携部会、裁判見学ガイド部会、マスコミ部会等に分化しています。特にマスコミは1社に1チームが結成され、少人数の定期勉強会や記者の夜回り同行まで行っています。

活動方針は、「責任感より遊び心で楽しみながら行う」、「現場に神宿る」などの標語が踊ります。
また、対内部門と対外部門の各部会に1つ所属し、総合的視点を養うことも目標にされていて、参考になります。

その他に気付いた点は下記の通りです。

◆ウェブサイトの詳細な分析

福岡県弁護士会のサイトは、月10万ページビュー、年120万ページビューあり、同規模の単位会ではトップクラスと自負していましたが、札幌弁護士会は、当会以上の月11万ページビューのアクセスを誇っていることを知りました。
いずれにしろ、各単位会とも、訪問者履歴の解析(土日が少ない、平日の多い時間帯、多い検索フレーズ)をきっちり行うほか、法律相談センターへの誘因経路を分析して対策を行っています。

◆SNSの活用

愛知県弁護士会は、消費者委員会及び情報問題対策委員会が、フェイスブックページを運用してます。
札幌弁護士会は、広報委員会がツイッターを行っています。
大阪弁護士会は、非公開で、会員有志によるフェイスブックを試験的に運営しているということでした。
当会は、今のところ、ツイッターもフェイスブックページも導入予定はありませんが、各会とも色々工夫して統計情報を収集しているようです。

例えば、愛知県弁護士会消費者委員会フェイスブックページの「いいね!」が170件程度の頃(現在は498)、消費者委員会主催のシンポジウムを告知したところ、2720件のユーザーに届けることができたものの、会場アンケートで、フェイスブックを見て来場した人はいなかったということです。

ただし、現在の「いいね!」は498ありますし、継続的な情報発信こそ大事ですから、今後の取組にも注目したいと思いました。

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最後に、大阪から、日弁連の対外広報予算増加(5億円!)を求める声も上がりました。私は、基本的に弁護士会の広報は、地元の弁護士会による地元密着の広報こそが肝であって、日弁に余り期待してみてもやや無理があるのかな(費用だけ無駄にかかりかねない)と思いました。

(なお日弁連の名誉?のために触れると、日弁連は、今年度の対外広報予算を9100万円に増額しており、6000万円は新しい企画につぎ込むようです)

日弁連に求められるのは「お金」ではなく、「情報共有」と「場の提供」ではないでしょうか。
大阪サミットのような意見交換の場は、情報を共有し、各委員会の刺激にもなって意義があります。

ところが、なぜかいまだに日弁連には対外広報をメインに掌る委員会がありません。また、全国の単位会の広報担当者を集めた意見交換会もここ数年開催されていません。

この大阪サミットのように、各単位会の鋭意工夫を共有できる場を設定することこそ、日弁連に期待されている役割ではないかと思った、暑い大阪の一日でした。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。