古賀克重法律事務所ブログ

福岡県弁護士会所属弁護士 古賀克重(こが かつしげ)の活動ブログです。

長崎中3自殺で遺族が教育委員会に要望書、情報開示の姿勢に疑問

長崎県新上五島町で当時中学校3年生の男子生徒が2014年1月8日、自ら首をつって死亡しました。

当初、学校側は翌1月9日の全校生徒アンケートと同級生20人からのヒアリングのみで、1月24日には「いじめがなかった」と判断して両親に伝えていました。
ところがその後、両親の要請で再調査を行った結果、ようやく5月になって「いじめがあった」と認めました。ただし「悪口など一つ一つの事案はいじめと認められるが、自殺の原因とは断定できない」としています。

これに対して、両親が6月13日、長崎県教育委員会に対して、いじめの実態解明と結果開示を求める要望賞を提出しました。

五島町は第三者委員会を設置して調査の妥当性を判断する方針ですが、そもそも当初からの情報開示の姿勢に疑問があるため、両親は不信感を抱いています。

提出後に記者会見した父は、「ほかにも資料があるはずだが、こちらから尋ねないと表に出さない」と批判。父らが独自に同級生や保護者から聞き取った結果、「きもい、うざいと言葉の暴力で精神的に追い込むようないじめがあった。クラスの半数以上が加担、傍観していたことが判明した」と説明した。(6月14日付日経新聞)

しかも教育長は1月24日に「いじめがなかった」と両親に報告する際、アンケートやヒアリングの中にはいじめを示唆する結果がありましたが、それを意図的に読み飛ばして、両親に隠していたことさえ判明しました。

両親によると、教育長は1月24日、A4用紙1枚の調査報告書を両親に読み上げた。報告書には「生徒からの情報」としてアンケートや聞き取り結果から「(通信アプリの)『LINE(ライン)』のやり取りから自死をほのめかす言動があった」「下校時のバス内で(松竹君から)友人に『何だか疲れた』『自分は嫌われているんだろう?』という問いかけがあった」「(松竹君がラインで自殺の)用意ができていると友人に伝え、ビニールひもの写真を見せている」などの記載があった。
しかし、教育長は「生徒からの情報」を読まず、教職員からの情報として記載された「事故に直接結びつく言動は見られなかった」や「自身の資料、交友関係、学校生活から、いじめがあり苦にしていたとはとらえにくい」などとした「総括」を読み上げた。
報告書は両親には渡されなかった。(6月17日付毎日新聞)

この点、いじめ防止対策推進法は、「学校の設置者又はその設置する学校は、重大事態に対処し、及び同種の事態の発生の防止に資するため、速やかに、適切な方法により事実関係を明確にするための調査を行うものとすること」としています。

その上で、「学校の設置者又はその設置する学校は、調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童生徒及びその保護者に対し、必要な情報を適切に提供するものとすること」ともされています。

つまり五島町教員委員会はいじめ防止対策推進法に基づいて、両親に対して必要な情報を適切に提供することが法律上求められていますが、少なくともその姿勢が不十分であるといえると思います。

また、男子生徒は自殺する前、学校に提出作文のテーマに「いじめ」を取り上げていました。
このような作文を書かざるを得なかったクラス内の雰囲気について、学校側が本当に気付かなかったのか、掘り下げていく必要もあるでしょう。

いじめの加害者の気持ちを想像してみた。主な理由は二つほど考えられる。一つ目は、いじめという行為が楽しい。「相手の反応がおもしろい」などがよく補足としてつけ足される。このての加害者は恐らく、自分がその苦痛を知ることでしかやめないだろう。
もっともたちが悪いのは後者の方だ。なぜなら、いじめが完全に終わることがほとんどないからだ。対象者は移り変わってもいじめは続く。
では、いじめの原因は何かを伝えよう。それは「空気」だ。これが目に見えないものだから恐ろしい。いじめをしなければ自分がやられてしまうという空気、いじめに参加しないといけない空気。いじめの加害者、主犯でさえも空気によって動かされているのだ。
この問題を解決する方法はただ一つ……。みんなが親友になることだ。そう、実はすごく簡単なはずなのだ。人の笑顔は人を笑顔にし、その笑顔がまた別の人を笑顔にすると思う。僕の好きな歌にこういう歌詞がある。「空気なんてよまずに笑っとけ、笑顔笑顔、笑うかどには福来たる」。暗い顔をしていてもいいことは起こらない。学校で習う数学の公式や英単語を忘れても、笑顔の大切さだけは忘れないでください。

投稿者プロフィール

弁護士 古賀克重
弁護士 古賀克重弁護士
弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。

弁護士 古賀克重

弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。