ラブスタ法律相談所【第24回】 開始して1年経った「医療事故調査制度」
福岡のFMラジオ局「LOVE FM」の、人気番組「TENJIN UNITED」。その番組内に毎月第2・第4火曜日の12:20頃~「ラブスタ法律相談所」という、弁護士が様々な悩みに回答するコーナーがあります。
弁護士古賀克重が生出演して、よくある相談について回答しています。【第1回】【第2回】【第3回】【第5回】【第7回】【第9回】【第12回】【第13回】【第15回】【第18回】【第21回】 はこちら。
TENJIN UNITEDのブログでも紹介頂いていますので、以下転載します。
今日は古賀弁護士が専門にしている医療の中から、以前取り上げて反響のあった「医療事故調査制度」についてのお話しです。
「医療事故調査制度」は、平成27年10月1日から開始しして、今月で1年となります。
この機会にもう一度お話しを伺っていきましょう。
Q.「医療事故調査制度」・・・復習として、どのような制度か改めて教えて頂けますか?
A.はい、患者が予期せぬ死亡した場合、医療機関が必要な調査を行って事故原因を調べるという制度です。
医療事故の「原因究明」と同種事故の「再発防止」、この2点を目的にしています。
Q.開始して、1周年ということですが、運用状況はどうなっていますか?
A.厚生労働省は年間1000件から2000件を想定していました。ところが、この1年間でわずか356件にとどまりました。予想の3分の1から5分の1という数字になります。
Q.それは少ないですね。ということは予期せぬ死亡という医療事故が減少したといえるのでしょうか?
A.いえ、そうではありません。医療機関側が「予期せぬ死亡」という判断をしていないケース、遺族も制度自体を知らないケースが多いようです。医療機関への働きかけはもちろん、患者に対しても周知徹底していく必要があります。また医療機関や地域によって180度見解が違うこともあると言われていますから、報告対象となる医療事故に該当するか、その判断が統一化・標準化されるように工夫していく必要があるでしょう。
Q.でもどうして病院によってそんなに違いが出るんでしょうか?
「予期せぬ死亡」ということだと分かりやすい感じもするのですが?
A.患者の病状をふまえないで「ご高齢ですから何がおきてもおかしくありません」、「治療では一定の確率で死亡が発生します」といった一般的な抽象的な死亡の可能性について説明することがあります。そのような説明だけで「予期していた死亡」、つまり調査不要と判断する病院があるようです。ですが、そんな判断基準ですと「予期せぬ死亡」に該当する症例は本当に少なくなってしまい、制度趣旨に反することになります。
Q.そうですよね・・では家族が死亡したのに病院が調査してくれない、そんな時にはどうしたら良いですか?
A.確かに「家族が死亡したのに対応が悪い。病院に調査を求めるにはどうしたら良いか」というご相談を受けることも少なくありません。その場合は、医療機関に率直に「予期せぬ死亡なので医療事故調査制度の対象ではないですか」と尋ねて、調査を申し入れてみて下さい。中には遺族が申し入れたとたん、「調査しないと決めていたわけではない」と言って調査を開始したケースもあるようです。
Q.ところで前回取り上げた時に質問が出ましたが、医療事故調査制度の費用負担はどうなっているんですか?
A.医療機関が行う医療事故調査制度の費用は、医療機関が負担することになっています。ただし、医療機関の行った医療事故調査の結果に、遺族が不満を覚える場合には、医療事故調査・支援センターに対して再調査を依頼することもできます。その場合だけは、遺族に数万円程度の費用負担を求めることになっています。
Q.実際に医療事故を起こした医療機関が調査をするわけですよね・・・
うがった見方になりますが、医療従事者の肩を持つとか、そこまで行かなくても遺族として納得できないという内容になった場合はどうなりますか?
古賀弁護士のような患者側弁護士も遺族にアドバイスしてくれるのでしょうか?
A.はい、実際にご相談を受けているケースが数件あります。いずれも弁護士から医療機関に要望を伝えたり、医療機関からの説明会にも同席しています。医療機関から一方的に説明を受けても良く理解できない、不安であるという方が多いようですから、安心してご相談頂ければと思います。
Q.私たち患者としても期待したい大事な制度だからこそ、適切に運用されて欲しいですね!
A.はい、大事な制度だからこそ、医療機関側、患者側が率直に経験に学びつつ、良い制度に育てていくことが求められています。私たちは誰もが患者になりえるわけですから、皆で智惠を出し合ってこそ、この制度の目的である「原因究明」と「再発防止」を実現できると思います。
私達もいつ当事者になるか分かりませんよね。。。
改めて、「医療事故調査制度」を考える良い機会となりました!
古賀弁護士、今日も詳しいお話しをありがとうございました。
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投稿者プロフィール
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。