ラブスタ法律相談所【第13回】 医療事故調査制度って何?
福岡のFMラジオ局「LOVE FM」の、人気番組「TENJIN UNITED」。その番組内に毎月第2・第4火曜日の12:20頃~「ラブスタ法律相談所」という、弁護士が様々な悩みに回答するコーナーがあります。
弁護士古賀克重が生出演して、よくある相談について回答しています。【第1回】【第2回】【第3回】【第5回】【第7回】【第9回】【第12回】 はこちら。
TENJIN UNITEDのブログでも紹介頂いていますので、以下転載します。
今年最初のラブスタ法律相談所と言う事で、古賀弁護士へ今年の抱負を伺いました!
「忙しい中ですが、ひとつひとつの事件を大切に扱い、被害者に寄り添って全力で取り組んでいきます!!」
と古賀弁護士。心強いお言葉ですね!今年もよろしくお願いします!!
さて、今年1回目となる本日ですが、古賀弁護士の専門分野である「医療事故」の中で、昨年も取り上げ、反響があった【医療事故調査制度】についてお話し伺います。
Q.【医療事故調査制度】とは、確か昨年10月1日から開始した制度ですよね?改めてどんな制度なのか教えて下さい!
A.はい、患者が予期せぬ死亡した場合、医療機関が必要な調査を行って事故原因を調べるという制度です。医療事故の「原因究明」と同種事故の「再発防止」、この2点を目的にしています。
Q.対象は、「予期しない死亡」の場合に死亡した原因を調べて医療安全に役立てる制度だと教えて頂いていました。運用状況はどうなっていますか?
A.院内調査が必要と届け出があった事案は、去年12月に36件ありました。10月1日から3か月の累計は81件になっています。年間1000件から2000件を想定していましたので、まだまだ少ない調査件数になっていると思います。地域的には関東地区が33件と一番多く、九州地区は9件になっています。
Q.ちなみに、患者が予期せぬ死亡したのに病院が調査してくれない時は、遺族としてはどうすれば良いのですか。
A.その場合は、医療過誤を患者側で扱う弁護士に相談してください。最近の相談でも病院側に調査を申し入れたケースがあります。病院側は、調査しないと決めていたわけではないと言っていましたが・・やはりきちんと法的専門家が求めていくことが大事な微妙なケースもあるように感じています。
Q.具体的にはどの診療科が多いといった特徴は出ていますか?
A.まだ3か月ですのではっきりしたことはいえませんが、内科と外科が各6件、心臓血管外科と精神科が各4件、循環器内科と整形外科が各3件と幅広く調査対象になっているようですね。
Q.病院が調査してくれるということは分かったのですが、具体的にはどのように調査するのでしょうか?ちょっとイメージがわきにくいのですが・・・
A.そうかもしれませんね。具体的にカルテを確認して、医師・看護師からヒアリングを行って、情報を収集・整理します。場合によっては解剖まで行いますし、遺族からのヒアリングも行います。予期せぬ死亡の原因について、医学的に多角的に調査していくというイメージでしょう。
Q.調査が終わったら、遺族には説明があるのですか?
A.はい、「調査の目的・結果について、遺族が希望する方法で説明するよう努めなければならない」と定められています。医療機関は院内調査が終わった時点で遺族に対して説明の機会を設けることになります。報告書を渡す義務までは認められていませんが、遺族としては口頭だけでは理解できないことが多いでしょうから、書面報告を求めることが多いと思います。
Q.実際に医療事故を起こした医療機関が調査をするわけですよね・・疑った見方になりますが、医療従事者の肩を持つとか、そこまで行かなくても遺族として納得できないという内容になった場合はどうなりますか?
A.遺族が不満がある場合には、医療事故調査・支援センターに対して再調査を依頼することもできます。その場合、センターが改めて調査を行うことになります。既に終了している病院の院内調査結果について、再度、医学的な検証を加えるという意義があります。
Q.古賀弁護士のような患者側弁護士も遺族にアドバイスしてくれるんですか?
A.はい、患者側弁護士も勉強会や研修会を行っています。さきほども少し触れましたが「家族が死亡したのに調査してくれない」、「病院のヒアリングに何を話したら良いか分からない」、「病院が調査結果報告書を渡してくれない」、「調査結果に不満があるので対応して欲しい」などの相談が予想されています。安心してご相談頂ければと思います。
Q.前回も感じましたが、私たち患者としても期待したい、とても大事な制度ですよね?
A.そうですね、私たちは誰もが患者ですから、いつ当事者になってもおかしくありません。その意味で医療機関側で完結するのではなくて、患者サイドとしても積極的に関わって事例を集積していく必要があると思いますし、その過程を通じてこそ、この制度の目的である「原因究明」と「再発防止」を実現できると思います。
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投稿者プロフィール
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。