座位による中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓が3例報告、医療安全情報113号
目次
医療安全情報113号~座位によるカテーテル抜去後の空気塞栓
公益財団法人日本医療機能評価機構が、「医療安全情報」113号・2016年4月号を公表しました。
座位で中心静脈カテーテルを抜去したため、血管内に空気が流入した事例が3件報告されています。
第43回報告書の「個別のテーマの検討状況」でも取り上げられた内容になります。

空気塞栓を起こした事例とは
1つ目の事例は医師の対応です。
医師が中心静脈カテーテル(ブラッドアクセス)を座位で抜去することの危険性を知らなかったため、座位のまま抜去してしまいました。
その後、患者は呼吸困難を生じ、脳梗塞を発症。原因は、カテーテル抜去部から空気が血管内に流入したことによる空気塞栓症と考えられたものです。
2つ目の事例は研修医の対応です。
研修医が中心静脈カテーテル(ダブルルーメン)を抜去する際、仰臥位またはトレンデレンブルグ位とすることを知らなかったため、患者に座位のまま息止めにより抜去したというものです。
患者は気分不良を訴え、意識消失しました。CT撮影したところ、右内頚静脈内に少量ガス像を認め、中心静脈カテーテル抜去後の空気塞栓症と考えられたものです。
このように座位は、出血量や視野などで優れている反面、合併症として空気塞栓を招く危険性があります。
医療機関の再発防止の取組
医療機関の再発防止の取り組みとして、「中心静脈カテーテル抜去の方法のマニュアル」を作成するとともに、中心静脈カテーテルの研修会の内容に、抜去時の注意事項を追加することが指摘されています。
中心静脈カテーテル抜去時の空気塞栓は、座位に限らず、論文等でも報告が少なくありません。
例えば大腸癌手術後に中心静脈カテーテルを抜去した直後に空気塞栓による突然の意識障害を発生した事案などが報告されています。
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投稿者プロフィール

- 弁護士
- 弁護士古賀克重です。1995年に弁護士登録以来、患者側として医療過誤を取り扱っています。薬害C型肝炎訴訟の弁護団事務局長として2008年の全面解決を勝ち取りました。交通事故も幅広く手掛けており、取扱った裁判が多数の判例集で紹介されています。ブログではその主たる取扱い分野である医療過誤・交通事故について、有益な情報を提供しています。
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